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血塗れ騎士と幼姫の出会い

デッドスペースシリーズいいですよね。

ああいう世界観も好物です。


いつの頃だったか。


ある日突然異世界ファンタジーが現実と化したのは。


世界各国で異世界と繋がる門が開き、地球に住まう人類に新たなる可能性を示した。


地球人達は願ってもいない僥倖だと、その異世界にゾロゾロと入り込み開拓を始めた。


そこに住んでいたのは中世17世紀以前の文明レベルで暮らす人間とその亜種である亜人達。


しかしそんな文明も彼ら地球人の数の暴力と科学力によって徐々に塗り替えられていった。


そして、その裏で最悪の脅威が忍び寄って来ている事に彼らが気付く事は無かった。


==========







そこは地球人によって開拓され出来上がった嘗て「ジノイ」と呼ばれた都市。


石造りの小さな家屋で構成されていた街中は開拓事業が全盛期の時は多くのビルが立ち並び、大都市と呼ぶに相応しい光景だったという。


今となってはその繁栄の痕跡を残すばかりで、住む人もいなければ一切の営みも存在しない。


「はっ……はっ……ここ、どこ……?」


草木に浸食されたビルの中から出て来る人影が一つ。


幼い少女にも見える姿の彼女は瓦礫やら車の残骸やらで最早道としての役目を果たせていない道路を、時々躓きそうになりながら歩く。


彼女には記憶が無かった。


自分が何者なのか、ここは何処なのか、どうしてこのような場所にいるのか。


一切を思い出せぬ中、少しでも情報を求めて歩き続ける彼女は遠くで音を聞いた。


微かな物音を頼りに瓦礫を掻い潜り人を探す。


数分ほど歩いて、遂に彼女はそれを見つけた。


「あっ…いた!」


見つけてしまった。


「あの!すいません―」


瓦礫の合間に佇む人影を見つけ、その背中に向かって話しかける彼女。


人影は彼女の声を聞いた瞬間振り向き、覚束ない足取りで近付いてきた。


逆光で見えなかったその姿が徐々に明らかになっていく。


そこにいるのは、とても人と呼べる物ではなかった。


「ひっ……あぁっ……!!」


確かに人型ではある。


だが全身の皮膚が変質してしわくちゃになっており、体毛は無く、全体的に瘦せ細っていた。


何より恐ろしいのは、人としての顔の原形を留めない程に形状を変え、ヤツメウナギのような大口から数本の触手を蠢かせている頭部。


目も人間の目だった部分は変異した口などに押しやられ、代わりに顔の両側面に魚眼のような大きな目が一対備えている。


辛うじてこの化け物が人間であったと彼女が即座に推測することが出来たのは、身に付けていたのが人間の物と思われる衣服だったからだ。


「あ……あぁ……」


余りの恐怖に足が竦んで動けない彼女に、化け物は奇怪な鳴き声を上げながら小走り程の速度で駆け寄り飛び掛かった。


彼女は組み敷かれ、両腕を化け物に押さえつけられる。


悲鳴すら上げられず、化け物は大口を開き彼女の顔面に喰らい付かんとする。


自らの死を確信し目をきつく閉じた時、何かを大きく振りかぶったような風切り音と共に自分を組み敷いていた化け物が吹っ飛んだ。


顔面が凹んでしまった化け物はそのまま勢い良く車の残骸に身を叩きつけられる。


何事かと恐る恐る目を開くと、そこには一人の男が丸鋸の刃を括り付けたバットという物騒な物を持って佇んでいた。


男は少女を一瞥し、起き上がろうと動き出している化け物に歩み寄る。


顔が半ば潰れており致命傷を負ったのか、中々起き上がれない化け物の腹を踏み付け動きを封じる。


「フンッ」


景気のいい掛け声と共に、バットを振りかぶり化け物の頭は横一文字に真っ二つとなった。


頭蓋骨という硬い物が割れる音と、肉が裂ける生々しい水音に少女は思わず目を逸らした。


廃車のドアにめり込んだバットを引っこ抜き、男は少女に視線を戻す。


「ここいらで()()()1()は珍しいな。お前ツイてるぞ」


男は全身に厚着を動きに支障が無い程度に着込み、両腕にはそれに加えて分厚い皮の防具のような物を身に付け頭にはニット帽を被っている。


背中に背負った大きな鞄には使い古された長身の鉈や、見慣れない鉄で出来た筒のようなものが括り付けられていた。


「貴方は……誰」


「そりゃこっちのセリフなんだがね……()()()()()()()の遺物を漁りに危険を承知で廃域に踏み入ったにしちゃ、随分と場違いな洒落た服装だ」


少女の服装は、赤を基調としたカラーリングのスカート丈が低めなドレスだった。


少なくともこんな廃れた場所には不釣合いな程に飾られた服装だと男は感じた。


「さて、白髪のお姫様がこんな危険地帯に何の御用です?」


男の問いに少女は腰まである長い白髪を揺らしながら首を横に振る。


「何も、分からない。覚えてない……」


「ふぅむ、記憶喪失のお姫様ねぇ……この世界じゃ色んな奴と出会って来たが、お前みたいなのは初めてだな」


そう言いながら男は未だ腰を抜かしたままの少女へ手を差し伸べる。


「キッカ、キッカ・ホリカワだ。お前は?」


キッカと名乗った男の手を確かに握り、少女は立ち上がる。


彼の目が少女の爬虫類のような縦長の瞳孔を見る。


「ディクナ・エリクルフス。ディクナでいい」


「ディクナ、か。この世界の事を説明してやる前に先ずは拠点に帰るぞ」

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