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第一話【Scene8:監視者の目】
その夜、学院本部地下――
石造りの部屋にて、数人の“監視官”が報告を受けていた。
監視官が学院内に忍ばせていたスパイが言った。
「魔導書《NOX》との契約が確認されました。契約者名、レオ・クラフト」
「……なぜ、それが残っていた? あれは廃棄されたはずだ」
厳しい声が響く。空気が一気に引き締まる。年老いた男は、マーク・リットン。魔導書管理庁・禁書対策室の責任者だった。
「それが…、何かの手違いでこうなってしまったのです…」
スパイは一生懸命弁明した。
「すぐに処分すべきでは?厄介なことを引き起こしたら大変ですし…」
別の監視官がマークに提案する。
「……否。“読ませるな”という命令が最優先だ。
だが、覚醒が進むようなら――消してもいい」
「契約者も、ろくな血筋ではありませんし、孤児です。情報拡散の危険性は低いかと」
机上に置かれたのは、黒革の本のレプリカと、レオの顔写真。
帝国の「知識統制」は、すでに彼を“監視対象”に認定していた。