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雨音は恋のしずく  作者: ルイ シノダ
7/11

第三章 雨音 (3)

玲と別れた後、心の揺れに戸惑いながらも嬉しく思う弥生。そんな弥生の気持ちを知ってか知らずしてか。

桂は、玲だけがすべて。自分以外に目を向けようとしている玲に思い切った行動にでます。


第三章 雨音


(3)

「ただいま、お母さん」

「お帰りなさい。遅かったわね」

「うん、ちょっと」

玄関から上がろうとしている娘の顔を見て“あれ”と思うと微笑みながら

「お風呂あいているわよ。入りなさい」

頷いて二階に上がると着替えてから一階にあるお風呂に行った。

鏡の前で自分の顔をみると“なんだろう”自分でも理解できない心の揺れに分からないでいた。ただ、“葉月玲”という言葉だけが心の中に残っていた。

 湯船の中で水面まで顔を沈めると一気にお湯の中に潜った。ゆっくりと目を開けると

“えっ”一瞬だけ何かが見えた。もう一度目をつむってから見ると何も見えなかった。“気のせいかな”そう思いながら一気に立ち上がるとスレンダーな体に大きめの胸の隙間からお湯が滴り落ちた。

タオルを体に巻いてからお風呂のドアを開けると濡れている髪に別のタオルを巻いて“ふふふっ”と微笑むと鏡を見た。入る前と違ってすっきりとした顔をしている。“お化粧をしなくても十分に魅力的”勝手に思いながら二階の自分の部屋に戻るともう一度ドレッサーの前で自分を見た。

“やよい、どうしたの。君は恋をしたのかな。まさか”そんな思いが少しだけ心を触った。


玲は、家に帰った後、自分の部屋に入るとスマホを置こうとして着信マークが表示されているのに気付いた。

“サイレントモードにしていたから気付かなかったのか”そう思ってパスワードで解除すると桂からの着信が二回あった。メールが一つ入っている。

メールを開くと“玲、ごめん。もう三日も話していない。会いたい”それだけ書いてあった。

いつもなら自分の都合など聞かずに会う時間まで指定する桂らしくない内容に“少しは反省したのか”と思うと少し微笑みながら返信ボタンを押した。

“桂、会うよ。いつがいいの”そう入力すると送信ボタンを押した。すぐに返信が帰ってきた。いつもならメールではなく電話にするはずの桂が珍しく思えた。

“明日”それだけしか書いてなかった。“やっぱり桂だ”玲は微笑むとスマホを机の上に置いた。

会う時間は決まっている。桂の仕事が終わる時間が会う時間だ。この時だけは、弥生の名前が心から消えていた。


 翌日、玲は仕事を切り上げると、表参道にある桂のアトリエのそばにあるコーヒーショップで待った。

 入ってから一〇分、コーヒーを飲むまでもなく、桂が入ってきた。玲を見つけるとうれしそうな顔をして近付いてきた。

「玲」

それだけ言うと目の前の椅子に座って自分の顔を“じっ”と見て

「玲、今日は、お酒飲みたい」

「えっ、桂、お酒飲めたっけ」

「ううん」

いつもの返答に滑りそうになりながら“どうしたのかな”と思っていると

「いいでしょう。玲」

仕方なく思いながらいつものわがままだと思うと

「分かった。ただし、きちんとご飯を食べた後だよ」

「うん」

今度はうれしそう顔をして

「じゃあ、行こう」

いつもの桂に戻っていると思うと玲も微笑んだ。


この前、食事したホテルのバーでバーテンに薄くアルコールを入れたモスコミュールを頼むと

「わーっ、きれい」

いつもはアルコールなしでも雰囲気だけで気分が良くなる桂が“お酒飲みたいなんてどういうつもりだろう”と思いながら、見ているとグラスを両方の親指と人差し指でグラスの両方を触りながら、グラスから出ている白い二本のストローの片方を口にした。

