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第3話

「ごめんなさい。治癒師の方、すぐには戻れないみたいなの」 そう言って少女は右手をボクの体にかざした。

「ヒール!」

 光とともに、魔法陣のようなものが見えた。ぶり返していた痛みが再び引いていった。


「はああ……」

 少女は深いため息をついた。

「全力を込めたつもりだけど……これじゃあやっぱりまともな治癒魔法とは言えないな」

 悲しそうな顔でボクのことを見詰めている。


「治癒師様、早く戻らないかな……」

 少女はボクの体を撫でた。

「猫ちゃん、言葉はわからないかもしれないけど……」

 そう言って少女は自分の身の上をしゃべりはじめた。

「私はエルフで、名前はジーニア。魔法学校の中等部を卒業したばかりで、魔法使いとしてはまだまだ半人前どころじゃなくて……」


「ンニャア……」

「あれ? 私の言葉がわかるのかな?」


「ニャ」

「ごめんなさい。治癒魔法も満足にできなくて……でも、みんなあなたのことを無視して通り過ぎてたから……」


「ンニャア」

 しゃべろうとしてもやっぱり鳴き声しか出ない。


「私っていつもそうなの。考えなしで、できもしないことをやろうとしちゃって。魔法学校でも私、魔法使いに一番向いてるはずのエルフなのに成績は中の上で、たいしたことできもしないのに……」


「ニャニャ」

「余計なことして、あなたの命を助けられなかったら……あの後、ちゃんと治療してくれる人が来たかもしれないのに、勝手に連れてきちゃって……」

 少女は涙声になっていた。


「ンニャニャギャアアア!」

 ボクは「それは違う」と伝えたくて出せる限りの鳴き声を上げた。その瞬間、「ボン!」と大きな音がして、煙が上がった。


「そ、そんなことないです!」

 自分でも驚いた。しゃべれるじゃないか。でも、視界がずいぶん高くなっている。


「きゃっ!」

 少女が悲鳴を上げ、手で目を隠した。ボクは自分の体に視線を向け、その理由を一瞬で理解した。何も着ていない。猫なら着ていないのは当たり前だが、体は猫じゃなかった。



「うわっ!」

 ボクは慌ててしゃがみこんだ。これ、たぶん前世の体だ。そう思い、少女に説明しようとしたが、体中の痛みがまたぶり返してきて気を失った。

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