Chapter 5 Edge of Revival 01
「うおっ!!!」
叫び声が上がると、すぐにその声は、訓練場の芝生の上で、俺の胴体に思い切り打ち込まれた木刀の音にかき消された。同時に、俺はゴロゴロと転がった。
軽く打たれただけで、力を込めていたわけじゃない。正直に言えば、彼女は手加減していたのに、俺はまだ痛い。
「お前ってやつは……何度言ったらわかるんだ。戦いはただ突っ込んで攻撃するだけじゃない」
彼女はそう言って、ため息をつきながら俺を見た。
「そう言われても……」
「はぁ……お前は勇者とかなんだろう?いつまでも甘えてないで、さっさと立ち上がれ」
俺は這いずるようにして体を起こし、師匠である女性を見た。
「はい!」
師匠は俺の構えを一瞥してから、再びため息をついた。
「それにな……剣術なんて、大して役に立たないじゃないか。お前みたいな冒険者は、スキルだけ使っていれば十分だろう?」
師匠はいつもそう言った。この世界では全てがスキルとパラメーターで決まる。どうやって伝わったかも分からない剣術、そして唯一の継承者である彼女は……俺がなぜそれを学びたいのか理解していなかった。
で、俺はいつものように答えた。
「身につけておいて損はないかと。スキル使用を封じるモンスターに遭遇しないとも限らないですし」
「魔王相手だって、そんなものはないさ。……まあいい。お前がやりたいなら好きにしろ。ただ、もう少し真面目にやれ、ユウ」
その後も、その日は何度も師匠と剣を交えた。訓練道具が木刀だけだというのに、俺は毎回、打撲傷を負って帰ってきた。
そんな中、師匠が言った。
「そうは言っても、よく聞け、ユウ。……身につけておいて損はないとしても、剣術には限界がある。お前がスキルや魔法を使う相手に、剣術だけで戦おうとするなら、後悔することになるぞ……」
なんで……今になってそんなことを思い出したんだ?
俺は、紫色の強化オーラに包まれた掌による攻撃を、シャイニング・ソードで受け止めながら呻いた。
「何をぼーっとしているのですか!?」
ディコイルは怒鳴り、俺のガードを突き破って攻撃を叩き込んできた。その動きは専門家のように複雑ではないが、あの掌を受けるたびに、いつも奇妙な症状が現れる。
状態異常ではない。俺には、あらゆる状態異常を無効化する加護がある。
マナドレインか?……違う。俺たちにはそんなものはないはずだ。
俺は一体、何を受けているんだ?
技の鋭さが徐々に失われ、ほとんど剣を振るうことすらできなくなりそうだ。
「ユウさん!」
遠くでリリーがサポートしているが、彼女にできるのは支援だけだ。たとえ隙があってもディコイルにとどめを刺す攻撃はできない。さらに、リリーのバフはまだ効果時間が切れていないとはいえ、ディコイルの掌を何度も受けている俺には、それらのバフもあまり役に立たない。
今使えるスキルの中で、残念ながら最強の技であるRadiant Bladeでは相手を倒せない。だから、これより弱いスキルを使っても効果はないだろう。
だから、俺に残されているのは、剣と積み重ねてきた技で奴を倒すことだけだ。
ドン!
まただ……この掌!
もう剣を握ることすらできなくなりそうだ!
「どうやら三分も必要ないようですね。今のあなたは……まるで雑魚同然だ!」
「……フン、よく喋る奴だ」
「あらゆる状態異常を無効化するその加護は、千年魔法使い様の『アブソリュート・アイソレーション』に匹敵する、いや……それを上回るかもしれません!」
動きが遅くなり、防御力も低下している。俺はディコイルの掌を再び食らった。
「疑問に思っているのでしょう!私の攻撃が何なのかと!?」
「もうだいたい見当はついている!!!」
俺は突っ込んできた掌を避けるために一回転し、同じように後退したディコイルに斬りかかった。
わかった。この奇妙な感覚が何なのか。
二年も感じていなかった感覚だ。
俺は尋ねた。
「S.P.(スタミナポイント)吸収……だろ?」
仮面の下で笑みが浮かんだのが感じられた。そしてディコイルは、不気味な紫色の渦を残して目の前から消えた。テレポートか!
俺は背後から来た掌をシャイニング・ソードで受け止めた。
ディコイルは叫んだ。
「その通り!ですが!それがS.P.吸収だとわかっても!あなたにはどうすることもできない!そして、あなただけに存在するステータス値であるS.P.を回復させるスキルを持つサポーターは誰もいない!」
S.P.という数値をシステム上の意味で使っているのは、俺だけだ。
異世界の冒険者のステータスウィンドウにはS.P.の値は存在しない。簡単に言えば疲労度だ。しかし、その値を本格的に使っているのは、別の世界から来たために他の人間と異なるシステムを持つ俺だけなのだ。
それなのに、異世界人であるディコイルが……どうやってS.P.の存在を知ったんだ……。
しかも、俺だけに特化した能力まで。
俺は剣の刃でディコイルの掌の力に対抗した。
「貴様、一体何者だ!?」
「魔王様の遺志を継ぐ者ですよ!グラー……!」
魔法だと?しかもアイと同じように詠唱を省略している!