ゆっくりと“怖々”ストローから吸い出すと口の中に含んだ。突然左に座る玲の方に顔を向け、

「おいしい、お酒って美味しかったんだ」

椅子から落ちそうになりながら微笑むしかない玲は、自分もジャックのロックを口にすると

「そうだね。適量を飲むと心も穏やかになるし」

「じゃあ、一杯飲むと」

子供っぽい目つきで隣に座る玲の瞳を覗き込むと

「だめ、桂はこれだけ。後はいつものアルコールなしのカクテル」

「えーっ、でも」

「桂、少しずつだよ。何事も」

暗に、急がなくていいからと諭すように言うと

「分かった、でも今日は二杯飲ませて」

「まったく、我がままなんだから」

「だって、玲と一緒だもの。安心だもの」

まるっきり子供っぽい顔になるとまた、うれしそうにストローに口を付けた。


バーに入った時は、まだ少し明るかった窓の外がいつの間にか暗くなっていた。バーに入ってから一時間くらいが経っている。いつもの桂との話に安心しながら、そろそろと思うと

「桂、お酒は、十分楽しみましたか」

「うん、でももう少し残っている」

グラスにまだ三分の一程残っている透明な液体を見ながらうれしそうな顔をした。そのまま桂を見ていると

「玲、お願いがある」

自分の顔を真剣に見ながら言う可愛い幼なじみに

「なに」

下を向いたまま黙っている。

「なに、桂のお願いならいつも聞いているだろう」

「本当に聞いてくれる」

まだ、顔をグラスの方にしか向けない桂に

「だからなあに」

“いつもの我がままだろう”と思うと軽く返事をした。

突然、顔を向けると小さな声で

「私を誘って」

「えっ」

「二回言わせないで」

“誘うって・・、えーっ”突然の幼なじみの言葉に

「桂、それは、なんでも」

「なんでも聞いてくれるって言ったよね」

酔っているのか、顔を少し赤らめながらはっきりした口調で言うと桂はカウンターのいすを降りた。その様子を見ながら“まずい展開。だからお酒飲みたいと言ったのか。もう” 

とにかくここはなのとか収集するしかないと思い、バーテンにチェックを頼むと桂の後ろを追った。

 

桂は、世田谷区の総合運動場にあるゴルフ場から怒ったまま帰ってくるとそのまま自分の部屋で泣いた。“玲、他の女性ひとに笑顔見せないで”って言ったのに。それにあの人。

花屋の店員と玲との間に、理解できない何かがあると感じていた。他の女性だったら気にもしなかっただろう。でも花屋の女性だから。

桂は、感じていた。“どうすれば玲は、私を見てくれるの”いつも自分しか見ていなかった幼なじみが、他の女性を見始めている。

 アトリエでデザインを考えていても進まなかった。一緒にアトリエを借りている薫がそんな桂の様子に直感的に感じると“桂、彼にあげなよ。先制攻撃あるのみ”要らぬことを言われたと思いながら“その手もある。いずれ、桂は玲のお嫁さんになるんだ。早い遅いはない”と思うとどうするか考えた。

“玲を誘えばいいんだ”そう思っての行動だった。お母様には“玲と一緒。遅くなる”とだけ言って有った。


「桂、待ちなさい。どうしたんだ。急に」

幼なじみの突然の行動に驚きながら左手をやさしく掴むと逆に掴まれた。

エレベータに引き込まれるともう一度自分の顔を見て客室階のボタンを押した。ロビー階を押すばかり思っていた玲は、桂の行動にしっかりと顔を見ると見返してきた桂の真剣な顔に“とりあえず、なんとか”と思うとそのままにした。

