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鷹司(上里)美子の想い―2

 そんなことを九条完子が考えていることを、美子が完全に知る由も無かった。


 だが、美子なりに色々と考える程に、完子の内心を察せざるを得なかった。


 完子ちゃんの弟妹全てを、仲良くさせようとしたのは、せめてもの私なりの贖罪だ。

 本当に千江皇后陛下にも、完子ちゃんにも、私自身は悪くないと言えるのだろうが、余りにも結果的に気の毒な事態が起きていて、私が未だに気に病む事態になっているのだ。


 まずは、千江皇后陛下だ。

 本来ならば、私は中宮として入内する筈はなかった。

 それこそ、今の私の夫、今上(後水尾天皇)陛下の唯一の皇后陛下として、千江皇后陛下はときめかれる筈だったのだ。


(更に言えば、その入内を文字通りに世界を駆け回って、成功に導いたのは、私だった。

 つまり、よりにもよって、結婚の仲人を務めた人間が、新郎の重婚相手に後でなったといえるのだ)

 

 だが、禁断の「皇軍知識」に、私も今の夫も触れたこと、更に千江皇后陛下が、初子を死産したこと等から、微妙に心を病まれたことが相まって、私は中宮として入内することになったのだ。


 言うまでも無いことかもしれないが、皇后陛下の最大の務めは、(男女差別と言われそうだが)皇統を繋ぐ男児、皇太子殿下を産んで育てることだ。

 そして、産めなければ、今上陛下の傍に宮中女官が侍るのを公認して、それで産まれた男児を皇太子殿下として育て上げるべきなのだ。

 それが、(この世界の)日本の皇室の伝統なのだ。


 そう私は考えているし、私の夫の今上陛下を始めとする皇族や公家の殆ども、それに賛同している。


 だが、実母の小督の血を悪い意味で受け継いだのではないか、と私は勘繰っているのだが、千江皇后陛下は、初子を失った後、第二児として男児を産まれたのだが、何としてもこの子を育て上げねば、とそれこそ過保護な毒親に、一時、心を病まれて成ってしまった。


 幸か不幸か、私が中宮として入内した後、千江皇后陛下の第二児となる男児が薨去され、更に、私が今の皇太子殿下を含む健康な3人の男児(及び2人の女児)を一度に産んで育てたことから。


 千江皇后陛下は、皇統を繋ぐ男児を自分は産み育て上げねばならない、という重圧から解放されることになり、心身を徐々に癒していくことになった。

 

 そして、高丘親王殿下を産まれて、他に6人の女児(但し、1人は出産直後に薨去)、内親王殿下が、私の夫の今上(後水尾天皇)陛下との間に産まれて、とそれなり以上に夫婦和合する関係になったが。


 そうは言っても、私の夫にとって、最愛の女性は未だに私であるようで、千江皇后陛下に対して、私としては身がすくむ想いがどうにもしてしまう。


 だが、本来は善良過ぎる性格の持ち主といえる千江皇后陛下は、私の存在を公認して、特に嫉妬されるようなこともなく、穏やかな日々を、私が五つ子を産んだ頃から、ずっと送られているのだ。


 そうした背景から、私は千江皇后陛下への心配りもあって、完子ちゃんの弟妹を仲良くさせようと心を配ることになったのだ。


 そして、完子ちゃんと千江皇后陛下の同父母弟になる徳川忠長が殺人事件を起こして、射殺されると言う大不祥事、騒動があったが、そういった際に、私や夫が、

「成人した人間の犯罪について、家族にまで責任を負わそうとするのは間違っている」

と懸命に庇ったことから、千江は皇后陛下で居続けることができ、更に徳川家の兄弟姉妹の仲は結果的に深まることになったのだ。


 本当に完子ちゃんの見舞いの為に、存命の完子ちゃんの弟妹、更に甥姪全てが、世界から駆けつけるような状況が起きている。

 こんなに仲の良い関係を徳川家の兄弟姉妹が築けて本当に良かった、と自分は心から思われてならない。

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