0×6つめ
最初の方は、怖さゼロです。
「二階堂さん、次移動教室だよ」
肩を揺すられ、私はゆっくりと上半身を起こした。
ここが、教室だと気づくのに 1分くらいかかった。
「ありがとう。桜田さん」
昨日もずっとお人形さんのことを調べていたせいか、あまり眠れなかった。
美空に会いに行くと、このままではダメだと焦る心が大きくなってしまう。
「それより、大丈夫?何でも相談していいからね」
「ううん。ありがとう」
美空が元気だった頃を思い出す…
もし、ここに美空がいたら桜田さんと同じことを言うだろう。
* * *
我の名前は、天光 茲音。
この世界の魔王なり。
なーんて、嘘です。
私の名前は、天満 心音。
ただの普通の人間。
よく、いやたまに、中二病とか言われるけど 気にしちゃいない。
まぁ、オカルトチックなのは好きだけど。
あ、そうそう!
最近、噂になってる「お人形さん」
私も気になってるんだよね。
これは、紛れもなく 好奇心。
そして、私は好奇心に勝てるような人間じゃない。
これは、やるしかない。
そして、お人形さんのやり方を知るべく 深夜11時40分 自室のパソコンで調べている。
なぜ、深夜11時40分なのか…
理由は、ただ1つ!
今さっき、思い出したからだ。
帰ってくるまでは、覚えていたのに すっかり忘れてしまっていた。
「お人形さん やり方…っと」
出てきた、出てきた。
カチッと1番上のサイトを押してみる。
「へぇ、案外簡単。」
これまでに悪魔を召喚してみたり、魔法陣を描いてみたり…色々したが、どれも失敗で終わった。
だが、今度こそは!
今度こそは、成功させる!
「って、これ深夜0時じゃん!ヤッバ!もうあと少しで時間だし!」
私は慌てて、パソコンをシャットダウンする。
電気を消して、ドアを背に正座!!
なんと素早いことか。
クラスメートに見せつけたい。
あ、そうだ!
嫌いな人の名前…
どうしよ。特にいない。
もう、適当に前の席の右田でいいや。
「お人形さん、お人形さん どうか右田 勝則を殺してください」
しん、と静まる。
静寂…。
早く、来ないかな。
私は瞑っていた目を、開ける。
何もない。
「はぁ。また失敗かぁ」
でも、そりゃそうか。
もし、成功しても私の所には来ないよね。
右田が死んでるか、死んでないかで決まる。
まぁ、右田には悪いが。
でも、どうでもいいし。
「よし、ネットしよ!」
私は立ち上がった。
ガタン
「へ?」
何か、物音がした。
いや、気のせい?
でも、確かに…
ぞくっと、寒気がする。
私は身震いをして、後ろを振り向く。
あれ?ドアって開いてたっけ?
私はドアの方へと近づく。
「怖くない。怖くない。怖くない。怖くない。」
と呪文のように唱えながら。
「な、何これ…」
ドアノブには、べったりと血が付いている。
私は、思わず後ずさる。
ぐにゃっと何か、踏んだかと思うと バランスを崩して床に倒れ込んだ。
足元を見ると、お人形が転がっていた。
「な、なんで…」
お人形さんは、ニヤリと笑いながら言った。
「キライナヒトヲコロスカワリニダイショウヲモライニキタヨ」
「そ、そんなの…聞いてな」
お人形さんは、逃げようとする私に ナイフを突き立てた。
「いたっ!」
ぼたぼたと血が流れ出す。
「逃げるな」とでも言うように、お人形さんの形相は怖く感じた。
なぜか、とても眠く感じる。
今にも寝てしまうかのように、ウトウトと眠気が押し寄せる。
でも、眠ってしまったら 殺されてしまう気がして。
いつか、友達が言っていた言葉を思い出す。
「結局はさ。人は死ぬっていうのが1番怖いんだよ」
あの時は共感できなかった。
でも、今なら できる。
死ぬの、は…怖い………
意識がなくなる中、心がふっと消えていくのを感じた。