さぁ、灯りをつけて
[神に愛された人間たちよ]
神に愛された人間とはよく言ったものである。
生まれた頃から美形。
生まれた頃からの頭の良さ。
生まれながら持った才能。
そんな馬鹿げた言葉ばかりを並べて何になるというのだろう? それで君は満足するのだろか?
本当の天才は人に努力を隠すものだ。なによりもプライドが高いから。
はたまた努力をしていないと持っているのかどっちなんだろうね。
だから親からも期待される。
僕のお母さんは僕のことを『天才』と呼んだ。
僕のお父さんは僕のことを『勝ち組』と呼んだ。
僕は自分のことを『努力家』と呼んだ。
だけどみんな否定してくる。
光が当たらない限り物事は見えないのだから。
自分で光を当てることを知らないのだから。
僕の家族は僕に期待して将来の成果を掻っ攫おうとしていたんだ。
近所に自慢して、僕からお金を貰おうとしていたんだって。僕が寝た後話していたよ。
十歳の頃僕は思い知った。
秋晴れが素晴らしい日のことだった。
鱗雲が空に漂い、蝉の代わりに鈴虫が鳴き出すそんな季節。
廊下を一人で歩いていた時、クラスの男子が話していた。
「僕は神様に愛されている」と。
才能がある。努力をしていない。
耳に届くそんな話。
どれだけ努力しようが才能だと思われてしまう。これが僕の力だというのに……。
十一歳の頃僕は諦めた。
この地域では珍しく雪が降っている日だった。僕が友達に勉強を教えていると、
「いいよな、苦労もせずに理解できて」
と愚痴を漏らした。その時は笑っていた。もう外れない、外すことのできない仮面が顔にこびりついていたから。
だけどね僕も何回も教科書を読んで、何回も解説動画を見たよ。
みんなは僕のことを羨ましがって悪口を言うんだ。
みんなは信じてくれないから、僕は思いっきり努力することにしたよ。
みんなが頑張れば追いつける所に立っていたけど、みんなは追いつけない理由を並べては愚痴を漏らすだけだったし。
努力もしてみないで、ダラダラとできない理由だけを考える。
影の努力は見られることのない。
光を持って僕を見てくれる人間は存在しない。
確かに僕は神に愛された人間かもね。
君たちよりも顔はいいし、頑張れる。
あーあ、本当につまらない。
僕のライバルになる人間は存在しないのだろうか?
少年は孤独という猛毒に慣れてしまった。
だけどね、僕も目を見張った事があったよ。
「君は随一の努力家だね。だって私は君を愛していないもの。
どちらかと言えば嫌っているよ。
君に恵まれた両親はつけてないし、友達もつけていない。顔はよくしてあげたけど……」
と言った人物が居たんだよ。
あの出来事から十何年後、僕が交通事故で死んだときにある人物にあったんだ。
そしてこう言った。
「君は沢山のものを背負ってきたんだね」
って。
それと同時に真っ暗な空間に灯りがつく。
僕の後ろには今までのトロフィーや賞状はズタズタに破かれ、努力の結晶がキラキラと光っていた。
ポロポロと涙が溢れる。
僕は努力しなければ生きていけなかったのだ。周りからの期待に応え、完璧を演じるためには……、この努力が必要だったのだ。
「とんだ馬鹿だ。」
僕は神に愛されてはいなかったんだね。
本当におかしな話だ。
僕はとんだナルシストだったんだ!
君たちこそ神に愛された人間だよ。
「神に愛された人間たちよ」
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