第8話
「あ、猫ちゃん、起きたの?」 のそっと動き始めたボクを見てジーニアが声を掛けた。
「ンニャア」
「やっぱり言葉がわかるのかな。もっとミルク飲む?」
「ニャアア」
優しいなあ。ホントにこの子に助けられてよかった。
ジーニアはまたミルクを錬成してボクに飲ませてくれた。ボクに付きっ切りみたいだけど、彼女は何か食べたのだろうか。
「ああ、目を覚ましたのか」
ガルトと名乗った動物の治癒師がジーニアの後ろから現れ、ペロペロとミルクを飲むボクを見てそう言った。
「あ、はいガルトさん。元気にミルクを飲んでます」
「よかったな。これで命は助かっただろう」
「本当にありがとうございます」
「はは、君の猫でもないのに、君は優しいな」
「あ、いえ、かかわってしまったので……責任は取ります!」
その言葉にボクはちょっとドキッとしたけど、ペットとしてって意味だよな。
「そうか。ということは飼ってあげるのかい?」
「はい。そうしたいと思います」
「うん。それが一番いいだろう。そうだ、もう遅いから泊まっていくか?」
「え? そこまでお世話になるのは……」
「まだ容態も安定しないだろうから、その方が安心だろ?」
「あ、はあ……それではお言葉に甘えて」
「よし。二階に部屋があるから使ってくれ」
「わかりました。ありがとうございます」
よかった。とりあえず、この世界で生きていくことができそうだ……。
いやいや! いきなり同い年ぐらいの女の子と同じ部屋で二人きりなんて……とは言ってもボクは猫だけど。ジーニアはボクを抱き上げ、二階の部屋に向かった。
「着替えは持ってきてないだろ。これで錬成できるか?」
ガルトさんが古いシーツを持ってきた。
「あ、はい。ありがとうございます」
「夕飯はありあわせのものになるけど我慢してくれな」
「あ、後で手伝います」
「ああ、小一時間ぐらいしたら来てくれ」
「わかりました」
ガルトさんが部屋を出ていくと、ジーニアはシーツを前に何やら呪文を唱え始めた。シーツは次々にショーツやブラジャーに変わっていった。
「さて、着替えますか、ね。汗かいちゃったし」
え? マジ!?
俺は急いでベッドの毛布の中に潜り込んだ。
「あれ? 猫ちゃん? もしかして気をったのかな?」
そりゃいますって。
「魔法で下着を入れ替えるだけなのにね」
あ、ああそうか、魔法って便利だなあ。そう思ってボクは毛布から頭を出したのだけど……。
ジーニアが脱いだ方の下着を手に持ってる!
「ンニャアアア」
思わず鳴き声を上げてしまった。猫だから顔が赤くはなってないとは思うけど。
「はは、どうしたの猫ちゃん」
ジーニアはボクを抱き上げ、ベッドに腰掛けて膝の上に乗せた。
うわわ、脇に脱いだ下着を置かないで……。
ボクは見ないように目を閉じた。