 やがて、エレベータのドアが開くと玲の手を握りながら廊下に出た。そして部屋の前まで来ると

「玲、お願い。ここからはあなたが先に行って」

桂は、あくまでも“玲が誘ってくれた。玲に自分の体を預ける”という気もちでいたかった。

「桂」

少し、間を置くとやがてエレベータホールの方から人の声がした。

「分かった。とりあえず入ろう」

そう言って、桂からカードキーを受け取るとドアを開いた。

 中に入ると大きなダブルベッドとカウンタバーが付いている結構な部屋だった。後ろからいきなり抱きつかれると何も言わないまま少し時間が流れた。

 ゆっくりと玲は桂の方を振り向くと

「とりあえずソファに座ろう」

そう言って桂の手を引いて座らせた。自分は座らずに膝をつきながら幼なじみの顔を見て

「桂、気持はよく分かった。でも急がなくてもいいよ。僕は桂のそばを離れない」

「だめっ、桂をお嫁さんにしてくれると言ってくれないと、だめっ」

いつもよりはっきりした言いように心の中にあるものを感じると幼なじみを見つめた。瞳の中に自分の顔が映っている。

やがて瞳を閉じるとそのままにした。とても可愛い、わがままな妹のような幼なじみ。その子が、“自分をお嫁さんにしてほしい”と言って、体を預けたいという行動にまで出た。


玲は、桂が大切だった。宝物のように大切な妹。とても体を合わすことなど考えも及ばなかった。

そばにいて見守り、やがて素敵な男性とめぐり合い結婚する。それまで守らなければいけない大切な女性ひとと思っていた。今までは。

「桂、分かった。桂は僕のお嫁さんになる。約束する」

そう言うと目をつむっていた桂が目を開けて

「じゃあ、証明して」

「えーっ」

酔った女性を勢いで抱くなんて考えても見なかった玲は、

「桂、こうしよう。今度きちんと誘う。今日は酔っているからだめ」

「なぜ、ここまで勇気を出したのに」

「お酒の力を借りてはだめ。僕がきちんと桂を誘う。それでいい」

「じゃあ、これだけ」

と言うと桂はまた、目をつむった。


仕方なく唇を近付け、少しだけ触るようにすると、はじめはゆっくりと唇だけが触っていた。マシュマロのように柔らかい感触、自分も少しだけお酒が入っているのか、そのままにしていると桂が自分の右手を掴んだ。そして彼女の左の胸に持って行った。

 “えっ”と思いながらその柔らかい感触に触っていると、ブラウスのボタンをはずし始めた。

“まずい”と思いながらもいつの間にかブラウスの前が開いていた。自分の手をブラの上に持っていくと桂は腕を後ろに回してブラのホックを外した。

 そして、玲の手をブラの中に入れさした。とても柔らかかった。ゆっくりと下から上に支えるようにすると今度は右の方に手を持って行きながら、軽くトップが手のひらに触った。

 唇が強く当たってくる。そのままにしていると、いつの間にかトップが反応した。桂が我慢できなくなって唇を付けたまま、何か声を出そうとしている。

 唇を離すとブラウスの前が開いて、可愛いピンクのブラのホックが外れて中途半端に肩からかかっていた。玲の瞳を見ながら桂はブラウスを脱いでブラの肩ひもを離すと

「玲」

と言って、しがみついてきた。


“運命なのかな”

「桂、本当にいいの」

何も言わないまま頷く幼なじみを抱えるとベッドに抱いて行った。ベッドカバーを外すとゆっくりとベッドに横にさせた。

「待って、スカートがしわになる」

そう言って、目をつむったままスカートのホックを外すと自分で脱いだ。可愛いブラとおそろいのピンクのパンティが見えた。

体重をかけないように桂にかぶさりながらもう一度唇を合わせた。右手で柔らかい胸を包むようにしながらトップを触ると桂が声を出し始めた。左の胸に唇を付ける。ピンク色のきれいなトップだ。