近すぎる。いや、俺は元々接近戦を挑んでいる。だから、魔法が放たれる瞬間に、それが何の魔法か読み取って、避けるしかない!
そう思ったが、俺が受けた魔法は、最初から避けることが不可能なものだった。
「『S.P.ブレイク』!!!」
「ぐっ……!?」
まるで体の内側から爆発したかのように、俺は目を見開いて数歩後退した。息ができないほどの激痛だ。
ディコイルは掌を握りしめながら言った。
「『マナ・ブレイク』はご存知でしょう?失われた魔力に比例してダメージを与える魔法です。失われた量が多ければ多いほど、その威力は増します……」
風がローブをなびかせた。
「何回受けましたかね、7回……いや、8回ですか?あなたのS.P.はもう限界に近いでしょう。『S.P.ブレイク』は、あなたにとって止めを刺す一撃のようなものですよ」
俺はその魔法を知っている。魔術師クラスの間でも恐れられている魔法だ。それなのに、同じ条件でS.P.に反応する魔法があるなんて、思いもよらなかった。
「どんな気分ですか?減ったゲージの隙間が爆発させられる瞬間は」
ディコイルはそう言い、満足げに笑った。
……冗談じゃない。俺一人だけを狙って傷つけるための特殊能力だと?こいつ……
「ル……Luminous Bind!」
リリーはディコイルの両手首に拘束スキルを放った。
「はい?」
「ユウさんを傷つけないで!!!」
リリーは叫んだが、相手は首を振りながら言った。
「これはプリーストさん、私も後方にいるサポーターを攻撃するほど非道ではありませんよ。……ですが……」
ディコイルは、俺には何を使ったのか見当もつかないほど簡単にリリーのスキルを打ち消した。
「……これ以上邪魔をするなら、容赦はしませんよ」
仮面をつけているにもかかわらず、その下のプレッシャーでリリーは地面に膝をついた。
ちくしょう、ほとんど動けない。なんでこんなに強力なんだ……
「……エヴァ」
俺は呟き、視線を向けた。
エヴァは顔面蒼白で、ブラッキーは彼女の腕の中で意識を失っている。
彼女はディコイルの標的だ。そして俺の役目は、彼女を奪わせないこと。たったこれだけの役目なのに、このざまは何だ……俺は勇者じゃないのか。
……いつになったら、アイは来るんだ。
……
違う……三分なんて、敵の口から出た言葉だ。信じられるはずがない。
それに……俺はいつまでもアイに頼るほど弱くはない。
たとえ今、全力を出せなくても、俺にはまだできることがある。
ディコイルはエヴァを狙っている。女神の力を何に使うつもりかは知らないが、だからこそ……俺はここで倒れるわけにはいかない。
アイが来るのを待つだと?笑わせるな。
自分は何のために勇者になったんだ!
「さてと、楽しい時間は終わりですね……では……」
ディコイルは、以前使っていたのと同じ短剣を取り出した。たしか、モンスターの素材で作られた武器、『リヴァイアサンの牙』だったか……
そして今、その短剣は紫色のオーラに包まれている。
今だ。奴が油断しているこの瞬間に。
誰に卑怯者と言われようが、不意打ちだと非難されようが構わない!俺には、そんなくだらないことよりも守るべき大切なものがある!
俺は肩に力を入れ、握った剣の刃を地面に向け、少しだけ後ろに引いた。
ディコイルが腕を振り上げたその瞬間……俺は。
「やあっ!!!」
剣術の技の一つ。背後から上に向かって半円を描くように斬り上げる『月断ち(げつだち)』。
空中に切り込みが入り、短剣を持っていたディコイルの右腕が切断され、宙に舞い上がった。
「……!?」
ディコイルは驚き、わずかにその腕を見上げた。
次は『天涯砕き(てんがいくだき)』を使って、眼前の水平面を一掃し、奴の胴体を両断する!
しかし……二撃目の技がディコイルに命中しようとしたその時。
「だから言ったでしょう……」
剣の刃が、そこで止まった。
違う……止まったのは、俺の体の方だ。
「ごはっ……!」
全身が痺れ、体が重く、信じられないほどに体がずっしりとした。
切り落としたはずの腕が、短剣で俺の胸を突き刺している。血が白いシャツに染み出した。
……攻撃に集中しすぎたのか?いや、それよりも、俺は確かに奴の腕を切断したはずだ。
ちくしょう……目の前が。
視界が暗闇に覆われ、同時に目の前の景色が反転した。そして、視界に映ったのは公園の芝生だけだった。
ディコイルの声と共に。
「太陽神の力を使えないあなたは、あまりに弱すぎますよ……勇者殿」




