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お人形さん〜終焉〜  作者: 月影 ゆかり
6/12

0×5つめ

ご入学、おめでとうございます!

精神科の病室。


私は今日も、友達の橘 美空に会いに来ていた。


「調子はどう?美空。」


美空は私の手をしっかりと握っている。


きっと、心細いのだろう。


「普通かな。亜美は、どう?」


うーんと唸ってから、


「普通かな」


と言った。


お人形さんの手がかりは掴めないまま、ただただ焦る心だけがある。


お人形さんの止め方の載っている本なんて、どこにあるんだ…


「お人形さんは、望んでいる…。お人形さんは、人間になりたがっている…。」


「美空?」


「お人形さんは、お人形さんは、お人形さんは… いやっ!いやだいやだいやだ!死にたくない。死にたくない死にたくない。怖いよ、怖いよ亜美!」


美空は泣きながら、私にしがみついた。


私はただ、「大丈夫、大丈夫だから」と美空の背中をさすった。


本当は、このままだと大丈夫じゃないなど わかっていた。


窓の方を見ると、雲が太陽を覆い隠していた。


今日の空は、曇天だ。


* * *


1.


嫌いな人 って言うと誰しも、1人はいると思う。


あんなに、優しい子だって 嫌いな人はいるだろう。


かわいいあの子も、きっと恨んでる人がいるかもしれない。


だって、私もそうだもん。


嫌いな人というか、嫌な人だけど…


その子の名前は、波風(なみかぜ) 栩子(とちこ)


紛れも無い、私の友達だ。


友達なのに、栩子は私の悪口を言う。


だから、嫌だ。


でも、栩子がいないと私は1人になってしまう。


1人は、怖い。だから、友達のまま…。


それでも、時々 考えてしまう…


もし、栩子が死んだら…私はどうなるのか。




2.


お人形さん。


最近、噂になっている。


なんか、ホラーゲームみたいで面白そう。


もちろん、私はやらない。


ホラーゲームは、傍観者でいるからこそ 楽しいのだ。


でも…


栩子は、やるだろうか?


いつも裏で私の悪口を言う、栩子。



死にたくない…


栩子がやるくらいなら、私がやってやる。


なんて、そんな勇気ないんだけど…



そんな私に、キッカケをくれたのは 夏風さんだった。


お人形さんのやり方を、私にくれたのだ。


なぜ、私に?とは思わなかった。


いつもクラスの中心にいる夏風さんは、きっと栩子から 私の悪口を聞いたりしていたのだろう。


そして、こっそりと言ったのだ。


「みんな、波風のこと嫌いだよ」




3.


私は、みんなのためにやるんだ。


そうだ。私は、みんなのために殺すのだ。


そう言い聞かせた。


私が、体裁を下す。


誰かがやるくらいなら、私がやってやる。


私なら、できる。



お人形さんのやり方は、案外 簡単で私に必要なものは勇気だ。


でも、その勇気すら 今は足りている。




深夜0時。


私は明かりを消して、ドアを背に正座になる。


本当は、心のどこかに恐怖があった。


それでも、もう引き返せない気がした。


「お人形さん、お人形さん どうか波風 栩子を殺してください」


静寂が、より一層 恐怖を引き立てる。


後になってから、やらなければよかったと後悔するのだ。



トタン


何か、物音がする。


ビクッと肩を震わせながらも、後ろを振り向く。


何もない。 気のせいだろうか。


トン トン


足音がする。


コンコン


ドアをノックする音が部屋中に響く。


ゴンゴン


私は震えながら、しゃがみ込んでいた。


ゴンゴン!ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン!!


ドアが壊れそうなくらいに叩いてくる。


それでも、私は立つことができなかった。



静かな部屋。


ギィィと開くドア。


ニヤリと笑っているお人形さん。


叫ぼうとしても、声が出ず。


私はーー


腹をグリグリと抉り出され、痛みだけが頭に響いていた。


それ以外は、何も考えられず ただ呆然としていた。


最後にお人形さんは、言った。


「イ、マ イグガラネ…ミゾラ…」


私には、何のことだか わからなかった。


ここで、私の意識は途絶えた。





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