水と死
水の話
「人間の60%は水でできている」
誰が言ったかしらないがなんとなく蔓延している常識的な知識。
隆は向かいに座っている聡に向かってあきれ顔を向けた。
「そんなこと俺でも知ってる」
「だと思う、でもこれは知ってるか?」
聡は自慢顔で語りだした。
「水という字の真ん中を取ってそれを上にのせると死という字に酷似する、左側にあと一画書けば死という字になる」
隆は頭の中で想像しながらまあそういわれればそうだなと思った。
「で?それがなんなんだよ」
隆は聡に質問をぶつけた
「最近噂になってるホラー話があってだな、それを実行したやつが死んだらしい。」
「実行したって?どうやって?」
「要はだな、まず水を入れた器を用意する。そしてその真ん中を空洞にする。さらにその水を入れたものを器の上に乗せる。後は水の入った器の左側に水をかける。もしくは水を置く。やった人はこれで死ぬらしい」
「なんだそれは?」
「そのまんまさ、んで今日それをやってみようと思う。」
「本気で言ってんのか?」
隆はビビっていることをかくしながら半眼で聡を見た。
「安心しろお前にはやらせないよ。俺がやるから見ててくれ。何かあったらあとは頼む。」
冗談じゃないと思いながら隆は聡にひらひらと手を振った。
今二人は喫茶店にいる、目の前にはウェイターが持ってきた2つの水の入ったグラスと各々頼んだソフトドリンクについてきたストローが2本置いてある。
すぐにでも実行はできる状況だ、窓際の席の外ガラスには台風が近いせいか雨粒が横殴りにたたきつけている。雨粒の音が余計状況を盛り上げている。
聡はポケットからカッターを取り出しストローを半分に切り一本をグラスの真ん中に突き刺してその部分だけ水を飲み干して指でふさぐ。もう一本はストローで水を吸い指でふさいでグラスの上に乗せた。
両手がふさがってしまった聡は隆に目くばせをする。
「わりいやっぱ手が足りないわ、最後の一画は隆がやってくれ。」
マジかよと思いながら隆は残ったストローを半分に切り水を吸うと指でふさいだ。
ドキドキしながらグラスの右わきとグラスに乗ったストローの間に自分のストローをあてがう。
・・・・・
何も起きない。
「プッ」
「あっはははは」
二人顔を見合わせて笑ってしまった。
「まあなんも起きるわけないわな」
聡がつぶやく。
「冗談きついぜ」
隆は内心ドキドキしながらもストローを放り投げた。
「もう帰ろうぜ」
聡は興が覚めたようにわきにあった傘と伝票をもってレジに向かった。
「今日は俺が付き合ってやったんだからお前のおごりな」
隆はレジで支払いをしようとしている聡にそう言い。レジの正面にある入口の扉を開けた。
聡は仕方なさそうに会計を済ませて入口に振り向くと暴風雨で落下した看板に真っ二つにされた
隆の体が目の前に立っていた。