第5話「これが本当のお嬢さま」
朝、屋敷の食堂で食事を取っている時だ。海外に基本拠点を置く両親は毎朝決まった時間にテレビ電話をしてくる、親父が主にだが。
「んっ、で?寮に住めと?」
「そうだ、瑠季のような可愛い娘を寮に入れるのは考えられんが。仕方あるまい、まぁ鴒もおるわけだし大丈夫だろう」
「潰す……誰が娘だ!!息子だろ!?ついてるわ!」
「瑠季さま、ついてる等と下品なお言葉は控えてください。興奮します。」
「お前は平常運転で何よりだよ、全く……ズー」
朝からボケとツッコミのオンパレード。コーヒーを飲みながら落ち着く。
「まぁなんだ、任務遂行を頼む」
それを告げて親父が一方的に電話を切った、まぁいつものことだが。
「鴒、この間言った生徒。調べてくれたのかよ?」
「もちろんです。まずは、寺兎海莉。寺兎自動車の令嬢にして、学園では『白銀の女王』と呼ばれ、無口で冷たさから来ているのだとか。見た目は幼女ながら学園5本に入る天才、毎日窓の向こうにある教会を見ている。」
「確かに冷たさは感じたな。でも話せばわかるやつじゃないのか?」
「ご両親とあまりうまく行っていないとあります。さて次は、十文字影祢。十文字財閥の令嬢、まさに大和撫子と言っていい日本美人。学園卒業生の、哘雅楽乃の元で華道を習っていたとか。見た目は黒髪であり、肩からしたくらいまでのストレート。学園5本に入る天才の1人です、今は華道部部長ですね。」
「なんだなんだ?完璧お嬢さまかよ。バレるんじゃないか?」
「それに至ってはご心配ありません。瑠季さまも立派なお嬢さまですから、剣道で段位ですし」
「あぁ、ほとんど喧嘩剣道だったがな」
「茶道も完璧ですし」
「菓子と茶が飲めるし」
「華道では綺麗な生花をやっていましたし」
「適当にちょん切ったやつが特選に入ったやつな」
「空手、柔道もこなして大会で優勝致しましたし」
「昔から俺がムカついていた奴らが、一般参加可能の市民大会に居たからな」
「機械にも強いですし」
「バイク好きだし」
「なんですか、全部不純な理由でやっていらしたのですか。さすがは馬鹿息子ですね。」
褒めちぎってたたき落としやがったぞこのメイド。話をしていて時間を見ていなかった。今日は土曜日なのに学園にいくのは入寮する為に荷物を運び込む作業があるからだ。
「さて気が引けるけど、さっさと終わらせちまうか。」
俺は立ち上がり玄関へ向かおうとすると。
「待ちなさい瑠季。」
急に保護者モードに入る鴒。
「まさか、そんなスウェットで行く気ですか?」
「休みの日まで制服なのかよ?!」
あんなミニスカでスースーするのは嫌だぞ?!?
「学園の校則です。いかなる場合も学園でいる以上は制服着用が義務です、寮内は構いませんが。あとは特別な許可を取らない限り遊びに出ても制服です。」
堅苦しい校則めが、俺がぶっ壊してやる。いつか、多分。
「わかったよ、着替えてくる。ちょっと待ってろ」
「あ、私も御一緒いたします。」
「来んな変態ぃ!!」
俺は部屋で制服に着替え、学園寮に向かった。寮に着くと、引越し屋のカマキリマークのトラックが止まっていた。
「はぇな仕事が、さすがはカマキリマーク。することないんじゃないか?」
「そのような事はございません。瑠季さまにはあちらの荷物を運んでください。」
家から乗ってきた黒いセダンのトランクを開けると荷物があった
「ちなみに聞くが、誰のだよ」
「私目のでございます」
「お前はいつからメイドをやめたんだ?自分のは運べよ自分で!」
俺はトランクから荷物を地面に下ろす。なんか重いし
「なんでこの荷物やたらと重いんだよ!?」
なんが箱見たいな形してるし!!
