【Ⅲ-2】
物語が動き始めるかも....???
帰り道、奏が自分の傘をくるくる回しながら歩いている。これは奏の癖だ。
奏はあまり自分の事を話したがらないが、1年間2人で過ごす時間が圧倒的に多かった為、この癖にも気が付いた。
無意識だろうが、奏がそれをしている時は何か嫌なことがあったか、話しづらいことがあるけど言い出せずに悩んでいる時だ。
そういう時僕は黙って奏の隣に居て、話してくれるのを待つ。
話してくれることもあるし、彼女自身で解決することもある。今回は前者のようだ、奏から発せられる言葉を待つ。
「告白されたの。同じクラスの子に」予想してなかった言葉に心臓が跳ね上がる。
「え、誰に」驚いてそんな言葉しか出てこない。「それは言えないよ、シュヒギムってやつ?」
奏がはぐらかす。僕たちは特別仲がよく誰よりも2人で過ごしているが付き合ってるわけではない。
しかしはぐらかされたことに腹が立ってしまう。
「別に名前言うくらい良いだろ」自分でもびっくりするくらいつい語気が強くなってしまう
「ねぇ、なんでそんなに怒ってるの?」奏が言う。自分でもわからない、しかし奏は僕にとって唯一人の特別な存在なのだ、だからきっと〝僕の気持ちがわかるはずだしわからなければいけない〟と一種の催眠のように僕は思い込んでいた。「別に。言う気がないならそれでもいい」
僕が冷たく言い放つことによって奏が俯いて黙る。これ以上はやめておけと僕の頭の中で警報音のようなものが鳴っている、頭ではわかっている、これ以上は本当にまずい。
しかし開き切った蛇口を戻そうとしても、すぐに止まるものではない。
「なんで怒ってるの?今日の君、怖いよ。」
奏が怯えるように言う
「なんでわからないんだよ。それに、僕たちは付き合ってるわけじゃないんだしわざわざ言う必要もないんだから、君の好きなようにしなよ」僕は自然と、出来るだけ奏を突き放すように言っていた。
当然の如く僕の発した言葉は徐々に二人の歯車を狂わせていった。
奏は何か言おうとして顔を上げたが、すぐに顔を伏せて走り去ろうとした
咄嗟に手を掴んだが、その手が震えていたから何も言えずに離してしまった。
言葉とは、扱う人や状況によって幸せにする魔法にもなるし、呪いにもなるのだと僕はおもう。
思ってたより僕のちっぽけな世界は奏という存在が大半を締めていたのだと今更ながらに思うよ。その日の夜はご飯がちっとも喉を通らなかった。寝る前は色んな事を考えていたと思う、どうしてあんな風にしか言えなかったんだろうとか告白してきた奴は誰なんだろうとか
奏、泣いてたなあとかーー。
奏たそがかわいそうだよ。。。