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お人形さん〜終焉〜  作者: 月影 ゆかり
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0×4つめ

次々に人が死んでゆく。


お人形さんの手掛かりはつかめないまま、時間だけが過ぎる。


学校の階段。


下を向きながら歩いて行く。


手掛かりはないと思うが、今日もまた図書室へと向かっている。


「転校生って、二階堂のことだったんだ」


少し、恨みのある聞き慣れた声…。


歩みを止めて前を向くと、やはりあの人が立っていた。


「夏風さん……」


忘れたくても忘れられない人。


「なんで、ここにいるの?」


私は警戒心たっぷりの声で睨みつけるように、そう言った。


「なんで? 退学したからって、もう学校に行ってはダメってわけじゃないし。 ずっと前に転校してきたってわけ」


少し早口で恨みのある声で言った。


そして、もう1つ付け加える。


「二階堂のせいで、退学したんだよ?」


私は下を向きそうになるのを堪え、夏風さんをじっと見る。


「私のせいじゃない。 夏風さんが…私を…いじめてきたからでしょ?」


夏風さんも私も、少しの間 睨み合った。


それでもやっぱり、先に下を向くのは私だ。


夏風さんは、止まっていた足を進めながら 言った。


「お人形さんの事は、知らない。それでも 邪魔はするから」


やっぱり。


あのメモを探して、他の人に渡したのは 夏風さんだった。


邪魔はする…


私は後ろを振り返り、夏風さんの髪が揺れるのを見て 少し小声で言った。


「また、今日も誰か死ぬのかな」


* * *


1.


夕方の教室というのは、なんだか切なく感じる。


教室には、私以外 誰もいない。


「はぁ。また盗まれてる」


親友から誕生日に貰った、ボールペン。


黄色の花がトレンドマークのかわいいボールペンだ。


きっと、またあいつだろう。


高瀬(たかせ) 日菜(ひな)


みんなから、「かわいい、かわいい」と ちやほやされている。


が、裏では かわいいと思った物を欲しいと思うのか、誰の物でも盗む。


ちなみに、私の物が盗られるのはこれで5回目。


「もう、勘弁してよ」


ガラララ


と、教室のドアが開き 夏風さんが入ってくる。


どうしよう。苦手なタイプなんだよね…


夏風さんは、私の方を見て 近寄ってくる。


「これ、あげる」


「え、あ、ありがとう…」


少し小さい。 メモみたいな紙切れを貰った。


「じゃ、また明日」


夏風さんは、自分の鞄を取り 教室から出て行った。


「あ、さようなら」


私は下を向いて、紙切れの中を開き 見てみた。



そこには、お人形さんというやり方が記されてあった。



身体の一部を奪う…


でも、嫌いな人を殺してくれる。


高瀬がいなくなったら、もうお気に入りの物が盗まれる心配もない。


それに、親友から貰った物を盗むなんて 許せない。




2.


殺してしまおう。


案外、軽い気持ちだった。


少し魔が差して、呪いをする…


そんな感じだった。


お人形さんが噂になっていたのは、うっすら知っている。


ただ、他人事で特に何も感じなかった。


しかも、やり方も簡単だし。


これで人が本当に死ぬのか。



夜ご飯を食べながら、お父さんとお母さんと 他愛のない会話をする。


これが、いつもだ。


食べ終わってからは、お菓子を食べながらテレビを見る。


そして、勉強。


と言っても、こっそりスマホをいじっている。


また今日もネットに書き込む。


<今日も、親友から貰った大事なボールペンをTに盗まれた。絶対に許さない>


返信は、あまり見ない。


だって、批判がくるとイライラが増すし ただちょっとのストレス解消で書き込んでるだけだもん。


ちょっとゲームをしてから、また勉強を再開する。


深夜0時まで起きた事はあんまりないが、今夜は起きていなくては。




3.


ウトウトと眠りかけた時に、深夜0時はやってきた。


慌てて、電気を消して 目を瞑りドアを背に正座になる。


そして、少し早口で言った。


「お人形さん、お人形さん どうか 高瀬 日菜を殺してください」


しん、と静まり返る。


「もう、寝よ」


やっぱり、眠い。


もう寝る準備はしてあるので、ベッドの中へと入る。


ベッドの布団をめくった時にガタンと音がした。


全身を寒気が包み込む。


眠気は一気に覚め、恐怖が打ち勝つ。


私はごくりと唾を飲んだ。


やっぱり、代償なんて 払いたくない。


私は腰を上げて、ドアから逃げようとする。


ドアが開かない。


「なんで!?なんで開かないの!?どーしてよ!!」


押したり引いたりするが開かない。


ドアをドンドンと叩く。


「なんで、なんでなんで!開いてよぉぉぉ!!!」


風が頬を横切っていく。


窓の方を見ると、閉まっていたはずの窓が開いていた。


「ひっ! やだやだやだ!開いて!お願い!」


ドアが壊れそうなほどに、叩く。


トントントンとこっちに近づいていくる、足音。


すぐそこまで、迫っている。


後ろなんて、もう見れなかった。


「目玉、ちょーだい。 目、目、目がほしい」


ガラガラとした少し低い声が耳に響く。


足に何かが当てられている感触。


冷たい。 ナイフだ!


「や、やめて!お願い!私、何も悪くない」


私は涙を拭いながら、しゃがみ込む。


お人形さんは、お構い無しに 私の手をどかした。


お人形さんの手は、ひどく冷たかった。



もう、何にも気力がなかった。


ドアが開かなかった時点で、お人形さんをやった時点で、もう逃げられなかったんだ。


お人形さんは、私の目にナイフを振り上げた。


グリグリと抉るようにして、目玉を取り出す。


ボタボタと、血が垂れてくる。


目玉を取られる度に、暗闇が襲い込む。


最後に、高瀬 日菜が私のお気に入りの物を盗んだ事を思い出した。


私は、やっぱり何をしても 誰かに、何かを盗まれるんだ。



最終回はハッピーエンドで終わりますように。


やっと、物語が一気に傾いてきましたね!

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