出会い
了さん先輩は私たちの前を自転車で颯爽と走る。みっち先輩は、本当の名前は知らないのだけれど、私の前に座って必死に自転車を漕ぐ。私の前に座ってるってことは、私たちは二人乗りをしてるわけで、つまり良くないこと、良い子は真似しちゃダメだよ。
私たち三人は夜の街で出会った。私が夜の雑踏に紛れて夜のざわめきを観察していると、上から声が降ってきた。
「ここ、女の子一人でいると危ないよ。」
「・・・。ホントですね。危ないや。変な人に絡まれた。」
「あんた、面白いね。なんて名前?」
「怪しい人に教えると思いますか?」
「怪しい人に怪しいって言ったら駄目だよ。で、なんて名前?」
「名前、先に名乗ってくださいよ。」
「それもそうか。私は了。そっちがみっち。」
それが三人の出会い。それから三人でずっと一緒にいる。夜はみっち先輩の家に帰り、昼は三人で”ど短期バイト”をして暮らした。今までの人生が嘘みたいに楽しかった。私は二人の過去を知らない。二人も私の過去を知らない。知ろうともしない。それが心地よくてずっと一緒にいる。
了さん先輩は顔と身体がイカついけれど、とっても繊細で小さな事にもすぐに気が付く心が暖かい人だ。一人称は私だけど不本意ながら男子トイレに行っている。