配達物
「ネコネコ配達ですけどー、ケンザキ クロトさん いらっしゃいますかー。」
「え?」
クロトは目の前の少女に驚いていた。
燃えるような赤い髪、150cmほどの身長、そして配達員の格好と伝票。
見知った存在であるが故に、その行動が理解出来なかった。
「いや、何やってんの、おまえ。」
あまりに唐突過ぎて上手い返しが思いつかなかった。
「何って言われても…配達ですよ、配達。」
「ホノカ、まずおまえが配達する理由がない、しかも配達員のくせに伝票しか持ってない。つまりおまえの目的は配達じゃない!」
自分でも何言ってるのかわからないほど荒唐無稽な推理だったが、相手が相手なので気にならなかった。
「ぐっ…さすがです…クロトさん… これは、実はプレゼントは私こと竜野 焔花自身でしたーっていうサプライズ的オチだったんです!どうですか?驚きましたか?」
ホノカが紅い眼をキラキラさせながら見つめてきたので、
「あーはいはい、驚いた驚いた。じゃあさっさと帰って。」
これが地雷だった。
「…い…す」
「え?」
「こんなの…こんなのひどいです!せっかく私が、ヴグッ、一生懸命考えて、エグッ、それをただ実行しただけなのに、グスッ、こんなあしらい方されて…あなたは私の保護観察人失格ですぅぅぅ!ウエェェーン、グスッ、ヒグッ…」
玄関が水没するかと思うほど号泣するホノカ。
しかし、その震える身体からは灼熱の炎が噴き出していた。
例えるなら、五右衛門風呂。
その水と炎は、まさしくいたいけな少女を悲しませた愚かな"罪人"を咎めるもの。
「わかった、わかったから!とりあえず泣き止めよおまえ!!身体中から炎出まくりでこっちが先に死ぬからぁ!!」
この時クロトは、『ああ…終わった…』と思ったとか思わなかったとか。