「それにはパソコンとサーバーが入っています。瑠季さまを24時間監視――眺めるために」
瑠季「今てめぇ監視言うたな?言うたな!」
二人でキャーキャー言っていると、引越し屋のスタッフが荷物を運び終えたと告げて、引き上げていった。それを見届けてから、寮内に入る。玄関に靴が一組しかない、他の子らは居ないみたいだ
「さて、あのピンクな部屋で寝るか」
「瑠季さま、話し方を変えてください。バレます」
俺はコホンと咳払いして
「では、鴒?私は部屋に戻ります」
「(´^ω^`)ブフォwww」
「てめぇやっぱ潰されてぇんだな、あぁ!?表でろやぁ!!」
「これは失礼致しました。わかりました、この鴒は寮母様に話をしてきます故に、後ほど。」
んだよ今の(´^ω^`)ブフォwwwは!!舐めた顔しやがって……。俺は中央階段を上がって廊下の隅にある部屋を目指すと、その手前の部屋の扉が開く。
「ぁ…貴女は、見た事がありませんが。」
茶髪で、少しだけカールされた長い髪の毛を揺らしながらこちらに来る
「え?あ、あぁー。はい、今日から入寮いたしましたので、あ、あはは」
な、なんか十文字影祢見たいな。心読む様な目しやがって……
「自己紹介が遅れました。私は竹ノ宮瑠季と申します、よろしくお願い致します。」
軽くペコッとする、俺のポニーテールが揺れると
「まぁ…凛々しい方ですっ。それでいて隙のない感じ、そんな人は学園にはまだいないかと思いますわ、遅れましたが私。寧々棟夜埜依と申しますっ。同じ三年みたいですし、仲良くしてくださいませ?」
何ちゅう名前……というか、胸でけぇな、名前の通りと言うか。
「あ、はい。コチラこそです、夜埜依さん」
「まだわからないことがあるでしょうから、何時でも話しかけてくださいませね?」
夜埜依にわかりました、と言って別れた。さすがは聖應女子、完璧スタイルだったな。なんだよ、男なんだから気になるに決まってんだろ。俺はあのピンクの部屋に着くとベッドにダイブする、ちょっと早く起きたせいか、眠気が…………
ガシャンガシャンガシャぁぁぁぁぁん!!!
「うぇい!?!?な、なんだなんだ?!」
1階で何かがひっくり返った音がする。俺は飛び起きて1階まで走ると、階段を降りて直ぐ左にある食堂からだった。
「ど、どうした!?何があった!?」
「………またやってしまいましたか。」
「海莉さん?」
寺兎海莉、最初あってから銀髪が印象的だったから覚えていた。エプロンを制服の上から着用しなにかを作っていたようだが。運んでいる途中ひっくり返したようだ
「貴女は確か、瑠季さん。入寮したのですね、よろしくお願い致します」
ペコッとするのに釣られて
「あ、よろしくお願い致します。て!違います!なにしてるんですか!」
「もう慣れっこです。何回も何回もこれですから、お料理は普段しませんし、チャレンジして見たらこのザマです」
「というか、普段喋らないって聞いてたんですが喋りますね」
海莉はハッとしたのか、咳払いして
「………キエロ」
「今更遅い気がしますよ……それより片付け手伝いますよ」
「ん、いいです。自分でしますから」
なるほど、妙に意地を張るのかこの子は。俺は掃除用具を見つけて箒とチリ取りを手に、割れた食器を回収した
「一人でやるといったではないですか」
「こういうことは二人でやった方が早いですし、駆けつけた意味がなくなります。はい、終わりっ。」
纏めたガラス片をさっき使わない古い新聞紙を見つけて、その上にガラス片を移す。指を切らないように新聞紙を丸めて、テーブルにあったガムテープでぐるぐる巻にしてゴミ袋へ入れた。
「手馴れていますね。勉強になります」
「昔よく遊んでいてガラスを割ったことがありまして、その時に教えこまれました」
よく腹立ってガラス割ったからなぁ……鴒が教えてくれたんだよな、何枚も悪もんだから親父達にバレたらヤバイからって新聞紙で丸めて捨てるやり方。外見はわからないからな、怪我もしないし。
「結構ドジな方なんですね。」
「そ、そうなんですよ、あはは。はぁ…」
片付けが終わって部屋に戻るつもりが、寧々棟夜埜依が現れた。
「海莉さん大丈夫っ?!またやってしまいましたの?」
「はい、でも大丈夫です良い豆知識を聞きましたから。これからは何枚でも怖くありません。」
真顔でグッジョブをする白銀。だいじょばないから、寮母泣くぞマジで。
「せっかく新しく仲間もできた訳ですし、歓迎会でもします?」
夜埜依の突然のイベント開催宣言に俺は
「か、歓迎会?良いんですか?」
俺は海莉をチラッと見る。ゆっくり目を瞑り考えたのか
「わかりました。寮母さんに頼んで私の奢りでお寿司を頼みましょう」
海莉の奢ると言う言葉で夜埜依は笑顔になり。
「では、私は歓迎会の準備を致します!」
さすがの俺でも金銭感覚はあるほうだぞ……そして、二人は着々と歓迎会の準備を始めていった。