玲の体にしがみつきながら、自分が預けなければならない人と一緒にいる幸せを声にしているようだった。


 唇を下に降ろすと、パンティのひもに当たった。そのまま手を下ろすと少し盛り上がったところから急に下がった、手が上からそこに触ると一瞬、桂の体が硬直した。

「玲、やさしく」

それだけ言うと手をシーツに戻した。最初、やさしく上から触っているとだんだん湿ってきた。仕方なく玲はゆっくりとパンティを降ろすと片足から外した。

足を少し広げさせて、ゆっくりと顔を近付けるとピンク色の“ぷちっ”としたところに唇をあてた。桂の声が大きくなった。

ゆっくりと右や左に口づけをしながら少し手で開くように舌を奥に入れると桂は、我慢の限界を超えたようだった。声がとまらなかった。

可愛かった。そして素敵だった。唇をゆっくりと触るように上下すると、声がだんだん大きくなってきた。

 玲は、自分の洋服を脱ぎながら、桂の大事なところが準備できていることが分かると

もう一度

「桂、いいの」

と聞いた。

声を出したまま頷く可愛い幼なじみに大事なところに自分を当てるとゆっくりと進めた。桂が、眉間にしわを寄せて思い切り我慢しているのが分かる。

「大丈夫、桂」

「大丈夫だから。玲、来て」

そう言うと玲の体を強引に自分に引き寄せた。何回かの後、“すっ”と入った。そのままにしていると桂の顔が柔らかくなってきた。

 それを見てゆっくりと前後するとやがて、可愛い顔が別の意味で変わってきた。


 桂はたまらなかった。“玲に自分を預けることができた。これで桂は玲のお嫁さんになれる”。自分のまだ誰にも見せたことのない大切な所に玲の唇が触れると、体を突き抜けるような感触を感じた。

初めて知る鋭く、そして甘美な感覚に体を任せていると自分の大切な所にまだ知らないものが当たった。

自分の中に入ってくると信じられない痛みが走った。つい眉間にしわを寄せて我慢していると玲が声をかけてきた。やがて奥まで入るととても楽になった。

 玲が動き始めると、経験したことのない感覚に襲われた。たまらなかった。声を止めることができなかった。やがて

「桂、我慢できない」

「大丈夫、今日は」

そういうと思い切り体の中に温かいものが入ってきた。うれしかった。“私は玲のお嫁さん”その思いが一層、感情を高ぶらせた。そして頭の中が真っ白になった。


 玲は、体重がかからないように桂にかぶさると

「しちゃったね」

微笑みながら、恥ずかしそうに言うと

「うん、されちゃった」

うれしそうに言う幼なじみに

唇を近付けると目を閉じた。その唇を胸にずらしながら触っていると、また元気が出てきた。そのままに今度はさっきよりしっかりと大事なところに入れると大きく動かした。  

いつの間にか桂が眉にしわを寄せている。でもさっきとは違った感覚のようだった。やがて口から声が漏れると玲の背中に腕を巻きつけてきた。


 眠ってしまったのだろう。右腕の中に桂がいる。時計を見ると一一時前だった。まだ帰れると思うと

「桂、シャワーを浴びて帰ろう」

「うーん、泊って行こうよ」

「だめだよ。今度、ねっ」

腕の中で甘えながら言う幼なじみを説得してシャワーを一緒に浴びた。洋服を着ている時は気付かなかったが、結構胸が大きかった。

「どこ見ているの、エッチ」

「エッチって」

今更に思うと

「だーめ」

と言うと“くるっ”とまわって背中を見せた。素敵なラインだった。そのままゆっくりと包むように腕をまわして胸まで持っていくと玲の右腕に頬を乗せて“ふふっ”と笑った。


結局、桂を家に送り届けたのは夜の一二時を過ぎていた。玄関まで出てきた母親に頭を下げて誤ると娘の顔を見た母親が“ふふふっ”と笑うと

「玲ちゃん、泊って来てもよかったのよ」

そう言ってうれしそうな顔をした。玲は、顔を真っ赤にすると下を向いたまま門のそばに待たせてあるタクシーに乗った。


門をくぐり、すでに遅い時間と思い、静かに玄関のドアを開けると寝室から母親の足音がした。叱られるかと思って覚悟したが、玄関を上がった自分を見ると

「桂ちゃんも、同じ石鹸の匂いをしているの」

それだけ言うと微笑みながら寝室に戻って行ってしまった。

「えーっ」

確かにあの時、桂と一緒にシャワーを浴びたその時使った、石鹸の匂い。確かに腕に残っていた。


桂のすべてを賭けた行動に玲も自分の運命と思い、受け止めます。桂は、これで玲は自分をずっと見ていてくれる。お嫁さんになれる。純粋な気持ちから出た行動。あまりにも純粋な心。桂の一途な気持ちが現れました。うらやましいですね。家に帰ってから、母親からしっかりと見破られ、恥ずかしがる玲ですが。

しかし、そう簡単には人の心は進みません。

次回をお楽しみに。


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