青天の霹靂
「ねえねえ、マッキー!!さっき、お客さん入ってくの見えたけど誰!?」
茶髪のポニーテールに灰眼の少女は、事務所の扉を壊すような勢いで開け放ち、リアル3Dのようにそのまま中に入ってきた。
「ちょっと、ワダチ。少しは落ち着きなさい。あと、私をその渾名で呼ぶのやめて。」
マキナがピシャリと一喝する。
「ごめーん、ついつい出ちゃった。あとー、私のことはワダっちって呼んで欲しいなっ♪」
語尾に音符が付きそうな喋り方で少女が謝る。
「で、この人達がお客さん?」
少女がクロトとホノカを下から上に舐め回すように見た。
その時クロトは、とある脅威―というより胸囲に襲われていた。
少女が下から上にクロト達を見るということは、必然的に少女は、徐々に身体を起こすように動いた、ということだ。
少女の背丈はホノカとマキナのちょうど中間くらいなので、クロトからは見下ろすことになる。
クロトは気づいてしまった。
少女の胸囲が同年代―特にホノカとマキナの二人と
比べて、充分に脅威となり得ることに。
「ちょっとクロトさん?どこ見てるんですか?」
「ちょっとクロト?どこ見てるわけ?」
二人からの鋭い視線が刺さる。
「い、いや…俺は別に何も…」
「もーっとワダっちの胸、見てもいいんだぞ、お兄さん♪」
今のが、地雷だった。
「問答無用っ!アンタら二人とも、反省しなさいっ!!」
「痛たた…痛いよマッキー…ちょっとからかっただけじゃーん…」
「だめよ。アンタはいいかもしれないけど、クロトは絶対にだめよ。だってこいつは…」
「あー、わかったー。マッキーお兄さんのこと好きなんだー。」
「ちち違うわよっ!誰がこんなやつ好きになるのよ!!私は、『こいつにはもうパートナーがいる』って言おうとしたのよ!!」
「そうです。なのにあなたなんかにあんな顔するクロトさんがいけないんです!ていうかマキナさん、
『こんなやつ』ってなんですかクロトさんにケンカ売ってるんですか? 私のことは悪く言ってもいいですけどクロトさんのことは悪く言わないでください!!」
「いや私はそんなつもりで言った訳じゃ…ってホノカちゃんあなた身体からまた炎出てるわよっ!!」
「まぁまぁ二人とも、ちょっと落ち着こ?」
「元凶はアンタよ!!」
「元凶はあなたです!!」
この日2回目の鉄槌が振るわれた。