第一話【Scene4:落ちこぼれの“実戦授業”】
翌日。学院の中庭では、「魔導書操作の初期訓練」が始まっていた。
「さあ、各自の魔導書で《火花》を発動しろ。
魔法発動には、魔力供給と精神同期が不可欠だぞ」
教師の声に従って、生徒たちは次々と呪文を唱え、魔導書に魔力を流す。
「――顕現せよ、火の花々《スパーク》!」
空中に小さな火花が生まれる。簡単な術式だが、実戦の基礎となる大事な魔法だ。
「ほら、レオ! お前のもやってみろよ! 魔導書(笑)さんで!」
生徒のひとりがニヤつきながら声をかけてくる。
「……うるせえ。こっちは試してるとこだ」
レオはノクスを開く。だが――
ページには、どこにも《スパーク》の呪文が書かれていなかった。
「え……おいノクス? どうすんだよ、これ」
『あんなものは魔法とは呼ばん。気にするな』
「気にするわ! 気にせずにはいられないでしょ!」
「レオ、発動失敗。魔導書との同期不良だな。記録しておけ」
教師が冷たく告げる。周囲の嘲笑が刺さるようだった。
――でも、レオは諦めなかった。
「なあノクス、お前の中に……火を出す呪文、あるよな?」
『あるにはあるが、構文が古い。現代の魔力体系では使えん。大体お前みたいなひよっこが使えるかどうか…』
「は⁉︎ちょっとそれは俺に対して失礼だろう…俺だってやればできる!まあ良い、今の魔力体系に合わないって?じゃあ”合わせれば良い”だろう?
『――面白い。お前、なかなか骨があるじゃないか』