Chapter 1 Awakening of Light 02
昨日の出来事から、私はこの双子のことが特別気になっていた。
私のオーラを読み取る力。最初は、精神的に疲れていて、二人のオーラが変に見えただけなのかと思った。
弟のユウは温かい金色。そして、兄のアイは……底知れない空虚さ。
そして今日、私はいつものように自分の能力を使っていた……別に使いたくて使っているわけじゃないけど、まるで眼鏡をかけっぱなしで、しかも外せないようなものだから、使いたくなくてもどうしようもない。
「あ……エヴァ、一緒にお昼ご飯食べない?」
クラスの女子の一人がそう聞いてきた。ああ、もう昼休みか。
うん……特に悪意はない。いつも一人でいる私を気の毒に思ってくれているんだろう。考えてみれば、時々誘われることはあった。
私は薄く微笑んで、軽く首を振った。
「大丈夫だよ、ありがとう。お弁当持ってきてるから」
「じゃあ、も、もし……!」
「いいよ、いいよ。気にしないで、行ってらっしゃい」
私は話を切り上げた。女子は軽く会釈をしてから、教室を出て行った。
見ての通り、能力は何もおかしくない。普段通りに使えている。
「……」
私はじっと……茶髪の男子生徒を見つめた。彼は今、教室の後ろにいる双子の兄のところへ歩いていくところだ。
ユウのオーラは、昨日と同じく金色のままだ。
「アイ!飯食おうぜ!」
「お前一人で行け。あんまり腹減ってない」アイは冷たい声で断った。
ユウは楽しそうに笑った。
「もう飽きたのか?俺は全然飽きてないぞ」
「たった二週間で飽きた。学食にそんなにメニューが多いとでも思ってるのか?」
「まあまあ、俺だってこういうの久しぶりなんだもん」
「好きにしろ。あいつらが待ってるぞ」
「そっか!じゃあ……腹減ったら、いつでも来いよな!」
そう言って、ユウは友人グループと一緒に楽しげに連れだって、食堂へと向かっていった。
盗み聞きはマナーが悪いけれど、かなり親しげな兄弟の会話とはいえ、その言葉の端々に、少し気になることがあった。
やっぱり引っかかるわね。
二年間姿を消して、何事もなかったかのように現れたこと。しかも、他の誰もそれに気づいていないみたいだ。
おかしいのは、私だけってことなのね……。
この疑問を誰かに尋ねようにも、私には友達が一人もいない。考えてみれば、誰の誘いも断ってきたんだから、当然だ。
家から持ってきたお弁当箱を開けていると、スッ、と静かに手のひらが机の上に置かれた。
その手は、トントン、と軽く机を叩いて私を呼んだ。しかも、黒い手袋をしている。
「お前」
そして、冷たい声で私を呼んだ。
私は顔を上げた。
黒い瞳の男子生徒が、私を見つめている。もちろんオーラは見えないから、彼がどんな感情で、どんな意図を持っているのかは分からない。だけど、少し身の毛がよだつ。
あれが……本当に高校生の目つきなの?
「何?アイ」
私はそれだけ答えて、お弁当箱の方に視線を戻した。
「弟を断って、私と話すために来たわけ?あなたも結構、人たらしね」
「フン」
人たらしって何よ、こいつ。
オーラは読めないけれど、こんな風に近づいてくるなら、目的は限られているはずだ。
私は首を振りながら言った。
「もし口説くつもりなら、他へ行って……」
「昨日、ユウと何を話した?」
「えっ?」
「聞こえなかったのか?」
……色恋沙汰で近づいてくる輩には慣れているけど、こいつにはどう答えるべきか。
「……」
ちらっと見てみる……うわ、目が怖すぎる。
オーラが読めないと、こんなにも会話が難しいものなのか。
私は平静を装った。
「ブラコン(シスコン)なの?心配しなくてもいいわ。弟さんを彼氏にする気はないから」
「……」
「それと、人に話しかける時は、もう少し言葉遣いをどうにかしたら?……」
「[_____]」
は……?
今、彼は……何を言った?
