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「乙女はお姉さまに恋してる―after.elder―」  作者: かずとん。
―Elder and virgins―
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第16話「秘密の園」

鴒に呼ばれてしばらく会話をした後、俺は学院内に戻る。廊下には体操着に着替えた乙女達がまだかまだかとソワソワしながら会話に花を咲かせていた。


「そうだよな、体操着に着替えなきゃいけないんだよな」


体操着は教室にある、だが今なかに入れば………いや、落ち着こう俺は女の子女の子………


「どうかなさいましたか璃季さん?」


「うわぁっ!?な、なんだ影祢さんかぁ」


ブツブツ呟きながら歩いていたせいで、背後からの問いかけにビビる璃季。影祢はクスッと笑みをこぼす


「あまり変な驚き方をしていては正体がバレてしまいますよ?」


「や、やめてください。それにそんなヘマはしません」


「でも私にはバレてしまいましたよ?」


「ぐぬぬ……」


勝てる見込みがない、向こうは軍にして1500でこちらはぼっちだ。兵法でも戦の基本は兵の数と言うし策略の数ならば影祢が圧倒的だろう。ならば


「あ、あの影祢さん?」


「はい?」


俺はかなり恥ずかしいが仕方ない、休めば変だと思われるしそれを回避するならこの手しかない。


「着替えたいので場所を探したいのですが」


「教室で着替えればよいのでは?」


璃季は思った、男だってわかっていて言ったのかそれとも一瞬でも女の子にだと思って言ったのか。


「影祢さん………」


「んー…………あ、いえ教室よりいい場所がございます」


「ね、忘れてたよね?」


「いいえ、滅相もないです」


「一瞬」


「いいえ」


頑固なところが昔から影祢にはあるが、変わっちゃいないな。身体測定はもう直ぐ始まることを思い出し、誰も使っていない資料室で素早く体操着に着替えて身体測定という人生最大の戦争に突入した。


聖應では身体測定と言っても普通の視力、身長、体重、座高等々以外にスポーツでも測定する。どこから測定しても構わないのが特長で各教室で様々な測定を行っている、廊下には列ができていたりする。


「最初どこはからやるべきか、結局作戦らしい作戦すら練られていないし。」


今朝任せろと言わんばかりの親指を立てた鴒から何の指示も飛んでこない、どこから周るか悩んでいると


「璃季お姉さま!まだ何も測定されていないのですか?」


「あ、果歩ちゃん。そうなんだよねまだ周れてなくて、果歩ちゃんはもう?」


身長の低い果歩は璃季の腕の袖をクイクイっと引っ張って、ここにいるよ!とばかりに主張してきた。身長が低いから人混みに入ると見うなってしまう。


「はい!先ほど胸囲を測ってきました」


「成果は?」


「それを聞くんですかお姉さま…」


「あ、ごめん…」


身長より胸を気にしてたのかな、女の子ってわからない。下手に慰めたら眼光で殺されちゃうよ


「そんなことより璃季お姉さまは身長から行かれてはどうでしょう?凛々しく背筋が伸びていて、女の子らしさのある胸………胸……」


「あー!じゃあ身長から!身長から行こうかな!果歩ちゃんも御一緒にどうかしら」


何かフォローをしたいが果歩自身が自爆していくのを見ているのは耐えられない、身長より胸なら身長を進めてみる


「は、はい!御一緒できるだなんて嬉しいです」


「オーバーだな、私達は姉と妹でしょ?」


「お、お姉さま…そんな」


タコのように真っ赤に染まる果歩、危険は回避されたはずだ。少しホッとした璃季は果歩を連れて身長を測定している教室へ向う。身長測定を行っている3年B組の廊下には列が出来ていた、その最後尾に璃季と果歩は並ぶ。


「3年のお姉さまばかりで、緊張してきました…」


「そ、そうだね」


今更になって女の子が苦手なのを思い出す、苦手と言うより嫌いに近いが自分でもわかるくらいには成長したのかもしれない。これも寮生活があっての、賜物かな?


さらに二人の後ろに人が並ぶ。


「ん、璃季さん」


「あ、皇紀さんも身長測定を?」


「あぁ、他はどこもいっぱいでね。確か君は」


皇紀は果歩の名前を思い出す仕草をする、ちゃんと会話をしたことがない。あの自稽古のあとのお昼を一緒にしたが果歩は皇紀にビビってしまい固まっていたからだ。


「い、杁江果歩(いりえかほ)でしゅ!!」


「い、いやいや果歩ちゃん。落ち着いて噛んでるよ」


「ふぁぁ!?」


最近果歩のリアクションを見るのが趣味になりつつあるかもしれない璃季、皇紀は微笑みながら果歩に挨拶をする。


「果歩ちゃんだね、改めまして雪皇紀です。よろしく頼む」


「は、はいぃ!」


果歩は余計に緊張したようで璃季はとっさに果歩の頭を撫でてしまった。慌てんぼな果歩が可愛く見えてしまう、妹と言うのは実際に持ったことがないし末っ子だ。姉さんもこんな気持ちだったのだろうか?


