表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/19

第6話

「起きてください。○○〇さん……起きて……」

 女の人の声がして、ボクは目を覚ました。宇宙の中に浮いているような空間に、とても豪華な椅子があり、白い衣をまとい、美しい金髪でとてもスタイルのいい女性が座っていた。


「ああ、よかった。やっとあなたの魂とつながることができました」

 そう言ってその女性は立ち上がり、ボクの方に近づいてきた。


「魂?」「ええ、ここはあなたの意識の中です」

 そうだボク、眠っちゃったんだっけ。

「私は恩恵の女神ベネフィです。実はあなたに謝罪しなければならないのですが……」

「謝罪?」

「ええ。あなたは津波に襲われる中で猫を助けようとしました」

「ああ、はい、よく覚えていないけど……」

「その善行に報いるため、私はあなたとその猫を別の世界に転生させたのです」


「ああ……ボクはやっぱり死んだんですね」


「はい。その通りです……」


「あ、そんな暗い顔しなくてもいいです。転生させてくれたんですよね?」「ええ、でも間違ってあなたを猫に、猫を人間に転生させてしまいました」「ああ! そういうことだったんですか」

「しかもあなたは男の子なのに、三毛猫にしてしまったんです」

「あ……」

「そのせいで、あなたは不吉の象徴として子供たちから虐待を受けてしまいました。あなたの元の世界ではオスの三毛猫は逆に幸運の象徴と言われていたのですが……」

 女神さまはずっと申し訳なさそうな顔をしている。


「……そうだったんですね」

 ボクは力なく答えた。


「私は現実世界に物理的に干渉することができません。何とか一人の子供の意識に働きかけてあなたを保護させて、箱に入れて通りに置かせました。誰かが救ってくれることを願い、祝福の祈りを続けました」


「ああ……そこでボクがちょっとだけ人間だった記憶を取り戻して……」

「そこにあのエルフが通りかかってくれたのです」

「ああ……」

 そういうことだったのか。あの優しいエルフの女の子が来てくれたのは。


「本当によかったです」

「あ、はい……」


「それと……猫に転生させた影響で、あなたの記憶は混濁してしまっていると思います。すべて思い出すのに少し時間がかかってしまうことをお許しください」

「ああ、そう言えばボク、猫の前にも誰かを助けたような気がするんですけど」

「すいません。それはわかりません。命懸けで善行したときのみ、私はその方を転生させることができるのですが、それ以前のことは……」

「あ、わかりました。時間がかかるって言いましたけど、きっとそのうち思い出せるんですよね。それよりも……」

「はい?」

「猫って十五年ぐらいしか生きられないって聞いたんですけど」

「ああ、それも申し訳ありません。私は生物の寿命に干渉することもできないのです」



 女神さまはとても悲しそうな顔でボクを見詰めた。そんな顔されたら文句も言えないよ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