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鑑定スキルに頼らない男、異世界で品質を叩き直す  作者: やしゅまる


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第10話 守るもの

夜の町に、木造の新しい建物が静かに佇んでいる。


まだ木の香りが新しいその建物の額には、ランタンの光に照らされて文字が浮かぶ。


《町立 試験局》


昼間は子供から老人まで、誰もが興味深そうに覗き込み、目的もなく看板を触っていく。その様子は微笑ましいほど日常で、穏やかだった。


しかし、夜は違う。


その建物の前に、音もなく影が落ちる。


黒い外套。顔を覆う布。気配は薄く、殺意は鋭い。


「……確認。対象は睡眠中。侵入可能。」


低く、人の温度を感じさせない声。


三つの影が、戸口へ歩みかけた——その時。


「動くな。」


声が、暗闇を裂いた。


月光に照らされるのは、少年の背。

鍛冶屋の見習い── ルド。


彼は震えていた。だが、逃げなかった。


「ここは……俺たちの“場所”だ。好きにはさせない。」


暗殺者たちが冷笑する。


「子供が。何が守れる。」


ルドは、ゆっくりと剣を抜く。


折れない鉄芯剣。

悠真の試験を経て、改良を重ね、ついに生まれた“結果”だ。


剣の中心には柔軟な鉄芯、刃は適正硬度。

衝撃を受ければ、折れず、しなる。


「この剣は……人を守るために作ったんだ。」


黒衣の影が、一斉に飛びかかる。


金属音が夜空に弾けた。


ガギィンッ!!


暗殺者の細刃が、ルドの剣に弾かれ、逆に砕け散る。


「なっ……!」


「折れねぇよ。俺が……俺が作ったんだ!」


恐怖で震えていた脚が、今は地を踏む。


心臓が鳴る。頭は真っ白。

でも、それでも前に出た。


「こいつは、“試験”で証明された! 本物なんだ!!」


二人目が毒刃を繰り出す。


だが、ルドの胴を覆う革鎧は、衝撃を吸収し、刃を跳ね返した。


バルド工房製、実証済み防具。


「……なぜだ。なぜ民の装備がここまで……」


「“鑑定”なんかじゃねぇ。

 俺たちは、自分で試したんだ!」


声が夜に響いた。


その時だった。


「ルド、左!」


青い瞳の少女が駆け込む。

薬袋を抱えた リネ。


投げ渡された小瓶がルドの手に収まる。


「痛覚抑制薬! 効果は短いですけど——!」


「十分だッ!」


ルドは息を荒くし、再び身構える。


暗殺者たちは、初めて焦りの色を見せた。


「……この町は、変わっている。」


「違う!」


リネが叫ぶ。


「変わっているんじゃない!

 自分で選べるようになっただけ!!」


大きな足音が響く。


重い戦斧を担いだ バルド が背後に立った。


「――よく、耐えたな。」


ルドの肩が震える。


「へ、へへ……俺、ちゃんと守れてますか……?」


「守ってるとも。」


バルドは斧を担いだまま、暗殺者たちに告げた。


「ここは、俺たちが選んだ“生き方”の場所だ。

 奪わせねぇよ。」


暗殺者は、退路を探るように沈黙する。


「……任務変更。撤退する。」


影が夜に溶けるように消えていった。


静けさが戻る。


ルドは地面に膝をつき、息を荒げたまま笑った。


「生きてる……俺……生きてる……!」


リネはそっと膝をつき、彼の背に手を置く。


「生きてるって……すごいことなんですよ。」


その時、建物の扉が静かに開いた。


神崎悠真が、ランタンを手に出てきた。


眠っていたわけではない。

ずっと戦いを聞いていた。


「ルド。」


呼ばれた少年は、涙をこぼした。


「俺……守れましたか……?」


悠真は、ゆっくりと頷く。


「守ったよ。“選んだ結果”をな。」


ルドは泣きながら笑った。


リネも笑った。


バルドは空を見上げた。


悠真は、夜に向かって静かに言った。


「真実を持つ側は戦わない。

 証明し続けるだけでいい。」


リネは、その横顔を見つめながら、心に誓った。


これは、誰かのためじゃない。

自分の足で進むための戦いだ。


《試験局》の灯りは、静かに夜を照らし続けていた。


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