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マイホームは枯れダンジョン  作者: 丘野 境界
Construction――施工
77/140

もう一つの魔法の灰

 文章量少なめですが、昨晩の余り的な部分掲載です。

 ……間違えて昨日の日付で予約投稿し、朝に一瞬だけ掲載されたという。

 斜面が整地され、平らになった場所まで、ウノは登り切った。

 それに気付いたグリューネが、駆け寄ってくる。

 リス(センテオトル)はグリューネの腕を器用に駆け上がり、頭の上に鎮座する。


「おーおやぶん、話し合い、おわった」

「ですっ!」

「そうか、ご苦労様。えーと……そういう訳で爺様達、色々よろしくお願いします」


 ウノの挨拶に、ナリー達は笑って手を振った。


「構わんよ。お主には借りがあるからのう。いくらでも頼ってくれてええ。しかしとんでもない場所だのう、ここは」


 喋るモンスターが神を祀り、しかもその神はあちこちで動き回っている。それも複数。

 光るスライムが通路を照らし、灰を撒けば植物が育つ。

 食べ物は森の動植物を狩る事による自給自足、狩猟や調理の道具も揃え、充分文化的だ。

 中層と呼ばれる通路では、機織り機の音も聞こえていた。


「……一応俺は、()()のダンジョンを買ったつもりなんすがね」


 ウノは遠い目をした。

 不満がある訳ではないが、そもそもあの薄暗くジメッとしたダンジョンがどうしてこうなったと、ちょっと言いたくもなる。


「まあええまあええ……儂の目の錯覚でなければ、今、そこの黒山羊は地面から突然生えてきたように見えたが……まあ、そういう細かい事も気にせんでおこう」


 目と目の間を揉みながら、ナリーが困ったような笑いを浮かべる。

 大変ありがたい配慮だった。

 そんなウノの背後で、シュタッとバステトが手を上げる。


「ちなみに灰にはもう一種類あるのにゃ。まあ、野郎共には無縁だけどにゃ」

「……聞いてないぞ?」


 いや、本当に聞いていない。

 何だそれ?

 バステトはすっとぼけた笑顔で話を続ける。


「言ってなかったからにゃあ。『灰かぶり(シンデレラ)』っていう、女の子に服を着せる灰なのにゃ。灰を使いこなせるのは……新しく入ってくれた、魔女専用なのにゃー」


 これにも伝承があるらしい。

 義理の母や姉に虐められていた可憐な少女は、王宮で開かれるパーティーに参加したかったが、着ていく服がない。

 義母達は既にパーティーに出て行き、寂しい思いをしていた彼女の前に現れた魔女が魔法を掛ける。

 少女は綺麗なドレスにガラスの靴、カボチャの馬車を得、パーティーに乗り込んでいく。

 後にも話は続くのだが、『灰かぶり(シンデレラ)』という灰の原典はそこなのだとバステトは言う。


「ここは面白いのう」

「まったくじゃ」

「んだ」


 ナリー達が顔を見合わせ、頷き合う。


「しかしこれぐらいはせんと、今後きついんじゃろうな。人口はどんどん増えてきとるしのう」


 確かに、洞窟の前の天幕は数が増えている。

 少しずつではあるが、ゴブリン、コボルト、オークがそれぞれの崇める神に導かれ、この地に集ってきているのだ。

 ボス争いに敗れて群れから追い出された、モンスターに襲われて瀕死など、迷子になったなど、事情は様々だ。

 自分だけなら迷うところだが、導いた神々も責任を負うというので、ウノは今のところ受け入れている。


「……俺は、自分の住処を作りたいだけなんですけどねー」


 ただ、悪さをする者は、驚くほど少ない。

 何しろ神の御許であり、しかも例えではなく本当に()()のだ。

 せいぜいがつまみ食いや、ささやかなつまみ食い程度である。


「モンスターが増えると、食べ物を巡って争いになりそうなのが、不安の種というか」

「いやいや、何を言うとる。ああそうか、ここでは世事に疎くなってしまうんじゃの」

「ウチの村も似たようなモンじゃが」

「んだ」

「ええい、うるさいわい]


 あれ?

 とウノの頭に疑問がもたげる。

 ()()()()()()()()()()()


「しかし知らんのなら、教えてやろう。最近数人単位じゃが、村にこの森の事を聞きに来る者がおっての」

「ついに来たか……!!」


 この森の事を聞きに来る者……と聞き、ウノはすぐに教会関係者を連想した。

 何しろ、心当たりが多すぎる。

 これはこのダンジョンの、危機かもしれない。


「ん? 城下町の異種族に、知り合いがおるのか? いや、お主もそうなのだから、普通はいるか」

「え?」


 異種族?


「む?」

「あの、何の話?」

「いや、じゃから、村に城下町から流れてきた異種族が来たという話じゃよ。あれじゃろ、貧民街が取り壊された件じゃろう?」

「あ、そうか」


 ウノは自分の早とちりを恥じた。

 ナリーは人口が増えているという話をしていたのだ。

 ならば、ここの事を聞いている人達というのも、移住希望者なのだろう。

 ……教会関係者に異種族は少ないので、おそらくはそちらで違いない。


「話を続けるにゃ」


 バステトの促しに、ナリーが頷く。


「うむ。何ぞ行商人から聞いたとかで、やっと安定した生活が出来るかも……みたいな話をしておったぞ」

「おいおいおい……マジで?」

「マジじゃ」


 そういえば確かに前、行商人が来ていた。

 というか今もちょくちょく、行商人が来たりしては、素材を入手して帰って行くのだが。

 情報の出所は彼らか。


「本当に知らんかったようじゃが……話しておいてよかったのかのう?」

「いや……うん、知らないよりはずっといい。少なくとも、心の準備は出来るからさ」


 ただ今はまだ、頭の中で整理出来ていない。


「えー……?」


 モンスターの他に、異種族までここ、増えるの……?

 思わず、力のない声が出てしまうウノだった。

 異種族というのはこの場合、獣人などの亜人を指します。

 ただ名前の出るキャラは、ない予定です。

 これ以上増えるとちょっと作者がたまらんですw

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