第4話『あの部屋の秘密と先生』
俺は1時間どころか、朝まで普通に爆睡してしまったらしい。
鴒も起こしに何度も来たが俺は無反応、せっかく来た千早や薫子も鴒と少し会話をしたら帰ってしまったとか。
「なんだよいつもみたいに殴るなりすりゃよかったじゃないか」
気が進まないが鴒に徹底的に教わったメイクを進めていきながら話す、鴒は制服を準備していく。
「そんなはしたない事を、それも主に手を上げるなんてできません」
「じゃなんで起きて早々にボディーキックかまされてんだよ!?」
「手は出していません、足です。」
「誰もトンチ聞かせろとか言ってねぇよ!!」
鴒は、クスクス微笑む。普通でいたら可愛いし美人なメイドお姉さんなのに残念だ。話している間にメイクも着替えも終わる。
「てか、入寮今日だったよな?断ってくれねぇかな」
「だが断ります。入寮していただかないと意味がありません、いろんな意味であまり宜しくない生徒がそちらにいらっしゃいますし」
鴒は寮のパンフレットを見せてくる、俺の髪をポニーテールにしながら
「学院からそんなに屋敷遠くないんだからさぁ」
「ダメです。ちなみに私も一緒に滞在いたしますので」
「なんでだよ?餓鬼じゃないんだから大丈夫だって」
鴒はポニーテールにし終わったのか正面に立つ
「私は凄く、心配です。心から」
「……鴒」
やっぱり、鴒は鴒だな。たまにウザイけど、優しいんだよな
「餓鬼である瑠季さまが、女の子に手を出さないかと心から心配です。」
「てめいますぐメイドやめて出ていけ」
こんなこったろうと思ったわ。俺はため息を吐きながら食堂で朝食を取り、屋敷を出た
「んんっー!!ふぅ、天気が良いのは最高だな」
「今日の降水確率は0%です。お洗濯がよく乾きます」
二人並んで並木道を歩く、俺は鞄を方に引っさげて。
「瑠季さま、学院に着く前には口調をどうにかしてくださいませ」
「へいへい。」
口調もかなりとっくにさせられたんだよな。まぁなんとかなるだろうし、学院に近づくにつれて聖應の生徒が増えてきた。
「おはようございます!」
「え、えぇ。おはよう」
「おはようございますっ」
「お、おはようございます」
うんやばいキツイ、だがまだ始まって二日目だし負けねぇぞ。
一年生や二年生の挨拶を軽く済ませていく。鴒とは正門で別れ、俺は真っ直ぐ教室へ。二日目だからまだ慣れないが扉を開ける
「お、おはようございます」
「あら、竹ノ宮さん。おはようございます」
「はい、おはようございます。」
朝のクラスメイトとの挨拶も済ませ自分の席へ。隣を見ると
「寺兎のやつ、いないのかまだ」
白銀の女の子、寺兎海莉。きっと知らない奴はいないかなりの令嬢。見た目はロリっぽいが、きっと中身はヤバイやつかも……
鞄から教科書を取り出し机の中に入れる。担任はまだこないし
寝ていようかと思っていたら
「あのー、竹ノ宮さん。でいいのかしら」
話しかけてきたのは身長も俺と同じくらいで、髪は長く少し赤めのウェーブが掛かった美人。男なら一発だな、いや俺も男だけど
「あ、はいそうですが。なにか?」
素っ気ない返答をしてしまったが、彼女はニコニコしながら
「私、優羽姫小雪と申します。これから一年、よろしくお願い致しますわ」
「小雪さん、ね。よろしくお願い致します」
突然話しかけてきたからビビった。だがそんなのは慣れてきたから問題ない、俺もニコニコしながら返事をした小雪は嬉しそうに
「わからないことがあれば、なんでもきいてくださいね?瑠季さんのお力になりますので」
「わ、わかりました。何かあれば伺いますね」
小雪は軽くお辞儀をして、席に戻った。そのタイミングで初めて見る先生が入ってくる、メガネを掛けた大人の女性。
「はい、皆さん席に着いてくださいね。軽く自己紹介をしますね、知らない女の子がいるはずですから。私は今日から皆さんと頑張る、梶浦緋紗子です。一年間よろしくお願い致します」
梶浦緋紗子…………なんだ?どっかで聞いたような……どこでだっけ……思い出せないが話を聞いていく
「6月末にはエルダー選挙が控えています。節度ある行動をしましょうね。ですが、そんな固い話はいいのですが。最近何かと物騒な事件もありますから登下校の際も気をつけてくださいねっ。では、最初の授業は――」
あ、やべ。眠たい……俺は手を杖にして目を瞑る。先生の声や教室の温度がマッチして、いい感じに眠りを誘ってくる。
「………くぅ」
しかし、睡魔には勝てません。勝った奴いんのか?いないわな。お休みなさい―――
「こぉらっ」
パシン!!なにかが頭をぶった、それに思わず
「てめぇ、なにしやがんだ!!」
ガタっと立ち上がり緋紗子先生の胸ぐらを掴む、周りがなんだか怯えてるような………俺はハッとして直ぐに離し
「も、もも!!申しわけありません!!熊が夢に出てきたので熊かと思いましてあのその!!」
俺は高速で頭を下げまくる。緋紗子先生はクスクス微笑みながら
「元気なのはわかりますが、私の授業で寝るのは関心しません。放課後職員室に来てくださいね?」
ニコッとしながら、教卓へ。絶対ヤバイ、周りも……ん?小雪さん、笑ってる?なんで?
