魔石
ごめんなさい、今回ちょっと短いです。
明日の昼に、もう一回更新するかもです(しないかもです)。
月と星、それにウィル・オー・ウィスプとスライムの合体照明により、中庭は昼とは異なる明るさに包まれていた。
その中央。
ボコボコボコと土が盛り上がり、そこから三角帽子を被った土小人が現れた。
彼は、一抱えほどもある黒い石を、両手で掲げていた。
とれたー
ノームは、どこか誇らしげだ。
そしてその石を、バステトが受け取った。
ノームには一抱えだが、バステトが持つと大きなボールサイズである。
「にゃあ、取れたのにゃあ。三〇〇年物の純正魔石なのにゃ」
それは、三百年前の世界で、ウノがこの地に埋めた、土の魔術で作り出した石だった。
当時はわずかな魔力を帯びた石だったが、長い歳月を掛けた石の中の魔力は積もりに積もって、とてつもない力を帯びていた。
その濃い魔力は、バステトの手にも伝わってくるし、周りにいるアルラウネのイーリスや草木の神タネ・マフタも感じているようだった。
「これは、大したモノですね。……ここの畑の作物を、一気に収穫出来そうなレベルです」
ふぁー……っと、イーリスが頬に手を当て、感心していた。
植物の魔物だけあって、土の魔石の強さは他の者よりも分かるのだろう。
ふふん、とバステトは得意げに、猫耳をピクつかせる。
「それぐらいチョロいけど、残念ながら違う目的に使うのにゃ。ダンジョンの主権限で、使用目的が指定されちゃってるのにゃ」
というか、別の目的に使用すると主が起こるのは間違いない。
「残念ではありますが、勿体ないとは思いませんねえ。中庭自体がなくなるよりは、ずっといいです」
微かな風に花冠を揺らしながら、タネ・マフタが微笑む。
「ま、そういう事にゃ。という訳でこれは、下層に持っていくのにゃ。……でもちょっとぐらい、つまみ食いしちゃってもよいかにゃあ」
途中までは良かったのに、後半はとても悪い笑みを浮かべるバステトである。
そしてその後頭部を、龍人風の少女が、ひっぱたいた。
「それで、足りんようになったら、どうするん」
「にゃあっ!?」
創造神カミムスビである。
「い、いたのかにゃ、カミムスビ」
「いたのにゃあ、や。まあ、やるならやってもええけど」
「え、いいのかにゃ?」
「うん、後でマスターに報告するだけやし」
カミムスビは、ニッコリと無垢な笑みを浮かべる。
この笑みが、怖い。
バステトが怯むと、さらにタネ・マフタから追い打ちが掛かった。
「それはまた、おかず抜かれちゃいますねえ」
「また!?」
それなら、とイーリスも悪気なく参加する。
「それも、一品とかいう単位じゃなくて、日数単位かもしれません」
「日数!?」
「そういうのが嫌やったら、さっさと渡す。わたしも、やらなあかん事、多いんよ」
差し出された小さな手に、バステトはちょっとガックリきながらも、魔石を手渡した。
大きな仕事が一つ。
小さい仕事としては、あちこちの夢枕に立たなければならないし、リアルタイムでここから少し離れたとある村とも連絡を取っている。
カミムスビは今回のダンジョン内でのトラブルには参戦していないが、それは彼女の負担が一番大きいからであった。
「にゃー、お疲れなのにゃあ」
「そっちはそっちで、頑張ってなー」
バステト達の見送りに、カミムスビは手を振りながら姿を消した。
「にゃっ、それじゃお出迎えのライトアップも、もっとしっかり整えちゃうのにゃあ。もう、入り口前にはゲスト達が集まり始めてるにゃ。中継のアルちー?」
洞窟前の広場には、様々な種族のモンスターが集まっていた。
小さな者は小人族から、大きな者はドラゴンまで。
精霊に妖精、亡霊の群れ、吸血鬼、グリフォン、マンティコア、一角獣、ワイバーン……。
そんな彼らを出迎えていたのは、ゴブリンやコボルト達小さなモンスター達と、
「誰が中継ですかっ!?」
絶叫するアルテミスであった。