学園
「・・・ということで今説明したのがこの世界の情報についてです。」
少し間の空いた休憩スペースで聡太とリーリスは向かい合って座っていた。
聡太は頭をかきながらリーリスと名乗る少女の話しを聞いていた。
正直何を話しているのか全くわからなかった。
意味不明な単語がホイホイ出てくるので混乱する。
しかしリーリスそんな聡太の意図を察せず語り出した。
「今から今後の方針について説明したいのですが、それはこれから会う人に聞いてください。」
「これから会う人?」
聡太が首をかしげているとリーリスは立ち上がり休憩スペースの扉へ歩みを進める
そして扉を開けてこちらに向き直った。
「ついて来てください。」
聡太は言われるがままにリーリスについて行った。
永遠に続く長い通路に飽きながらも聡太は歩き続けた。
ちらりと自分の前を歩く少女に視線を向ける。
美麗なその顔はピクリとも動かず、無表情にただ行く先をじっと見つめていた。
その表情を見た聡太は少し胸のあたりがむず痒くなる。
何故聡太がそうなったのかというとそれは
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
無言なのである。二人の間が
聡太はすごく気まずい状態にある。
(とりあえず何か話さなければ)
そして呼吸を整え、口を開く。
「リーリスはさ、歳いくつなんだ」
(ん〜〜?)
いきなり初対面の人にこの質問は良かったのだろうかと思い、心の中で唸る。しかしもう言ってしまったものは仕方がないので返答を待つ、すると・・
「16です・・・」
と返ってきた。
「へぇ〜、同い年なんだ年下かと思った」
思わず感嘆の声が上がる。
そうするとリーリスがこちらを向いて小首を傾げる。多分そう思った理由を聞いてきているのだろう。
「だってリーリスってさ少し顔が幼い感じがするから」
それを聞いたリーリスは顔をむすっとさせた。
「幼くなんてありません」
その様子を見た聡太は少し安心した。
どうやら先程の無表情と違い、接しにくい性格ではなさそうだ。
聡太は喋る口を止めまいと次の話題を振る。
「リーリスの髪の毛って良い色で綺麗だな」
リーリスの髪を見ながら話す。
「・・・・・・・」
しかしこの話題についてリーリスは何も言ってこず、喋ろうともしなかった。
まずい、さすがに口説いてるように思われたか、と思いリーリスの表情を確認する為、顔を覗き込む。
聡太はリーリスの表情を見た瞬間そんな思考など吹き飛んでしまった。
リーリスは少し下を向き、表情はすごく張り詰めていたからだ。
聡太は何か違和感を感じ口を開こうとした瞬間
「着きました」
というリーリスの声に押し留められた。
リーリスは足早に扉を開け中に入った。
この質問は後にしようと思い聡太も中に入る。
「やあ、聡太君数分ぶりだね」
聞き覚えのある端正な声が聡太を迎え入れた。
扉を閉め、声がしたソファの方向に目を向ける。
「あんたは・・・」
そこに座っていたのは聡太の適合試験の時に聡太と話していた男性だ。
彼は目の前のソファを示す、
「まあ、座って話そうじゃないか」
彼に言われた通り二人はソファに腰を掛ける。
「とりあえず自己紹介からだね、私は津雲禅十朗という、リーリス君は彼に必要最低限の情報は話したよね」
「は、はい」
「なら話しは早い、いきなりだけど君にはこれから対魔物用の神使いの学園に通ってもらう」
数時間後、
「うおー、すごいな」
聡太は目の前の光景に思わず声を上げていた。
「ここが、対魔物カテドラル学園か」
「あんまりはしゃがないでくださいね」
リーリスが聡太を少し抑える。
聡太の前にあるのは見るからに学園だった。しかし普通の学園とは違い、外見の作りはヨーロッパの西洋風の学園と言ったところだ。
ここで自身の中に宿した神の力を発揮する術を習うらしい。
「それよりも早く学園内に入りますよ」
リーリスが慌てて昇降口に急ぐ。
「学園内って、どんな感じなんだ」
聡太が浮かれてリーリスに話しかけた。するとリーリスは人差し指を立て聡太の額を軽く小突く。
「聡太さんそんなに浮かれてますけどちゃんと津雲さんに言われた注意点覚えてるんですか?」
聡太は額を抑え、
「わかってるよ」
津雲に言われた注意点とは以下のようなものだ
一つ目、自分の素性を知られないこと
二つ目、適合試験のことを誰にも口外しないこと
三つ目、あまり目立たないこと
が津雲に言われた注意点だ。
一つ目の注意点は自分が元はただの人間だと気づかれるとまずいかららしい、二つ目はただの人間が神使いになるのは大変イレギュラーなことでもあり、そんなことはまずあってはいけないからだ。三つ目に関して聡太は津雲にある質問を投げかけた。
それは自分の髪の毛と肌の色である。こんな容姿では目立ってしまうのではないのかと。
しかし津雲は無責任にそこは頑張れと無茶苦茶なことを言ってきた。
「だからまず第一段階を成功させますよ」
「目立たないだっけ、何か無理なような気もするけど」
二人が昇降口に歩みを進めて、ちょうど校門と昇降口の間の頃である。
キーンコーンカーンコーン
と聞き覚えのある音が聞こえてきた。二人は進めていた步を止めた。その瞬間聡太は嫌な予感がした。聡太の考えが間違いでなければ今のはチャイムである。
「・・・今のチャイムだよな」
「チャイムですね」
学園内の様子が静寂だったはずが徐々に賑わいが溢れてきた。
するとある一人の男子生徒が窓からこちらに気づく、そして他にも同じように他生徒がどんどんこちらに気づく。
生徒達は聡太を見るとより賑わいが増す。
聡太はリーリスに向き直り、
「いきなり第一段階から失敗したけど・・・」
「そうですね」
「他人事みたいに言うなよ」
「実際、私には関係ありませんし」
聡太はリーリスをじっと見つめる。
「何ですか?」
リーリスが聡太に訝しげな視線を向ける。
聡太はそれに答える。
「いや、俺ら同い年だからさ、敬語なんて使わなくていいのになぁって思っただけだよ」
「わかった・・・影峰・・」
「聡太でいいよ、俺もリーリスって呼んでるわけだし」
「わかった・・・聡太」