そうこうしているうちに果歩の出番がやってきた、身長測定担当は緋紗子先生だ。先生に誘導され果歩は身長を測る台に裸足で乗る


「お願いします」


「はいはーい、でもダメよ?踵上がってる上がってる」


「……お、お願いします」


果歩の頭の上にストンと青色の計りが着地する、昔からだけどあの頭に乗った瞬間はぞわっとする。恐らく璃季だけだと思う、踵の身長測定がおわり璃季の出番だ


「緋紗子先生、お願いします」


「ようこそ、それじゃ身体測定表を貸してください」


緋紗子先生にファイリングされた身体測定表を渡すと、書き込む準備をする3年の……


「や、夜埜依さん書記をしていたのですか?」


台に乗りながら話しかける、夜埜依はニコッとしながらこちらを見てくる。夜埜依は身体測定が終わったのだろうか?


「はい、こういうのをやってみたかったのです。皆さんが四面楚歌を奏でているのを見ていると心が暖かくなりまして、一回だけのつもりが終わるまでやってしまおうかと」


「の、ノリでやるんですね……」


頭に乗っていた計りが無くなり頭が軽くなると。緋紗子先生は夜埜依に数字を教えて書き込んでもらい、身体測定表のファイリングを返してくれた。すると緋紗子先生は璃季に耳打ちする


「ファイル2ページ目を開いてねっ」


「へ?あ、はぁ。」


生返事をした璃季、台から降りると緋紗子先生は次の皇紀の身長を測り始める。璃季は果歩と教室から出ると


「果歩ちゃん?申し訳ないのだけど少しお手洗いに行きます、先に周って来てくれるかしら?」


「わかりました、では後ほどっ」


果歩が居なくなるのを確認したあと女子トイレの洗面所に入る、先ほど言われたファイルの2ページ目を開くと。


「手紙?なんだろう」


ラブレターにしては質素、脅迫状にしてはやる気を感じないノートの切れ端が4つに畳まれて挟まっていた。それを手に取り広げるとそこに書かれていたのは


「!?!?」


          胸・囲・☆(きょうい)


なんで星なんだ、そんなことよりいきなりハードルが上がった。いくらなんでもあそこでは上着は脱がなくてはならない、パッドは着けてるがさすがにバレる。なのにこの仕打ちだ、神様酷いですこんなにも毎日がサバイバルなのに、しくしく……


「どの道最後は行かなきゃいけないもんな、でも流石にきつい……」


自分以外に上半身下着または裸が居るわけでして、鼻から熱い鼻水が流れることになるはずだ。


「でもこうしては居られない、男を見せろ俺!瑞穂や千早も乗り切ったんだぞ!」


最後は少数人にバレてるけど、まだ俺なんて影祢だけ!緋紗子先生はノーカン!そう考える璃季は手軽を握り締め胸囲を測っている教室へ向かった。場所は2階の2年A組だ


「大丈夫、大丈夫だなんとかなる。あの緋紗子先生が進めてくれたんだぞ?もしかしたら何か裏技を使ったのかもしれない」


そんなことはまず無い、担当は緋紗子先生ではないし影祢でもない。何故分かるかと言うと列に並んでいる女の子の会話から


「今回はお手伝いでやってきた女性の方が見てくれるんだって!」


「どんな人だろうね?美人だって皆言ってたし」


この会話を聞いていると絶望しかないんだけど、みるみる列は進みついに教室の入口までやってきた。


「ど、ドキドキシテキタ……」


中をチラッと見ると周りからは見えないようにカーテンはされていた、しかしそれは意味がない男なんだから裸になったら一発だよ。そしてついに呼ばれる、名前を


「竹ノ宮璃季さん」


「は、はぃ!!」


油の切れたロボのように中に入っていく、もうだめだと下を向く。生徒が使う木製の椅子に座らされついに……


「璃季さま、璃季さま」


「は、はぇ?」


聞き覚えのある声に聞き覚えのある呼び方に顔を上げると、正面に座っていたのは白衣を着た鴒だった。眼鏡を掛けていたり髪型を少し変えているがわかった


「では脱いでください、測りますから」


「測るふりではなく?」


「なく、測ります。」


駄々をこねたら怪しまれる、仕方ないバレるよりましだ。璃季は諦めて制服のシャツのボタンを外し胸を出す。作り物の胸が現れる、鴒が丹精込めて作られた胸はどっからどう見ても本物だがバレる時はバレるはずだ、瑞穂がそう言ってたし。


偽胸を測り始める鴒、なんか鼻息荒くないか?


「素晴らしい……璃季さまの胸は本当に素晴らしいです……」


「いいから早く終わらせてよ………」


苦虫をかみつぶした話し方で伝える、しばらくの間鴒に弄ばれた璃季は他の測定の時には精気がなく、気がついた時には涙を流しながら全て測定を終わらせたのだった。


その放課後、璃季は屋上で端末を取り出し何処かへ電話をする。呼び出し音がしばらく続いたあと


『もしもーし、薫子だけど』


「何が人生変わるかもよだよっっ!ばかぁぁぁぁ!!」


雨は知らぬ間に止んでいて屋上の水溜りには、璃季が嘆く姿が映し出されていた。

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