私の理解できない言語だ。そして、自分のオーラは見えないけれど……その言葉に、私のオーラが波打ったような気がした。
私が戸惑っている間、アイはわずかに驚いたように瞬きをした。
「お前……どうして……」
それから、首を振った。
「どうでもいい……今後、ユウに近づくな。頼むぞ」
「意味の分からないこと言わないで。どこかへ行ってよ。人にご飯食べさせろっての。何邪魔しに来てんのよ」
「ああ」
私がかなりきつい口調で言ったにもかかわらず、アイはただ短く答え、静かに自分の席へと戻っていった。
「…………」
うーん……見られている感覚って、こういうものなのね。振り返らなくても、あの鋭い瞳が私をじっと見つめているのが分かる。
「食堂に行こう……」
私はそう決断し、お弁当を片付けて、あの気味の悪い視線を後に、食堂へと逃げ出した。
……食堂は予想通り人が多い。これも、必要がなければここに来たくない理由の一つだ……うん、今は最大限の必要性があるわ。
もし教室に居続けたら、見張りに監視されながらご飯を食べる囚人みたいになる。
家から持ってきたお弁当を食堂で食べるのは変かもしれないけれど、やっている人がいないわけじゃない。だから、変な人だと思われる心配はない。
変なのは、一人で食べていることの方だけど。
「……」
いつも通りだ。
いつもこうやって一人で食べているじゃない。なのに、なんで……。
私はこれ以上余計なことを考えないように、自分の頬を軽く叩いた。
「私……友達なんて必要ない」
相手の意図を読み取りすぎて、結局、変人扱いされる。最終的に、私は一人でいる道を選んだ。失望を恐れず、相手の変わっていく視線を恐れなくていいように。
「あなた、本当に変人ね」
その言葉は、今でも響く。
これで、いいの……。
「ちょっと座るぞ!」
その時、声がして、私の思考は中断された。
私は茶髪の男子生徒を細めて見て、ため息をついた。
「やれやれ……兄貴の次は、弟が来たってわけ?」
テーブルを共にしたユウ、アイの双子の弟は、どういうつもりか首を傾げた。
「何か言った?」
「別に。さっき、あなたのお兄さんに少し文句を言われただけ」
「仲良くなったのか?」
「まさか……あなたと仲良くないのと同じよ」
私は遠回しに、早く行ってくれという合図を送った。
……アイの言葉に従っているわけじゃない。ただ、これ以上厄介なことに関わりたくないだけだ。この双子には、どう考えても関わらない方がいい、何か奇妙なものがある。
「ひどい言い方だな。まあ、確かに……俺が馴れ馴れしく声をかけてるのかもしれないけど」
「ええ」
なら、さっさと行ってちょうだい。
それから……トス、と小さな音がした。
音の方を見ると、ユウがテーブルに牛乳パックを置いた。まるで、私に差し出しているみたいだ。
「買ってきた」
「は?」
「昨日の謝罪の代わり?」
「バカなの?あんなこと、大したことないし、謝罪はもう済んでるでしょう」
「言葉だけの謝罪じゃ、あんまり誠意がない気がしてさ」
「そう……」
「もしかして……イチゴ牛乳、嫌い?」
「牛乳は飲まない」
「じゃあ、お茶を買ってくる」
「はぁ!?」
アイとの会話も難しいと思ったけど、こいつはそれ以上に厄介かもしれない。まるで壁と話しているみたいだ。私が言っていること、理解してるの???
私が言いたいのは、何をくれたって受け取らないってことなのよ!
ユウは純粋な目で私を見た。本当に他のものを買いに行くつもりなの……?
やれやれ。
私はユウから牛乳パックをひったくった。
「おっと!?」
「これで謝罪は受け取ったってことでいい?もう満足?」
「うーん」ユウは顎に手を当てた。「君が許してくれたら、満足だよ」
「はい、許すわ」
私の声にはイライラがにじんでいたが、こいつは思っていたよりも鈍いようだ。
「ははっ!そうかそうか!ありがとうな!」
……少なくとも、これで一件落着したと思えばいい。願わくば、この双子とはこれ以上関わりがありませんように。
「じゃあ、邪魔したな。許してくれてありがとう、エヴァ」
「はいはい」
私は手を振った。
その瞬間……
何と表現したらいいか分からないが、一瞬の間に、体が奇妙に感じた。全身に鳥肌が立ち、体中が震える。
どうやら、この感覚を感じているのは私だけではないようだ。
……を除いて……
ユウが食堂の外を、金色の瞳で見つめた。ユウって、前はこんな目の色だったっけ……?
「……この感覚は……」
彼のふざけた表情が消え、眉間にしわを寄せた真剣な顔になった。
周囲は静まり返っている。
静かすぎて……嫌な感じだ。
私が尋ねる間もなく、ユウは食堂中に響き渡る声で叫んだ。
「みんな!!!伏せろ!!!」
次の瞬間、食堂全体を吹き飛ばすほどの凄まじい衝撃が発生した。鼓膜が破れそうなほどの爆音。めまいが治まり始めたとき……
悲鳴と怒鳴り声が後に続いた。
直前、原因不明の爆発的な衝撃が食堂を襲ったのだ。
すべてが突然で、誰も対応できなかった。いや……ユウの叫び声がなければ、もっとひどいことになっていたかもしれない。
「うっ……!」
私は喉を鳴らした。そして、自分がユウの腕の中にいることに気づいた。
「エヴァ!大丈夫か!?」
彼は自分の体で衝撃から私をかばってくれたのだ。
「だ、大丈夫……」
「……ちくしょう、魔力の波か」
魔力?
何を言っているの。
ユウは私の肩を掴み、強く言った。
「いつまた撃ってくるか分からないけど、今は逃げた方がいい」
「あ、え……」
「動ける人は、隣の人を支えてやれ!グループで来てるなら、人数をしっかり確認して!誰一人、見失うなよ!」
ユウは驚くほど明確に、食堂の全員に指示を出した
誰もが恐れていたけれど、ユウの声は皆を従わせた……これが、あの金色のオーラの正体なの……?
「体育館に逃げるぞ!」
「た、体育館って!?」私は聞き返した。
「あんな攻撃、建物の中にいるのはまずい。かといって、野外にいるのは的になりすぎる。だから、屋根がない体育館が一番マシなはずだ」
「ちょっと待って!そんなこと言ったって!一体何が起こってるのよ!?」
「いいから!」
そして、それが全ての混乱の始まりだった。私には、心の準備をする時間すら与えられなかったのだ。




