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マイホームは枯れダンジョン  作者: 丘野 境界
Construction――施工
38/140

話が進みません

キャラが勝手に暴走して話が長引くのは、ウチの作品ではよくある事です。

一応後半から、本題には入っています。大丈夫。

 ハイタンが、マ・ジェフに迫る。

 マ・ジェフは逃げようとしたが、それより早くそしてハイタンの巨大な手が彼を捕まえていた。


「うほっ、ゴリラにぶん殴られて、このナイスガイは今から気絶する」

「や、ジョークジョーク、軽く笑いを取ろうとしただけじゃんだからその拳を引っ込めてくれると嬉しいなーあああああこめかみグリグリはやめてやめて痛い痛い頭割れちゃう」


 ぶん殴る代わりに、ハイタンの両拳がマ・ジェフのこめかみを万力のように挟み込んだ。

 頭を締め上げる激痛に、再びマ・ジェフの絶叫が響き渡った。


「その辺りで」


 ウノが制すると、ようやくハイタンはマ・ジェフをいたぶるのをやめた。


「おう、これぐらいで終わらせてやる。土下座して感謝しろ」

「へへー、申し訳ございませんでした。さて話を戻してもよろしいか」


 本当に土下座しだしたマ・ジェフだったが、顔を上げて真面目な顔をした。

 どうにも道化じみた男だった。

 それまで静観していたシュテルンが、うんざりといった風に首を振った。


「さっさと進めて下さい。さっきから全然進捗がありません」

「まったくだな……俺はウノ。周りの連中は数が多いから紹介は割愛するとして、まあコイツ、シュテルンだけは俺の相棒なんで一応」

(あいぼう)のシュテルンです」


 ピシリと姿勢を正し、シュテルンの丸眼鏡が光る。


「シュテルン、今、何かおかしなニュアンスじゃなかったか!?」

「主様、話を進めましょう」

「お、おう……あれぇ、俺がおかしいのか?」


 サラッと流され、ウノは困惑した。


「よろしくなウノっち、てるん」

「その呼び名はやめろ!?」

「同じく!!」


 マ・ジェフの気さくな呼びかけを、ウノとシュテルンは拒絶した。

 まったく、隣にいる猫神と同じセンスの持ち主のようだ。

 ……隣?


「やあやあお前とは気が合いそうだにゃあ。ウチキがここの神、バステトにゃあ」

「色々台無しにしやがったなこのトンチキ神!?」


 思わず、ウノはバステトの頭をはたいていた。


「ここの神!? って事は邪神!?」

「ホラ見ろ、警戒心超マックスになったじゃねえかどうするんだよせっかく友好的に話が進みそうだったのに!?」


 一気にまくし立てる。

 バステトがいると、間違いなくこじれるから、ひとまず話が落ち着くまで待ってもらうという段取りだったのだ。

 ここの神であるという自称が、本当か嘘かは問題ではない。

 客観的に見れば、ここには人間はおらずモンスターが集っているのだ。

 行き倒れていた所を助けられた事、意思疎通が出来る事から友好的な雰囲気が作られたが、これでも割と慎重策を取っていた。

 が、全てご破算であった。

 怒っているのは、ウノだけではない。


「よくも主様の思惑を、ぶち壊してくれましたね、この猫神」

「食べられちゃうにゃあ!?」


 クァッと鳴いて、シュテルンがバステトに襲いかかった。




 そして、そんな一匹と一柱が攻防している横で、ゴブリンシャーマンらしき猪骨の面を被ったゴブリンが、水を満たしたコップをお盆に載せて、マ・ジェフとハイタンに差し出した。


「お水」


 異形の面に一瞬、マ・ジェフの身体が強ばったが、舌っ足らずな声に緊張を和らげた。


「お、おお、ありがとな、えーと」

「グリューネ。だいじょぶ、ボク、しゃべれる」


 ここの主らしいウノという犬獣人は、額に手を当ててため息をついていた。

 ゴブリン達は慣れた光景なのか、酒を飲んだりスライムを揉んだりと、とりあえず静観するようだった。

 ……まあ、自称ここの神も、見た感じ邪悪といった風ではなさそうだ。


「神様、じゃしん、ない。だれも、てき、ない」

「オーケーだ。まあ、落ち着くまで、待たせてもらうとしよう」

「うん」


 結局の所、現状確認もまだ中途半端なままなのだ。

 ここの連中なら、自分達を襲ったモンスターの正体を知っているかもしれない。

 その点に、マ・ジェフは期待していた。

 ……いや、いるんだが。


「それにしても、ホント話進まねーなあ」

「それは、ボクもおもった。うちの話し合い、よくだっせん、する」


 そんな和やかな会話をグリューネとしていると、ウノが近づいてきた。


「じゃあ、今の内にアレについて説明させてくれ。……長くなるけど、特に予定とかないだろ?」




 ウノがここに住む事になった理由やバステトが出現した事情やらといった本当に長い話が終わり、ようやくウノ達は人心地ついた。

 その頃にはシュテルンの猛攻も終わり、彼女はウノの傍らに澄ました表情で座っていた。

 なお、神であるバステトは痣だらけで倒れており、ゼリューンヌィがため息をつきながら薬草の詰めた袋を取りに奥へと向かっていた。


「なるほど、大体把握した。な、ハイタン」

「……ああ」

「信じてくれたのか」


 まさかこんなあっさりと思うウノに、マ・ジェフは肩を竦めた首を振った。


「いや、裏取ってないし、信じるも何もないだろ。例えば、オレは命を助けてもらったし、ここの事、特に神の事を口外するつもりはないぜ……って言っても、そっちが信じるかどうかは別問題なのと一緒さ」

「なるほど」


 言い分は聞いたし理解もしたが、ウノの期待にわざわざ応えるつもりはない、という事らしい。

 それでも、バステトや自分達に即座に敵対行動に出ないだけでも、ウノとしてはありがたい。


「ただ、筋は取ってるし、一応納得しただけだ。でまあ詳しい話とかも聞きたいけど、まずは話を戻して俺達が行き倒れた経緯だよ」

「ああ」


 まさしく本題はそれだ。

 ウノも、自然居住まいを正す。

 何だか、ずいぶん長く掛かったような気がする。


「オレ達は、テノエマ村の冒険者ギルドをホームにしてるんよ。んでまー、今回は魔女の依頼で薬草採取の仕事をしてたんよ。なあ、ハイタン」

「おう」


 テノエマ村。

 森を出てすぐの所にある、この洞窟からは一番近い集落だ。

 まあ、近いといっても数時間は掛かるだろうが。

 いや、それよりも、ウノとしては気になる単語があった。


「あの村、魔女とかいるのか……!?」

「まあ、薬草調合したり、民間療法やら、おまじないやらがメインらしいがね。とりあえず採りに来たのは、夜になると花が光るっていう夜光草とかいう草なんだが」


 その草なら、ウノも知っていた。

 夜の探索で、何度かお目に掛かった事があるのだ。


「あー、あれ不思議だよな。洞窟の中でも夜が分かるみたいで、昼間は完全に沈黙状態なんだよ」

「……え、あるの?」

「あるよ? 照明関係で試行錯誤してた時に使えるかなって採取したけど、ダンジョンだから昼間も真っ暗だろ? でも、昼だって分かるみたいで光らないんだよ。夜だけ光られてもって事で、残念ながら不採用になったけど。あ、そこの出口出た所に植え替えといたから、すぐ見れるよ。なあ、アクダル」

「ごぶ、すぐそとにさいてる。おれ、みずやりしてる」

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