1-13: 呪いのマントIII
「ここは?」
「地下室です、私たちは普段ここで訓練や修行を行っています、もちろん外での訓練もあります」
ちょっと待って、扉に変なもんが着けてるぞ、そして何を持ち出したセフィーナさん。うん、カードだね、カードを?マシンにタッチした。
“ビビ”
『勇者の修行場へようこそ!』
「カードキー!!!」
「うわ、毎回毎回びっくりさせないで欲しいです満人様」
「はい、カードキーです、よくご存知ですねご主人様」
「そっか、セフィーナさんたちにまだ言ってなかった、実は俺転生者なんだ、そして元の世界が勇者の故郷でもある地球でして、えーっと…」
「……」
「ごめん、隠すつもりはないんだ、ただちょうどこのマントのこともあって時間上言いそびれたっていう…」
「謝らないでくださいご主人様、事情は分かりました、では中へ入りましょう」
「うん、時間があったらみんなにも話したいな」
修行場に入った瞬間わくわくが止まらない、なぜなら武器がめっちゃ揃ってる!!!!何この場所!!男のロマンすぎんか?ナイフに両手剣、刀、槍、弓、杖。おまけに鎧や装甲、これは?防刃ベストとガントレットまである、全ての武器が集まったと言っても過言ではないぐらい綺麗に陳列されている。でもそれがどうした、今の俺は武器を扱えない状態だから全く使えもんにならんなぁ、はぁー。待てよ、さっきまで装備できないってあれだけ言ってたけど、本当に試したわけではない、ワンチャンあのマントに書いてある説明ただのはったりかも!?これは試す価値あるぞ!!
「あのご主人様、多分実際に武器を装備しても大丈夫か的なことを考えておられるのかもしれませんが、試すことはお控えください、その防具に付いてる呪いはどれほど強力なものなのかまだ分からない状況です」
「そんなに顔に書いてましたか俺?」
「そうだよ満人様、武器を装備してもしすっごい怪我したらどうするんですか」
「でもやってみなきゃ相変わらずわからないままでしょ?」
「それも一理ありますが、ですが……」
「心配しているのは分かります、でもセフィーナさんとリリーがいるから、安心して試せると思う。それにいくら呪いとは言え、ガルア様がくれたものだから、命の危険はないでしょう。じゃあさっそくやってみよう、セフィーナさん、お願いできますか?」
「はい、かしこまりました。どの武器にしますかご主人様?」
「んー、武器と言ったらやっぱり刀一択に違いないな。リリーはちょっと下げて、危ないかもしれない」
「うん、気をつけてください満人様」
「どうぞ、ご主人様。こちらになります」
かっこいいな、なんだこの語彙力、低すぎん?まあいいや。にしても防具に書いてるステータスは《解析》で分かるんだったら武器にも使えるのかな?
「《解析》」
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【斬鉄】
スキル:
一刀両断
最強MAX
全属性賦与
#私が作ったんよ、あっ、勇者です
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「なんだこのスキル、やりたい放題じゃん、しかも概要のところに勇者ですって。そう言えば、さっき言ってたあの専属スキルってなんですか?」
「そうですね、分かりやすく説明しますと、基本的に装備も二種類分けられて、鍛冶師が作ったものと、古代ダンジョンにて発掘される古代遺産【アーティファクト】って呼ばれている、遥か昔の文明から生まれたものだそうです、人工的な産物なのか、それとも自然に現れたのか、未だに研究はしているみたい、神々の恵っていう説もお聞きします。さて話が戻ります、アーティファクトはさて置き、装備スキルは普通鍛冶師が付与しますが、レベル高い鍛冶師でもなかなか専属スキルを付与することはできない、さっきも説明した通り、装備のスキルは持続的に魔力を消耗するタイプとスイッチタイプがいますけど、どれも魔力は必ず消耗します、しかし専属スキルは魔力を消耗しません、だから専属スキルを持った装備はすごくレアです。」
「レアと言ってもなぁ、まあ、あのくそじじぃあれでも一応神だから、専属スキル一つぐらい簡単に付与できるでしょ。それは置いといて、やろうか。」
「もしもの時に責任をもって腕ごと切り落としますのでご安心ください」
「冗談…ですよね?」
「いいえ、本当です、強制的に呪いを解くしかないと思って。もちろん最悪の場合を想定する時のためだけで」
「そうならないように祈ります」
「あのなぁ、リリー、もう少し心配してくれてもいいんじゃないか?」
「大丈夫大丈夫、たかが腕くらい、気持ちよく落としちゃいましょうよ満人様」
「本気で言ってる!?いくら魔法でも、腕だぞ腕」
「普通の魔法ではおそらく限界が来るでしょ、しかし勇者様直伝の回復魔法なら腕どころか、四肢全部なくなられたとしても再生します、実演しましょうか?」
「実演はさすがにパスだわ。でもこんな魔法がいるよって世に知らしめたらまずいじゃない?」
「ええ、ご主人様の仰る通りです。もっとも存在を知っても使える人はいますかね?私の認識の中では自分と勇者様も含めて4人しか把握してません」
「へー、っていつまで続くんだよ話。ああぁあ、始めるぞ!」
やるんだ!って思い切り刀を握ったけど。あれ?何もないじゃん、なんだやっぱはったりじゃんあのくそじじぃ、びっくりさせんなよ。てかなんでセフィーナさん横になってるんだろう?んー?リリーまでやん、二人ともどうしたんだ?
「ご主人様!ご無事ですか?」
「……」
「満人様!!」
「ーーー!」
声が出ない!?え?体も動かないですけど!!!!なんじゃこりゃ!やってくれたなくそじじぃ、そっか、俺が倒れているんだなぁ。まぁ、腕を確保しただけで幸いか、冗談でも落とされたくないわ。
「まだ握ってますね、やはり切り落とした方がいいでしょうか?」
「そうですねセフィーナさん、満人様はもう声が出ないくらい辛いんだ、ぷっふ」
笑ってるじゃねぇかよあいつ、笑うなら我慢ぐらいしろ!!あわわ、やめろ!近寄るなセフィーナさん!!!!!そうだ、まだ目が使える、必死に目をパチパチするしかない。
「ご主人様の目が、パチパチしています、大丈夫でしょうか?」
パチパチ。そうじゃん、念話があるやん。
『おいリリー、いつまで笑う気?そろそろ助けろよ』
『やっと気付いたか、念話があるって、ふふ』
『後でおやつ作るから、早くセフィーナさんを止めろ、わしの腕が逝っちまう』
『あはは、了解です』
「セフィーナさん、大丈夫そうだよ、多分体力が吸われただけで、それで声も出なくなったね」
「そうですか、とりあえずご無事で何よりです、それにしても体力系の呪いか、なるほど。あっ、念のためステータスをチェックさせてもらいます。《解析》」
「……」
「主に体力が吸われて、おまけに魔力も少し減りました、これなら安心できます。さて、ご主人様を部屋まで運びましょう、《重力制御》」
はぁー、疲れた、まさか倒れるとはなぁ。でもそっか、本当に武器を扱えないんだ……これからどうしよう、どうやって戦うんだ?素手?それとも解除方法を見つける?まだ先が長いな、今は大人しく休憩して、明日にもなったらまたセフィーナさんに相談しよう。
……




