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鑑定スキルに頼らない男、異世界で品質を叩き直す  作者: やしゅまる


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第17話「三人でつなぐ真理」

王都ミドルブリッジ――大通りはいつも通り喧噪に満ちていた。

だがその中に、ひそやかなざわめきが交じっている。


「聞いたか? 公開再審問の結果……」

「鑑定は絶対じゃないらしい」

「新しい基準……“品質試験”とかいうやつだ」


その噂は、商人の間から職人、そして冒険者へと広がり、まるで見えない波が押し寄せるように王都全域へ拡散していた。


しかし――同時に、もっと重い圧力も動き出していた。


王立鑑定院。


彼らは、揺らぎ始めた“権威”を守るために、静かな牽制を各所へ送っていた。


「冒険者ギルドは、神崎悠真への協力を即時中止せよ」

「鑑定に対抗する基準の公開は、国家秩序への挑戦と見なす」


ギルド長バルドは、卓上の書状をぐしゃりと握った。


「……面倒なことになったな」


だが、悠真は肩の力を抜いたまま椅子に寄りかかる。


「想定の範囲内です。焦る理由はありません。」


バルドは苦笑するしかない。


「お前はほんっと肝座ってんな。」


悠真は首を横に振った。


「座ってなんかない。ただ――数字は、逃げません。」


その言葉に、バルドはふっと笑った。


「……信じてるんだな。お前自身の“やり方”を。」


悠真は答えなかった。ただノートに新しい観測値を書き込む手を止めない。



同じ頃。


王立錬金学研究棟、その一室。


魔導灯の下、フォルンは机に広げた数枚の測定表を見つめていた。


鑑定結果と、実測値の比較表。


硬度。魔力伝導率。腐食耐性。薬効持続時間。


そのどれもが――わずかに、あるいははっきりと、鑑定と異なっていた。


フォルン

「……鑑定は絶対ではない。

 だが、無価値でもない。

 では……どこに差異が生まれる?」


フォルンは再び計測器を手にする。

魔力を最小限に抑え、条件を一つずつ変えていく。


“鑑定に影響する因子”を探るために。


だが。


計測中の手が、ふっと止まる。


フォルン

「これは……“揺らぎ”だ。」


声が震えていた。


「同じ素材でも、持ち手の状態、使用者の魔力、意識……

 その変動によって、鑑定は揺れる。」


――“絶対”ではなく、“傾く”技術。


フォルンは目を閉じた。


心の奥底が、静かに崩れ落ちていくような感覚。


そこに、扉の音が響いた。


「フォルン。」


白銀の髪が揺れる。

マリア=クローヴァ。


元・鑑定絶対主義者。

しかし、悠真に敗れ、“結果”を見つめる道を選んだ人。


フォルンは視線を逸らした。


「……笑うといい。私が、ようやく気づいたと。」


マリアは首を振った。


「気づくのが遅いことは、恥じゃないわ。

 気づかないまま“信仰”に逃げることが、本当の敗北よ。」


フォルンの喉が震えた。


「私は……怖い。

 私は信じていた。鑑定こそが“世界の真理”だと。

 それが揺らぎ始めている。

 私は……何を信じればいい?」


マリアは手を伸ばし、フォルンの震える手に触れた。


「信じればいい――“自分で確かめる”という選択を。」


その言葉は、静かで、優しくて、逃げ道がなかった。


フォルンは、ようやく涙をこぼした。


「……私は、“真理”を見たい。

 誰かが決めた正しさではなく。

 世界が、確かにそこにあるという実感を。」


マリアは微笑んだ。


「なら、行きましょう。

 私たちはもう――悠真さんと“同じ場所”に立てる。」



夕刻。


ギルドに戻った悠真は、扉が開く気配に顔を上げた。


立っていたのは――フォルンとマリア。


フォルンは一礼した。


「神崎悠真。

 私は――真理を確かめたい。

 あなたの“測るという道”に、同行させてほしい。」


悠真は少しだけ驚き……そして笑った。


「ようこそ。面倒な現実世界へ。」


リネがぱっと笑顔になり、バルドは深く頷いた。


その瞬間――


“鑑定”と“品質試験”


――二つの力が、初めて並んで歩き始めた。


そしてこの出会いが、次の“最終の戦い”を導くことになる。

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