1-21: オリジナル魔法と弟子入り
セフィーナさんの回復魔法のおかげで少しはましになったとは言え、どう説明したらいいんだこれ、て言うか俺自身すら今の状況さっぱりですけど!誰か助けて!そうだ、ガルアのくそじじぃを呼べばいいのでは?よしっと決まればさっそく。
『ただ今電話に出ることができません。ピーっという発信音の後にメッセージをお残しください。ピーー』
……
『今度会ったら絶対許さない、覚えとけ』
くたばれえええぇえ!あのクソジジィ、何が留守電だあああ!!!
はぁ、どうしよう、そろそろ回復魔法も終わっちゃうし、なんかいいアイデアないかな…
『あのー、リリーさんや、なんかいい方法ない?』
『ない、ドンマイ』
『ガーン、なんかムカついたんで今晩のおやつ抜きな』
『ガーン』
なんの手がかりもない……いやあるな、まさか…
もういい、俺は負けた、悔しいけど、その分もっと頑張ればいい、だから放してやってくれ。
「マントが緩んだ!今だ!」
まじか、俺の意識と繋がっているだと?さてと、これはどう説明したらいいのか迷うね、セフィーナさんはともかく、ラルスに話すか?ああー!もういい、聞かれたら言う!
「結構締め付けられたな、いやあ、俺としたことが、最後の最後にぬかったな。仕方がない、約束通り技を教えるよ…」
ラルスの視線は俺からセフィーナさんへとそらして、支えてくれてるセフィーナさんとリリーの方に、そしてちょっと心配しそうな気持ちも挟みずつまた俺を見る。
「さすがにまたの日にするわ。それより、もう平気か?」
「うん、もう大丈夫だセフィーナさん、助かった」
「いいえ、当然のことです」
「また心配させちゃって、もうちょっと自分を大事にしろ!バカお兄ちゃん…」
「ごめん、心配してくれてありがとう」
「じゃあ今晩のおやつくれ」
『おいリリーお前、本気で心配してないわけ?おやつばっか狙って…しくしく、お兄ちゃん悲しいよ』
『そ、そ、そんなことないもん、リリーは~本当に見てて不安でしかないです、おやつはただのついでだし…もう!リリーは本当の本当に心配したもん!ふーんだ!』
『わかった、わかった、悪かったから許して、ね?』
『おやつがあれば…』
『作る作る、何でも作る』
『なら許す』
「わかったよ。それでラルス、その、マントの件なんだけどさあ、なんて言えばいいか分からないが、とにかくこんなんで自分の勝ちにするのはずるいんだなって」
「マントのことは言いにくいなら聞かないとこう、勝負のことは俺の負けでいい、もしどうしても納得がいかないならいい案はある」
「ん?」
「風見よ、俺の弟子にならんか?」
「はあーー!?いきなり何を冗談に」
「本気だぞ、君の度胸と粘り強さに気に入った、それに君は十分に素質を持っている、将来は俺を超えられる見込みだ。まあ、勝手に聞いてるけど、それ以前に君の師匠から許可をもらわないと、な?セフィーナ、さっきの試合を見てどう?教える立場で俺は認められるか?」
「バレてしまったのですか、そうですね、確かにこれなら満人くんの師匠なるには越したことのない実力だった。でも決めるのはあくまで満人くんです」
「俺は……やっぱ強くなりたいです!弟子にしてください!」
「よし、そうと決まれば早速、あっ、ごめんごめん、今日はもう休もう」
「弟子になった以上、いろいろ話さないといけないことがたくさんあります、ちょっと整理するには時間が欲しい、それまでに待っててくれませんか?」
「無論、とりあえず一件落着だが。さっきの魔法はなんなんだ?こんな魔法初耳だったよ、たしか《神眼》だっけ?」
「それに関しては是非私にも聴かせて欲しい」
「え?セフィーナも知らないの?それってまさか新しい魔法を作ったってこと?お前ってやつはどこまで俺を驚かすつもりだ?」
そうだった、そういえばセフィーナさんにも内緒で練習してたな、それより新しい魔法を作るのにそんなに珍しい?例の勇者だっていろんな魔法を創作してたって書物に書いてあったし、てっきり普通のことかと思った。いかんいかん、このまま続くと俺は非常識な人に思われるな、あんまり目立つような真似したくないけど。
「えーっと、新しい魔法と言うか、強化魔法の応用バージョンって言ったところかな、局部的に強化系の魔法で目、細かくに言うと、眼球に集中させて、無理やり動体視力を極めに上げただけだね、何一つ細かな情報でも見逃さなく、ターゲットの周辺の空気、地面の振動、筋肉の収束、微動、視線、すべて
目に入る情報を集めて、そして一瞬にして分析、あらゆる攻撃の可能性を推測し、反応するだけ」
「……」
「……」
「……」
「え?リリーまで黙って、どうしたの?簡単に説明したと思うけどな?」
「その説明が簡単すぎるんだよ!お前ってやつはまったく!」
「だってただの強化魔法じゃん」
「ちっげぇよ!君のその魔法は強化魔法ですって一言で誤魔化せるもんじゃない、手抜きしたとは言え、俺のスピードに追いついたんだぞ?」
「局部強化ってそんなに難しいものか?セフィーナさん」
「ええ、しかも目、器官に強化魔法だなんて一度も聞いたことがない、かの勇者様でも似たような魔法使われていませんでした」
「待て待て、じゃあ君たちから見て昔からの強化魔法ってどういう感じ?」
「普通の強化魔法は例えば《身体強化》とか《瞬足》とか、体全体の性能:スピード、パワー、防御力を上げる」
「でも瞬足だって局部に足だけ強化してるじゃない?」
「あんなのあくまで風魔法の応用だ、風を纏われ、背中が押されるみたいな感じ、さっきの《一閃》だって初耳だ、似たような魔法は見たことあるけど、でもなんかちょっと違う」
「…俺の《瞬足》と《一閃》は風魔法なんて使ってないよ?」
「お前まじで言ってるのか…じゃあなんなんだあれ」
「足の筋肉や神経に集中して、バネみたいに圧縮し、そして一瞬で放つみたいイメージで発動してるけど。分かった、強化魔法に対するのイメージが違うから、初耳になるんだ多分」
「なるほど、たしかに、こんだけイメージが違うんだったら、そりゃ効果も違ってくるか」
「だとしても眼球に強化魔法をかけるって思うか普通?眼球が魔力の流れを耐えず爆発するだろう」
「だから一生懸命に練習したんだ、10秒以上に耐えるのは俺も初めてだよ」
「狂ってるって、いや待て、目に強化魔法をやるだけで体が即座に動作して反応に追いつく?」
「あそそ、だから同時に《思考加速》もやらなきゃいけなかった、恥ずかしい話だな」
「……もう言うことないわ、疲れたから先に帰る。明日時間があったら“猫の恩返し”に来るがいい、これからよろしくな風見、セフィーナもね」
「はい、よろしくお願いします師匠!」
「一緒に頑張りましょう」
「はは、師匠か、悪くない響きだがやっぱラルスって呼んでくれ、あと敬語いらん、んじゃ」
言ったそばからどっかに消えた、本当にとんでもない人だな、弟子になった以上しっかり技を盗まないとね。でもその代わりに、いつかのタイミングですべてを話さなきゃ、そのいつかっていつになるのだろう、俺的には自分のことなら何でも教えてもいいだけど、セフィーナさんやマーやちゃんたちの主としての立場で言うと、何があっても彼らを守らなければならない、何せラルスは勇者の手掛かりを探してる、ラルスはともかく、その背後にいる中央都市ポルセスははたして味方か、それとも……




