【Ⅰ】
のんびり書いていきたいとおもいます
――僕は雨の中傘も差さずに走っている、目指している場所がどこかとははっきり思い出せないけど
走っている、忘れてしまったなにかをもう一度見つける為に――
僕がいまから話すことを、君が全部信じてくれるとは思っていないよ、だけどこれは本当にあった話なんだ。ええと、どこからはなせばいいのかな・・・。
よし、じゃあ本当に一から話すことにしよう。
Ⅰ
小学生の僕は学校が嫌いだった。僕は周りのやつより少しばかり頭が良く大人びた考えをもっていたらしく周りの奴らと自分は違い特別な存在だと思っていた。
自分が愚か者だなんて、思ってもなかったんだ。
そしてそう思っていたことは態度にも表れていたらしい、そんな僕が周りの波長に合わせられないのも当然だし、それが理由で孤立するのも当然だ。
でも、テストだって毎回百点をとって帰るし、帰ったら優しい両親がいて母さんの作るおいしいごはんを食べていたら流れてくる悲しいニュースなんてどこか違う世界の事のように思えた。
後は、僕の波長に合う友達が一人でもいれば完璧だったんだけど。
四年生の夏、二学期も中盤に差し掛かりクラス内でもグループが形成されてきた頃、その女の子は転校してきた、細身で肌が白く、絹のように手触りが良さそうで
真っ黒なその髪は腰あたりまであった、長いまつ毛に優しそうな印象を与えるたれ目も特徴的で、大人しそうな女の子だった。予想通り控えめな自己紹介をした彼女の名前は奏というらしい、彼女の声は鈴の音のように綺麗で、室内で聞く雨音のように静かで美しく、心を落ち着かせてくれる優しい音だった。
奏は担任に指定された席へ向かう。
その席は先月転校した女の子がいた席で、今では主人を失ったピアノのように、誰かが座ってくれるのを待ちわびている。
「よろしく」
転校初日でまだ慣れないのだろう彼女は、すこし表情をこわばらせながら笑顔を作り僕の隣の席に座った。
今思えば、彼女がこの日隣の席に座らなかったら、僕たちはお互いの名前も知らなかっただろうしこんなに運命のいたずらに翻弄されなかったのかもな――。