「はいはい、竹ノ宮さんも座ってくださいね」
「あ、あぁ、はい!」
俺は、今日の授業内容をほとんど覚えていないまま。放課後になった。呼び出しを喰らっていたから職員室にいくと、緋紗子先生は直ぐに出てきてくれた。なぜか、屋上に行く羽目に
「さて、竹ノ宮さん?少しお話があります」
「な、なんでしょうか」
まさか謹慎か?勘弁してくれ、マジで鴒にボコボコにされるじゃないか。しかし、それよりヤバイやつだった
「どうして、隠していたんですか?」
「何をですか?隠し事なんかしていませんが」
なんだ、なんか汗がやばい。背中に服が張り付く。
「もうわかっていますよ。竹ノ宮瑠季さん、いえ。瑠季くん?」
………え?今なんて?あまりに急過ぎて何を言ったのかわからない。夕方の日差しが俺を照らす、どんな顔をしてるかわからない。
「竹ノ宮財閥の御曹司。竹ノ宮雅治と竹ノ宮春恵の息子。間違っているかしら?」
間違いなんてない、二人は俺の両親だ。あの授業の時にバレた?いや、態度は悪かったが他のクラスメイトはその後何もなかったはずだ。先生にバレるだなんて、退学どころか豚箱行きじゃないか。
「……なぜ、わかったんですか?確かにあの時態度は悪かったのは間違いないですが、正直自信はあったんですが。」
見た目は本当に女の子だからな、自分で言うのはあれだけど。
俺は諦めたポーズになる、柵に背を預け夕方の空を見る
「私にはわかるのよ、昔教え子に居たのよ。2人」
昔の教え子にも居たって、そいつらも悲惨だな。それの仲間入りかよ俺も
「退学とかになるなら構わないです、でも屋敷は関係ないんで、秘密にしてくれませんか?お願いします」
俺は柵から背を離し、頭を下げる。教育委員会とかが動いたら家は終わりだ、たった2日で全てが終わっちまうんだからな。すると、緋紗子先生は俺に近づき
「そんなことはしないわ、むしろよく来てくれたわね瑠季くん」
下げた頭を撫で始める、俺はゆっくり頭を上げると。先生は笑っていた。
「なんてねっ、ごめんなさい。最初から貴方がここに来るのは知っていたのよ?理事長と昔の教え子や貴方のメイドさんから聞いていたし、協力していくつもりよ?」
……………は?知っていた?またも思考が止まる
「ま、マジで?」
「ふふっ、マジよマジ。授業の時はほかの子達の反応がどうなるか心配だったのだけど大丈夫みたいだから安心したわ」
俺が騙されてたのかよぉぉぉ!?鴒にしろ親父や母さん!!許さねぇ!!……でも理事長ってなんで俺を知ってんだよ、会ったことないぞ?
「まぁまぁ、とにかく今日は寮に案内する予定だったから放課後に呼び出したの。時間もないし、さぁ行きましょう」
「あー?いや待って!ちょっとぉぉお!!?」
腕を引っ張られ、屋上を後にした。学院の中を歩き回りしばらくすると
「はい、ここが聖應女学院女子寮です。貴方の部屋は入って二階の左廊下隅っこになります。」
「は、はぁ。というかあの、昔の教え子って誰何すか」
俺はもう分かっていたが、一応聞いてみると
「宮小路瑞穂、妃宮千早。の2名ねっ」
「瑞穂に、千早だったのか………」
俺は→_| ̄|○こんな風に地面に崩れ落ちた。まさか身内だったとは、いや、男で見た目女の子とかどこ探しても身内しかいないしな
「まぁ、そのこれから使う部屋も二人が使ったからそのまま使ってね?さて、実際に部屋を見に行きましょ」
玄関に入りながら説明を受ける、ここには寮母が居て。出てくるご飯は洋食、頼めば約120種類のサンドイッチを詰めたお弁当が出てくるなど大まかに説明された。そして、その部屋に着く
「まぁ最初に言っておきますけど、二人はこの部屋を見て絶望しましたからね?」
「部屋を見て絶望って聞いたことないですけど」
「百聞は一見にしかず、さぁどうぞ」
緋紗子先生に促され、扉を開けると
「な、なんじゃこりやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!???」
扉の向こうは、眩しいくらいに女の子以上に女の子の部屋。俺は端末を取り出し鴒にメールする
『帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい!!部屋がやばいわ!!( `△´)』
瞬時に返信が来る
『どんまい(b・ω・)b』
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
俺は屋敷に帰ってから、3時間くらいニートになっていた。




