第4話 『領主就任初日で村人を全員元気にしてしまった件』 ──温泉枯れてても、とりあえず応急処置だ!──
温泉源へ向かう前に、
メルダ婆に言われた。
メルダ婆
「ユウト、先に“村人をなんとかしてくれ”」
「温泉見る前に!?
順番的にそっちが先なの!?」
メルダ婆
「倒れておる者が多すぎて、話が進まんのじゃ」
(まあ確かに、道中だけで十人は座り込んでたな……)
◆村の“治療所”…のはずだが
案内された治療所は、
もはや避難所のような状態だった。
・咳してる人
・腰押さえてる人
・頭痛でうずくまる人
・なんかもう諦めて寝てる人
ガルス
「ユウト殿……ここが村の治療所で……」
「いや治療“してない”だろどう見ても!?」
リリア
「て、手が回らなくて……人手不足で……」
(そりゃ虚弱状態で治療なんてできないよな)
ユウト
「よし、じゃあ全員一回座って!」
治療所の20名ほどの村人
「「「すでに座ってる……」」」
「……じゃあそのままで大丈夫です!!」
◆ユウト、まず“体の状態”を見る
(全員共通してるのは……)
・顔色が悪い
・呼吸が浅い
・手足が冷たい
・だるさと倦怠感
(明らかに“循環と呼吸の問題”だな。
気脈=魔力が弱ってる影響で、全身の巡りが悪くなってる)
ユウト
「みんな、ちょっと実験させてね。
痛いことはしないから!」
村人
「じ、実験……!?
領主様に実験されるの……!?(震え)」
「なんでそんなホラー想像してるの!?」
◆鍼は使わず、“触れるだけの調整”
村人の不安を減らすため、
ユウトはまず軽く触れるだけの方法を選んだ。
(この世界の人は鍼を怖がる可能性があるし、
まだ信頼関係もない)
ユウトは倒れていた老人の背中に手を置いた。
ユウト
「ここ、ちょっとだけ押すね」
老人
「ひゃっ!? 若いの、そこは……!」
ユウト
「痛い?」
老人
「いや……気持ちいい……!
なんじゃこの“肺が広がる感覚”は……!」
(よし、巡りが反応してる)
次の人へ。
◆村人、次々と元気になる
ユウト
「ここを少し……はい、力抜いて」
若者
「あれ!? 胸が軽い……!
呼吸が深く……え、なにこれ!?」
おばちゃん
「腰の重さが消えた!?
領主様、魔法使いなの!?」
「魔法じゃないよ!!!」
(まあ、この世界の人から見ればそう感じるよな)
軽く調整するだけで、
村人たちは次々と顔色が良くなっていく。
・呼吸が整う
・血色が戻る
・姿勢が自然とまっすぐになる
・声にハリが出る
「すごい……身体が軽い!!」
「ユウト様……天使……?」
「村が救われた……!!(早い)」
「まだ始まったばかりだよ!?!?」
◆ガルスとリリアも“治療(?)”される
ガルス
「領主殿……ワシも……頼む……」
「ガルスさん、ちょっと肩貸してください」
ユウトが軽く肩に触れ、呼吸を誘導する。
ガルス
「すぅ……はぁ……
おぉ……? 体が……熱い……!」
(体が温まったのは、巡りが改善した証拠だな)
リリア
「ユ、ユウト様……わ、私は……その……」
「うん、リリアもやろう」
ユウトがリリアの背中にそっと手を添えた瞬間、
リリア
「ひゃぅっ……!?!?」
「変な声出た!!?」
リリア
「す、すみませんっ!
そ、それ……すごく……効いて……!」
(まあ恥ずかしがり屋さんだからな……)
◆メルダ婆、驚愕する
メルダ婆
「ユウト……なんだ今のは。
村人全員、生き返ったように元気になっとるぞ」
「ただの応急処置ですよ。
温泉が復活しないと、本当の意味で元気にはならないので」
メルダ婆
「……ユウト。
お前、本当にこの村に来てくれてよかった」
その言葉にユウトは照れながら笑う。
「俺はただ……人が元気になるのを見るのが好きなだけです」
(前世でも、結局それが一番嬉しかったからな)
◆村人、テンションMAX
治療所の外に出ると、
さっきまで倒れていた村人たちが――
・走る
・ジャンプする
・歌う
・踊る
「領主様ああああああ!!」
「ユウト様、すごいんです!!」
「久しぶりに息ができてます!!」
「いや普通にできて??」
リリア
「ユウト様……この村はもう……あなたのファンだらけです……!」
(ファンとかいう概念、この村にあったんだ……)
◆そして次なる問題へ
メルダ婆
「ユウト、応急処置ありがとう。
だが……問題はまだ残っとる」
「温泉……ですね」
メルダ婆
「そうじゃ。
村人を“本当に救う”には、温泉を元の姿に戻さねばならん」
ユウト
「じゃあ行きましょう。源泉へ」
こうして、
ユウトたちは“温泉の心臓部”へ向かうことになるのだった。
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