1-9: 再会
「さあ、事件は解決したけど、君たちの身の安全のため、村に戻るまで一緒に同行させてもらう。サルサ村から来たっけ?」
やばい!さっき捕まれた時に地図のこと適当に言ってたけど、本当はサルサ村の人じゃないし、病気を患っている母親もいねぇ!どう説明したらいいだろう。あそっか、こんな時こそ、君の出番だガルア様!俺はこっそりガルア様に『どうせ暇で見てるでしょ!何とかして!頼む!』っていうメッセージを残した。よし、これでオッケーかな。
「えー、そうです、サルサ村から来ました。」
「そっか、行く前にちょっと確認したいけど、妹さんについてなんか隠してないよね?」
なんでわざわざ確認した?まさかリリーが使い魔ってことバレてる?それより、そもそも隠す必要あるのか?
「ごく普通、ただの妹です」
どう返事したらいいかを考えてるの時に、リリーは俺の代わりに答えた。一応念話で聞こう。
『なんで隠すの?別に知られても問題ないじゃない?』
『助けたとは言え、相手のことまだよく分かってない今だと、これが最善策って判断しました。勝手なことをしてしまい、申し訳ございませんでした』
『いい、気にしないで。確かにリリーの言う通りだ、ラルスには悪いが、ここは一旦隠すとこ』
「はい、でも強いて言うなら、この可愛さかな、やっぱ妹のかわいいところ他の人に見せたくないかも」
ついでにリリーの頭をなでなでしてっと。いやー、我ながらなかなかいいこと言いましたね、ただの本心だからな、これでうまく誤魔化したんだろう。
「変なこと聞いて悪かったな、仲がいいんだね君たちって」
「まあ、そこは兄妹だから。それで、ちょっとラルスさっ、あっいや、ラルスに聞きたいことがあるけど、いいですか?」
「もちろん」
「ラルスはなぜこのあたりにいるのかなって、ちょっと気になった。もちろん答える範囲内でいいです」
「その前に、君たちは勇者について詳しいのか?」
「お兄ちゃんはあんまり詳しくない、でも私も絵本と村の人々から知ったくらいです」
はー!お兄ちゃんか、なんていい響きだ!ってナイスフォローだ、リリー。
「自分は基本的なことしか分からないので」
「さすがにこの辺に来ると詳しく知らされてないか。実はとある調査しに来たんだ、勇者に関する情報のな。」
「恐縮ですが、今更勇者様の情報って言ってもただのデマじゃないですか?それに勇者様は100年近く何一つ情報もなかったし、今から調査したって何も出ないかと思ってます」
「まあ、普通はそう思うよな、正直俺もそうだった。詳しくは言えないが、どうやら中央都市の連中は裏でこそこそ研究してるらしい」
「中央都市?」
「そう、中央都市ポルセス、勇者をこの世界に召喚した国さ」
「そうなんだ、でも魔王も消えた今、なんのために勇者を探すんだろう?あっ、これ聞いちゃダメなやつか」
「そうしてくれると助かる、とは言え、なかなか情報が出ないもんだな。唯一の手掛かりは古の巻物に残された謎『勇者の修行場をみつけってね』って、それでずっと研究して、謎を解いて、やっと大概な位置を分かった。」
「まさかサルサ村だったりして、なんちゃって」
「そのまさかだよ、まさに座標が示してるのはサルサ村付近だった」
おいおいまじかよ、適当に言ったけど、こんな偶然あんのか?まじで頼んだぞ、ガルア様。
「えっと、今更だけど、こういう調査って密かにやらないとダメじゃないですか?自分たちにそんなに話して大丈夫なのかなって、だって絶対マル秘案件でしょう?」
「マル、秘とは?」
「マル秘って何ですか、お兄ちゃん?」
「あっ、その、秘密や、もしくは機密事項のことです」
「なるほど、質問に関してはうまく説明できないけど、なんか君たちなら話してもいいって俺はそう感じた」
「そうなんだ、それなら別にいい、かな?あはは」
「もうちょっと話したいが、どうやらもうサルサ村に着いたみたい」
「本当だ、いつの間に。では改めて助けてもらったことと送ってくださって、本当にありがとうございました」
「ありがとうございました」
「うん、でも調査もあるから、俺もしばらくここに滞在するつもりだ」
「そっか」
てかどうしよう!まじで何も考えずにサルサ村の入口まで来たんだけど、ガルア様大丈夫かな?って考えながら、ふとおじいさんの声が聞こえた。
「おー!孫よ!よくぞ無事に帰ったのー、心配したぞ!」
うわー、まじか、こう来たか、しかも勢いよく抱きついてやがるし。こんな芝居を用意してくれるとは、ここは一旦合わせるしかないなこれ、そもそも頼んだ俺だし。でもさあー、もうちょっとないのか?ガルア様よ、はぁー。一応あとで礼を言おう。
「わ、わい。お祖父さまだ、心配かけてごめん(棒)」
「おじいさま?」
「そうだよ、リリーちゃん、二人のこと大好きなお祖父ちゃんだよ、おいでな」
なーに構えてんだ!ちょっと待てよ、それは黙ってならんなガルア様。俺はともかく、まさかリリーまで抱こうとしてないよね!!見よ!リリーが戸惑って困ってるじゃない!そんなの俺は絶対に許さんぞ!!力尽くで抱き返して見せるわ。
「おっと、感動な再会はもう十分じゃないかお祖父さま!そろそろ休憩したいかなァァ!」
「ふむ、そうじゃな。じゃれるのはこの辺にして、そっちの方は?」
「森の奥にちょっとしたハプニングで助けてもらったラルスだ、たまたまこの村に用事があるみたいので一緒に帰った。ラルス、こちらは俺たちのお祖父さまだ」
「お祖父ちゃんのガルアだよ~よろしく。てかいつまで抱いてるつもりな、満人よ?」
「お祖父さんと仲がいいんだね、風見」
「ええ、まあ。」
「二人を無事に届けたし、俺はこれで。」
「ラルスはしばらくサルサ村に泊まるだよね?」
「ああそうだ、すぐそこにある“猫の恩返し”って言う宿に泊まるつもりで、中央都市の連中がおすすめしてくれた、何だか評価が高いらしい」
「ほう、あそこか、たしかにいい宿ではあるの」
「へー、それは楽しめそうだな。ともかく、何かあったらいつでも探しに来ていいぞ」
「分かった」
「んじゃまたな」
ラルスはそのまま例の宿に向かった。残された俺とリリー、そしてガルア様はその場でちょっと気まずい雰囲気になっている。