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序. 罪公主、澄蘭(ちょうらん)
皇帝の居所である、清寧殿。
その北のはずれにあるこの一室には、腊月の低い陽の光も届かず、昼前とは思えぬほどの冷気が満ちていた。
少女──澄蘭は、硬い床に膝をつき、じっと黙したまま父帝の言葉を待つ。裙越しに伝わる板張りの床の冷たさが、肌を突き刺すようだった。
「――罪公主、澄蘭。愚かな我が娘よ。……申し開きがあるのならば聞こう」
ようやく発せられたその声は、親子の情など微塵も感じさせない、淡々としたものであった。澄蘭はこわばった喉を動かし、掠れた声で応じる。
「……ございません」
部屋の中央、一段高い黒漆の玉座に、父帝は背筋を伸ばして腰掛けている。黒檀の柱と無機質な壁に囲まれた空間に、微動だにしないその姿はひどく威圧的に映った。
見下ろす眼差しは凍てつくように冷たく、澄蘭を真っ直ぐに射抜いていた。




