1-8: 盗賊と助っ人
「はぁ?15人だろう、ちゃんと全員始末したって。こいつらどっから出てきやがった。おい小僧!なにもんだ?」
どうやって答えるべきか悩んでいる中、ふとこのあたりの地図を思い出した。
「えーっと、僕たちはこの近くにあるサルサ村で暮らしています。母親の病気を治すため、妹と一緒に薬草を取りにここまで来ましたけど、僕たちは何も見てません。本当です!信じてください!」
「っと、ガキたちはそう言ってるけど、どうします兄貴?」
「おい!地図を持って来い!うーん、確かにこの近くにサルサっていう村があったな。だけどすまんが、顔を見られた以上、生かすわけにはいかねぇ。運が悪かったな、小僧」
やっぱダメか、こうなったら戦闘準備だ。どうやらマスターと使い魔の間は念話が使えるらしい、一種のテレパシーみたいな感じかな?俺もよくわからないけど、とにかく頭の中で会話ができる、お陰様で事前に念話でリリーに伝えることが出来た。俺は土の壁であいつらの攻撃を防ぐの同時に、リリーは持ってる魔法の中、確実に敵を仕留めるやつを使う。その後すぐ逃げるの準備もだ、そのため、ロープに切口っていう細工をすでに施した。
「悪く思わないでくれよ。水の精霊アイヌに告く、我を阻むものに天罰を、《アイスフォール》!」
空気中の水分はどんどん凝縮され、やがて無数の氷柱が空で円環状に形成した、鋭い氷柱の先端が無情に俺らに向かって、いつでも体を貫きそうだ。
「あばよ!小僧!」
瞬時に無数の氷柱が放たれた。あまりにも戦闘経験の無さが故、土の壁を生成するスピードがワンテンポ遅れた、このままだと射貫かれる!っと思った途端、目にも留まらぬ速さで誰かが飛び出して、無傷で氷柱を全部砕けた。
「おいおい、ダメじゃねえか、いい年にして子供らをいじめるのは良くないと思うだが」
「何者だ!貴様!」
「ただの通りすがりだけど?」
「んーなわけあるか!お前ら!やれ!」
その自称通りすがりの者が標的を4人目にした、一番強そうって感じたかな?そうなってきたら俺たちも黙っていられない、せめてサポートくらいはしなくちゃ。リリーと念話しながら、予定通りに攻撃はリリーに任せて、俺は妨害役として、奴らの動きさえ止めれば、こっちの勝ちだ。
相手は3人となった今、とりあえず連携を取らせない事がメインだ。まずは《ファイアウォール》!
「魔法を使える、やっぱ普通のガキじゃねぇ!」
「なんだこの炎の壁!?」
「アッツ!」
よし、作戦は上手く行ったみたい。炎の壁をそれぞれの間に設置して、位置を混乱させ、相手が一人なら倒せる。兄貴というやらを倒せたら、残りの二人も下がるでしょう。後はその通りすがりさんが4人目を倒せることを祈ろう。
ターゲットをボスにした後、俺はわざとちゃっちいな《ファイアボール》で攻撃した。
「へ!こんな攻撃で俺様に当たると思ってんのか!避けて見せるぜ!」
一連の攻撃の後、見事に全部避けられた。そりゃそっか、そもそも当たる気なかったし、適当に撃ったから、スピードもわざと殺した、そろそろかな。
「どうしたガキ、随分と苦しいそうじゃないか、もう終わりか?あはははは」
あー、終わりだ、そっちがな!
「今だ!リリー!」
「はい!《シャドーレイ》!」
リリーは手をそのかしらに向かって魔法を発動した、黒きビームみたいな攻撃は一直線に発射された。しかし直線な攻撃ほど、避けれやすい。
「だからこんなちゃっちいな魔法で当たらんって言ってるでしょ!」
その言葉を言い出した瞬間、俺は勝ったって確信した。奴は避けようと瞬間、違和感を気づいた。
「なー!足が!しまっ、あああああ!」
まんまと罠にかかったな、さっきのその辛そうな演出は奴の警戒を緩めるためだった、リリーに攻撃指示を出す前にすでに《バインド》っていう魔法で草を操ってあいつの足を束縛しといた。まさかこんなにあっさりと罠にハマってくれるとは。おかげさまでうまくかしらを倒した。残りの二人も難なく倒すことが出来た。初めての戦闘にしてはまあまあじゃない?と言っても本当はその通りすがりさんがいないと、危なかったかもしれない。
「ほう、そっちは3人相手なのに倒したか、やるな。ちょっと見させてもらったけど、炎の壁で3人を分けて、一人ずつ倒すのはなかなかいい作戦だった、足を束縛したのも悪くない。しかしまだ甘い、確実に相手は仕留めたか、しっかりチェックしとかないっと!」
「…く…くそが……」
言ったそばから拳で俺たちの後ろにぶん殴った、そこには倒したはずのボスが居た、まさかあのかしらがまだ完全に倒されてなかったとは。また救われたな、改めて自分の弱さと甘さに痛感した。
てか、炎の壁を使ってるとこ見られているってことは最初から見てるじゃないか!ふと通りすがりさんの後ろら辺を見ると、4人目の盗賊が木に叩きつけられたっと言うか、めりこんだの方が状況に相応しい。しかも時間的に瞬殺ではないかと、これが圧倒的な実力の差か、一体何者なんだ。
でもとりあえず助けてもらった身として礼を言わんとな。
「えっと、その、助けていただきありがとうございました。自分は風見満人、こちらが妹のリリーです」
「助けていただきありがとうございました」
「おうよ、気にすんな。俺のことは……そうだな、ラルスと呼んでくれ。それより、君たち怪我はないか?」
「一応大丈夫みたいです、ラルスさん。それでこの人たちはどうします?」
「さん付けしなくていい。君たちはこいつらのことを知ってるか?」
「いえ全然、たまたまそこを通ったら捕まれました」
「そっか、俺が倒した奴はどうやら脱獄犯らしい、これを見てみろ」
ラルスさんはその盗賊を木から引っ張って、うなじのとこを見せてくれた。
「ほら、首の後ろら辺に刺青が入ってるの見えるでしょ?これがまだあるってことは間違えなく脱獄犯だ。国によって刺青の形は少し変わるみたいだけど、だいたいは同じだから」
「へー、こうやって区別できるんだ、でもまだあるってどういうことですか?」
「知らないのか?罪を犯した人はこの刺青されるけど、でも罪の重さに対して懲役期間も違ってくるだろう?だから普通の場合、この刺青は釈放される時に消されるんだ」
「なるほど、それでこの刺青がまだ残ってるってことは脱獄したってわけか」
「そう。後こいつらは俺の知り合いで牢獄の関係者がいたから、あいつに任せておけば大丈夫」
そしたらラルスさんはその関係者に連絡して、ものの数分で、その関係者が急に現れ盗賊たちを拘束し、なんかラルスさんに文句を言いながら、盗賊たちを連れて帰った。