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6. 唯斗より上の人

 能力のコントロールは慣れたもの、なんて思っていたバカは誰だったけか。


 そう思わされるほどに、暴走の副作用に負けて10時まで眠っていた雅である。


 起きた途端に唯斗に急かされるかわいそうなこっいの身にもなってほしい。それならいっそ起こしてくれたらよかったものを。


 そんな思いは届かずあれよあれよと準備をさせられた雅は、科学信仰の世界線から輸入された車とやらに乗せられた。


 科学信仰の世界はごく一部しか世界線のことを知らない状態なので、合法ながらもほぼ密輸のような状態で取引されているらしい。

 だが実際のところ、取引された科学技術にはなにかしらの占術などが施されており、科学技術を謳う商品の9割はそれらを使ってすらいない名ばかりのものである。


 それでも稀に高額オークションがかけられている科学技術の製品を見ると世界干渉は気になってしまうが。魔術や呪術と違い、本質が異なるので、どちらかの世界が爆発……なんてこともあり得る。

 まぁ、そもそもそんな危険につながる製品の流通はしていないのだ。


 お前そんなに欲しかった?というようなペンサイズの小さなものが、現在3個ほど売却されているのみで、これ以上の純製品は父が規制をかけている。



 そして唯斗曰く、ブロロロロと奇怪な音を発してすすんでいくこれは型落ちしたものに占術やらなんやらをかけた製品らしい。

 これも詰まる所世界線同士の干渉による危険性を減らすためなのだとか。……最新型を取り入れるには値が張る、とぼやいていたので、それが理由な気もするが。



 そんな厳重に術をかけるとかするよりも馬じゃダメなのか、と思いながらも外の空気を吸いたいと窓の鍵を探す。


「どうしたのですか?」

「窓を開けたくって……」


 それなら、と言いながら唯斗が指したのは謎の突起物。

「これを回すのです。操者様、よいでしょうか?」

「かまいませんよ。開けてもお顔は出さないようにお気をつけください」


 操者である初老の男性は微笑をたたえている。なんだろう、子供だとでも思われてるのだろうか。


(別に気にしないけど。)


 急に拗ねる雅に、呆れる唯斗と横顔でも分かるほどに優しい眼差しの男性。

 

 唯斗が仕方のないといった表情をして代わりに開けてくれた。


 それがもっと惨めになった気がして、ぶすくれながら流れる風景を眺める。


 ──呪術・魔術・占術という三大世界は、世界線についての造詣が深い。そしてその中の占術信仰の世界は最近科学技術信仰の世界に強く影響を受けていた。

 呪術や魔術の世界には王族や公爵などの体制が敷かれているのに対し、この世界は半端に残った身分制度と形ばかり模倣をされた社会体制。

 公立化された皆が通うようなものには、身分の関係はなくなったけれど、節々に残る前時代の片鱗がことあるごとに頭をのぞかせる。


 ふいに風景たちが流れるのをやめた。


「雅様、雅様、……おら雅!」


 急に唯斗から暴言を投げられる。

 ここで絞めてやってもいいのだが、唯斗の目がそれを許さないのが悔しい。


 おら雅なんてそんなこと言われたことあったろうか。……あったわ。


 いつの間にかついていたようで、エスコートとはなにか自問してしまうほどの速さで車から引きずり出される。


 安全の問題からどうのこうのと、結局馬に乗ったときより若干早いくらいで到着した車。

 たった少しの速さの違いで酔いかけている雅などつゆとも気にしない様子の唯斗は、さっさと雅をおいていってペコペコと門の奥にいる人物に頭を下げている。


 唯斗はなかなかの血筋らしい。

 国御用達のものを制作しているうえに、母親はどこかの世界線を統治している家系の次女だ。

 たしか自然信仰の世界線だったか。

 唯斗がそう言っていた気がする。


 魔術にも精通している世界だが、魔術信仰の世界線とは様式が全く異なると有名になったことがあったはずだ。

 なんでそんな人物がこんなとこに来たのかはよくわからないが。


 さて、身分制が色濃く残ったこの屋敷城で、唯斗の上に立つ人物とは誰だろうか。


(父しかいなくない……?)


 もう唯斗の後をついていく気のなくなった雅は、情けなくも操者の男性の影に隠れようとする。


「高貴なお方の前に立つのは不遜な行為になってしまいます」

「……すみません」

「ハッハッハ。謝ることではありません」


 ──結局前に押し出されてしまったけれど。


 ◆◇◆◇


 雅は後ろに控える唯斗の気配を感じながらも父親の怒りを一身に受けていた。


 次期統治者ともあろうお前がなぜ執事から逃げて図書館に行ったのか、から始まったそれは、雅の耳を右から左に抜けていく。


 一体何処まで父に知られているのだろうか。


 自分と似た髪色をする父を見やる。

 ──と、ふとした拍子に視線があってしまった。

 占術のうち、『今』に関するものに長けている父。特に、目から相手を知る占術(虹彩式占い)とかいう化け物級の術を何事もないように使いこなしてしまう、そんな父。


 何も響いていないことが見透かされた雅のお説教は滾々と続くのだった。

次でPrologueは終わる予定です。


あらすじはネタバレ防止に少しずつ更新していくスタイルですが、最終更新いたしましたので、当分はありません。

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