第一話 【Scene1:魔導書選定の日】
グリモワリア帝国王立魔導学院――魔導士を育てる、国家最高の学舎。
その大講堂に、今年の新入生たちが一斉に集められていた。
空中に浮かぶ数百冊の魔導書たちが、ページをぱらぱらとめくりながら生徒を見下ろしている。
「さあ、魔導書選定の儀を始める。各々、自らの契約書と向き合え」
学院長の号令と同時に、生徒たちは前へ進む。
「やった……!僕のは《雷槍のグレイル》だ!A級!Aだぞ!」
「私も《蒼雪のエリュシオン》……まさかのS級!父様に自慢できる!」
「俺は…ちぇっ、《暗闇のダークスター》かよ。B級…。あいつら良いやつ取りやがって…」
歓喜と嫉妬の声が交錯する中――
一人だけ、選定の光に選ばれなかった少年がいた。
レオ・クラフト。孤児院出身の平民で、魔力適性ギリギリの落ちこぼれ。
「……あの、本当に俺のは……?」
「ありませんね」
初対面の教師から告げられた反応はあまりにも無慈悲で冷たかった。
教師がやれやれと目を向けたのは、
誰にも選ばれなかった“廃棄魔導書”の山。
カビ臭く、破れたページ。魔力の反応もない、ただの紙の束。
その中で、唯一――黒革の古びた魔導書が、レオをじっと見つめていた。
ページは閉じられたまま。文字はかすれて、読めない。
けれど、レオには“何か”が伝わってきた。
――読むな。触れるな。知るな。
そんな“声”すら聞こえた気がした。
「……でも、お前だけが、俺を見てる」
レオはその本に手を伸ばした。
その瞬間、光が走った。