第一話 【Season13 :突然の来訪者】
レオがノクスを閉じて、寝ようとしていたその時、
「……いるか、クラフト」
ノックもなく、カイル・ヴェルナーが部屋に現れた。
「え、あんた……昼間の試合で負けた奴が、夜襲でも仕掛けに来たのか?」
「そんな野蛮な真似はしない。……興味があってな、お前に」
レオの部屋は狭く、ベッドと机と棚だけの質素な空間。カイルは鼻をひくつかせた。
「……なるほど、劣等区画の部屋は、こんなに貧相か」
「嫌なら帰れ」
「だが、これが“現実”だな。実際、お前は底辺から這い上がってきた」
ノクスがレオの机の上で不満げにページを揺らす。
『敵意なし。だが……探る気配、あり』
「なあ、クラフト。あの本、喋るんだろう?」
「……ああ。こいつは俺の相棒だ」
カイルはしばし沈黙し、やがてポツリとつぶやいた。
「――俺の家にも、禁書があった」
レオが息をのむ。
「父が、保管していた。封印されたままの“ページがない本”。
子供のころ、触れただけで、執事に殴られた」
「なあ、それ……」
「言うな。誰にも言うな。……ただ、気になったんだ。
お前の本と、似ていたから」
一瞬、部屋が静寂に包まれる。
カイルは立ち上がり、扉の前でふと振り返った。
「……クラフト。俺は貴族だ。だからお前のやり方には反発する」
「でも――“お前の勝ち方”は、嫌いじゃなかった」
「次は、本気でやる。貴族として、魔導士として」
そう言ってカイルは出て行った。
扉がやたら大きな音を立てながら閉まり切った後、ノクスがページをゆっくり開いた。
『彼は使えそうだ。将来的にお前の“共犯者”候補として良いかもな』
余裕たっぷりな声で言った。
「物騒な言い方すんなよ…。っていうかお前、将来何やるんだよ…」
ノクスの将来がとても心配になった。




