第5話 温泉の異変を探れ! 源泉に近づくほど寒くなる理由
村人の応急処置を終え、
俺たちは “温泉の源泉” を目指して山道を登っていた。
リリア
「ユウト様、本当にありがとうございます……
村の皆さんが、あんなに元気になるなんて……!」
「いや、ただ触っただけだけどね」
ガルス
「ただ触っただけで“人ひとり復活”するのは異常なのだが……?」
「いや普通に──」
メルダ婆
「普通ではないぞ」
(全否定された……)
◆山の奥へ向かうと、なぜか“寒い”
フェルメルトの山道は、本来なら温泉の蒸気で暖かいはずだ。
なのに──
リリア
「さ、寒いです……」
ガルス
「……ぶるっ……」
ユウト
「いや寒すぎない!?
温泉領ってもっとポカポカしてるイメージあったんだけど!?」
メルダ婆
「昔はそうじゃった。
ここら一帯は“湯の息吹”で暖かかったんじゃが……
今は魔力が薄くなりすぎて、冬みたいになっとる」
(魔力が薄い=気脈の流れが弱いってことか)
ユウト
「じゃあ、温泉が弱ってるだけじゃなくて……
“周囲の土地”まで巻き添えになってるってこと?」
メルダ婆
「その通りじゃ」
ガルス
「領主殿、これ放っといたらどうなるんだ……?」
メルダ婆
「村は……いずれ消える。
人が住めん土地になる」
(あ、これ結構ギリギリの状況なんじゃ……)
◆洞窟の入り口に到着。異変あり。
源泉があるのは山のさらに奥にある洞窟だ。
しかし──
メルダ婆
「……おかしい。
前は、ここに“湯気”がもくもく出とった」
ユウト
「今は……冷気しか出てないですね」
洞窟の入り口から漂うのは、
温泉とは正反対の ひやっとした空気。
ガルス
「湯気じゃなくて冷気……?」
ユウト
「温泉の魔力が……
どこかに“吸われてる”感じがする」
リリア
「吸われて……?」
(言葉通りだ。
気脈の流れが、何かに奪われてるような感覚がある)
俺は入り口付近の岩に手を置き、
かすかな魔力の流れを感じ取る。
(……やっぱり。
温泉の“根っこ”から魔力が引っ張られてる)
ユウト
「温泉を枯らしてる原因、ほぼ確定っぽいな」
ガルス
「お、おい……どんなやつなんだ……?」
ユウト
「わからないけど……
温泉の魔力が吸われる原因は一つしかない」
リリア
「ひ、一つ……?」
ユウト
「“生き物”だよ」
リリア
「生き物ぉぉぉ!?!?」
◆奥から聞こえてくる“謎の音”
シュー……シュー……
洞窟の奥から、一定のリズムで響いてくる。
ガルス
「な、なあユウト殿……
なんか吸ってる音に聞こえないか……?」
リリア
「すすすす吸ってますぅぅ?
なにを!? 空気!? 温泉!? 魔力!?!?」
ユウト
「多分……魔力」
(完全に“吸ってる”音だ)
メルダ婆
「気をつけるんじゃ。
この先には、ワシも見たことのない“影”が潜んどる」
ガルス
「ワシ見たことあるぞ……!」
メルダ婆
「ないわ」
(メルダ婆の返しが強すぎる)
◆源泉の前に漂う“違和感”
洞窟をゆっくり進むと、
かつて温泉が湧いていた大きな泉が見えてきた。
ただ──
(……水が、ほぼない)
底が見えるほど干上がり、
ところどころ泥がひび割れている。
(これは……“自然に枯れた”状態じゃない)
ユウト
「……人工的というか、
“何者かに吸われ続けた跡”だ」
ガルス
「跡……?」
ユウト
「ほら見て。
泥が“内側に向かって引っ張られた形”になってる」
リリア
「うわぁ……ホラーすぎる……」
(人間の体でも、
負担のかかる場所は“引きつれる”ように硬くなる)
温泉も同じだ。
“負担”がかかれば、地面にも痕跡が残る。
この枯れ方は異常。
まるで――
“巨大な何か”が、
ここに口をつけて吸ったような……。
◆奥から“光る目”が現れる
シュー……シュー……
ユウト
「……っ!」
ガルス
「ユウト殿……あ、あそこ……!」
リリア
「ひ、ひぃぃ……!」
闇の奥に──
ぎょろり
光る、二つの目。
(来た……!)
ユウト
「みんな、下がって」
メルダ婆
「気をつけよ。
あれが……温泉枯れの元凶じゃ」
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