神使い
カテドラル学園 下駄箱
学園の生徒達は教職員によって強制的に教室に押し込まれたため、今、下駄箱にはリーリスと聡太の二人だけである。
「いきなりすごいタイミングで来てしまったな」
顔を引きつらせながら、視線をリーリスに向ける。
「そうですね」
リーリスも顔に少し疲れの色が見える。
それもそうだ、先程まで下駄箱聡太の容姿を珍しがった生徒達でごった返しになっていたのだから。
あまり人混みを好まない聡太にとってはきついイベントだ、そしてリーリスも見る限り聡太と同じ感じだろう。
「だから、敬語なんて使わなくていいって」
聡太が疲れのせいか少し愚痴をこぼす、
「・・・・・・」
スルー、完全無視である。
聡太は内心まただよと思った。
先程グランドで敬語を使わなくなって距離が縮まったと思えば、また戻ってしまった。
しかも敬語を使わないでいいと言ったらこの通り無視されてしまう。
そうされてしまえばもう聡太に打つ手はなかった。
「いつまでもここにいるわけにはいきません。
学長室に向かいましょう。」
「ちょっと、待ってくれよ」
突然の切り替えに聡太は慌ててついて行く。
数分歩いて行くと、他の扉とは違う少し豪華な扉が見えてきた。
リーリスは扉の前まで来ると扉に向かいコン、コン、コン、と3回ノックをする。
「・・・入りたまえ」
少しの間を置いて中から声が聞こえてきた。
(あれ?この声・・・)
「失礼します」
聡太が頭に疑問符を浮かべていると、リーリスはそんな聡太も気にせずに扉を開いた。
リーリスと共に扉の中へ進むと、そこには顔をにこにこさせながら、こちらを見る津雲禅十郎の姿があった。
「あんた学長だったのか」
「そうだよ、驚いたかな?」
津雲は微笑をこぼしながらそう呟いた。
確かに聡太は驚きはしたが、今は驚いているというより呆れていた。
津雲は自分が思っていたような反応とは違っていたようで軽く咳払いをする。
「まあ、用件を済ませようか。」
「用件?」
「ああ、君には生徒登録をしてもらわないとね、この水晶玉に手をかざしてもらっていいかな」
聡太は言われるがままに手を水晶へとかざす。
水晶が手に触れた瞬間、聡太の全身に電流が走ったような感覚が襲った。
しかしそれは一瞬の出来事で聡太の全身を駆け巡った電流はすぐに水晶へと戻った。
「今のでいいのか?」
「ああ、これで君は正式に我が校の一員だ、しかしまだ君には学園生活を過ごす前にやってもらわなければならないことがある。」
「他にも何かあるのか?」
「そうだ、ここは神使いの学園だまずは神使いの武器である神具を顕現してもらわないとね、今まで神使い達は各々の神具を使いこなし悪魔と対等に渡り合ってきた。例えば、そこにいるリーリス君だと神具は弓だね、そして彼女の持つ神はインドラだ、主に雷を操れるね。」
「学園長、そう簡単に人の神具や神を明かさないでください。」
「いいじゃないか、減るもんじゃないし」
「神具・・・」
聡太は両手を見つめ、小さく呟く、聡太の脳に数時間前のことがフラッシュバックする眼の前で最愛の妹を殺した悪魔、そいつらを倒せる武器が手に入る。
聡太は両手を握りしめる。
「やる気になってくれたかね?」
津雲がまた顔に笑みを浮かべて聡太に問いかけてきた。
聡太も顔に笑みを浮かべ、返答した。
「ああ、あいつらを殺せるんだ、やってやる、で具体的にはどうすればいい・・」
「それに関してはとても簡単なことだ、普通は一ヶ月くらいはかかるんだけどそんなに時間をかけたくないだろう、リーリス君、案内したまえ」
「はい」
リーリスは聡太に目配せすると
「行きますよ」
リーリスは学長室を後にした。
聡太はリーリスの後を追う、自分がこの後、後悔することも知らずに。