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7. 雅は自由を手に入れました

これにてPrologue終了です!

引き続きお楽しみください


追記)毎度毎度申し訳ないのですが、矛盾点を変更いたしました 雅の祖父→父の祖父

 先程からどんちゃん騒ぎをしている雅とその執事たち。


 それもそのはず、この世界線において最高権威である統治者が世界線会議に出かけたのだ。


「今日はフリーでいいんですよね!」


 面白いもの大好きな今の執事たちは、本領発揮とでも言うように自身の占いの力も使いながらトランプ大会を開催していた。


 何を隠そう雅も参加しているのだが……何故か雅だけ、手元にあるカードが異様に多い。 

 父を思わせるように見つめてくるキングは、昨日のことをまざまざと思い出させた。


 ──

 説教が終わった後のこと。

 雅は、唯斗と共に父の応接室に足を運んでいた。


「……ときに雅。代理の話は聞いたか?」

「はい。唯斗から軽く」

「そうか。唯斗、ありがとう」

「いえ、感謝されることはしておりません」


 そして父は、どこまで知っているかを尋ねてきた。


「一週間ほど私が代理を務めるということと、唯斗がその間私の世話をするということのみです」


 なぜ父は唯斗の方に先に伝えたのか。そればかりは少し気に食わないのだが、父はどうも思っていないようだ。


「それで代理の件についてなんだが──」


 実際代理を務める期間は8日。

 流石に占いを使って政治を……とまでは頼めないので、今回はとある課題を解決してほしい。

 困ったら心に言葉を届ける術(テレパシー)を使って通信してくれて構わない。


 などなど……


「して統治者様。雅様に与える課題とはなんでしょうか」

「現在、不具合により消滅してしまった世界線にある、とある一族の末裔を保護している。上ノ神に許可はもらっているので、その世界線の復興をしてほしい」


 上ノ神というのは統治者らを束ねるこの世における最高権威である神だ。


 その名を出されてしまっては断るものも断れない。

 しかし、たった8日でそんなことできるのだろうか。

 というか、許可まで出せるのなら上ノ神が戻したらよいのではないか。

 唯斗はなんでそんなに冷静なのだ。

 不具合なんかで消滅してしまうこの世は大丈夫なのか。

 そもそも保護しているなんて聞いてないのだけれど。



 色々と考えあぐねている雅をおいて進行していく話。

 唯斗に小突かれてはっとする。


 雅の生きているうちにもう一度会議がある可能性はないものの、父はそれについての説明を始めていた。


 統治者会議は100年に一度、一週間ほどしか開催されない。統治者の大半が寿命という概念を持ち合わせておらず、100年が人間でいう半年に満たない期間に感じられるかららしい。


 ちなみに、1日はちゃんと1日として感じるものの、それとこれとは別なのだとか。なんとも難しい感覚である。


 父は言葉を続ける。


「100年なんだ。大半の民や、私だって、統治者のいない世界を経験したことはない。そして私の祖父に関する記録は残っていないから参考にすることもできない。それは分かっているな?」

「承知しております」


 そう。雅の曽祖父の生きた時代の記録は、1つもないのだ。そして、直近で会議があったのも、会議体制がかわったのも、雅の曽祖父の時代だった。


 雅の父は、ほぼ前例のない状態で臨むのだ。


「雅はできる。そして唯斗、すまないが世話を頼む」

「承りました」


 そうして父は今から死の前の遺言ではないかというほどに微笑んで、部屋を出ていった。


(……意味がわからん。)

 何故急に褒めだしたのかも、何故父がそんな顔をするのかも、なにもかも分からなかった。

 ──


 雅のターン。どのカードを引こうかと唸っていると、突如扉がノックされる。


「誰だ」

「雅様。私、唯斗にございます。とある世界線の一族の末裔、リリア様をお連れしました」


 そうだった。すっかり忘れていた。

 会議の日より1日早く出かけていった父に変わって今日から9日、唯斗は雅の世話をするらしい。

 別に代わってというほど父に世話をされた覚えもないけれど。



「……雅様?」


 ドアが開くかというその時、雅はとっさにトランプを隠した。


 子どもの片付けのように雅のソファの下に滑り込ませられたカードたち。


「開けてしまいますよ」

 そんな声とともにドアがキィと音を立てる。


 と、次の瞬間。雅が目線を奪われた先、唯斗の隣には、透けてしまいそうなほどに可憐で儚い少女がいた。父の言っていた保護した末裔だろうか。


 世界線離れした髪色を持つ雅より更に不思議な色。

 他の世界線から来たというのだから当たり前といえば当たり前なのだが。

 一見桃色の髪に見えるのだけれど、よく見ると秘色や淡藤色に鳥の子色などの毛束も交じっていて、エメラルドのような瞳は虹色に輝いているようにすら感じる。


 美しすぎて恋愛感情を抱くどころではない。宝石という例えがしっくりくるほどの整った顔立ちだ。


 白い肌にレーシングドレスがよく似合う彼女は鈴のような声を発す。


「リリア・オジューム、60歳です。世界復興のご協力、誠に感謝しています」


 きれいなお辞儀をするリリア。


 60歳というところに触れたらややこしくなりそうなのでらとりあえず先程まで雅が座っていたソファに座ってもらう。何処の世界線から来たのかは聞いておきたいと聞いておきたいところだ。


 ……が。

 得られたのは衝撃の答え。


「実は私、魔術信仰の世界線からの転生者で……名前など最低限の情報しか記憶がなく……」


 聞くと、世界線の破滅と同時に魂が入ってしまったのではないかという。どうせなら世界線の情報も覚えておいてほしかった。


 これには唯斗も驚いたようで目を見開いている。


 だが考えてみると、同じ言葉が喋れるということは公用語が同じ魔術の世界線か呪術の世界線、もしくは勉強した者だけ。

 そして世界線が分かっているなら父が最初に言っているはずである。

 上ノ神からなんか聞いてたりしなかったのだろうか。


「……教えてくれてありがとう」


 雅の口からはそんな言葉しか出てこなかった。

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