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邂逅
全身を闇が包んでいた。
もう痛みという感覚を失っていた。
光も消えた。
身体を闇が浸食している。
俺は死ぬ。
目前にある死。
存在の消失。
永遠の闇。
死ぬわけにはいかない。
俺は。
まだ、死んではいけない。
人間界に降りたのは初めてだ。
こんな形で来るとは思わなかった。
人間の魔力を吸収するために。
人間を犠牲にして自身が生き延びるために。
俺はわずかな感覚を頼りに人間(餌)をさがす。
俺を回復させる魔力を持ち、俺の力に適合性を持つ人間。
見つかった。
今俺の前にいる。
ほとんどなくなった視力で餌をとらえた。
女だった。
目と口を大きく開き、言葉を失っているその顔が俺という存在の特異性を語っていた。
この女は死ぬ。
俺に殺される。
俺が生きるために。
殺す。
月明かりに照らされ、女の顔がはっきりと見える。
美しい。
人間でありながら餌でありながら。
なぜ俺はこんなにはっきりと彼女の顔を視認している?
彼女だけを…。
俺は―。