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紅の章 第九十八話 その覚え方やめてください

 国王、美珠に随行する四騎士団長は集まって警備の位置を確認していた。

 美珠が父とともに外に出ると四騎士団長は散って、騎士達に指示を出してゆく。

 すでに外には二人の王子が王を待っていた。

「おはようございます、国王陛下」

 喋れない王はちゃんと挨拶をする甥っこ二人に手を挙げて応えた。

 そしてその隣に控える美珠を見つけると祥伽は寄った。

「おはよう。祥伽よく眠れた?」

「おう」

「おはよう美珠姫」

「おはようございます。お兄さん」

 揃って、金の細工の施された黒塗りの荘厳な馬車に乗ると、その両脇に各騎士団長が竜に跨りついた。

 祥侘は騎士の装束を眺めながら声をかけてくる。

「あれ? 確認してもいいかな」

 左右に分かれた手前の騎士は色で判断することが簡単だった。

「この白い鎧が光騎士団、こっちの黒いのが暗黒騎士団だったよね」

「ええ」

「じゃあ、その奥のあの蒼いマントの騎士団は?」

「ほら、昨日あのババアが言ってたろ? 女を泣かせる顔だって。そんなこともわかんねえのか」

 自慢げにそう答えたのは祥伽だった。

「ああ、国王騎士か!」

(そ、その覚え方やめてください!)

 納得しあう兄弟に美珠に訂正を入れたかったが、入れる前にすでに話題は次の団へと変わっていた。

「で、彼が魔法騎士か。よし、何とか分ってきたぞ。しかし、団長といっても若い者達ばかりだな」

「ええ。刷新を図られたそうですから」

「本当に強いのか? こいつら。顔で選ばれたんじゃないのか?」

 祥伽は腕を組みながら周りを見ていた。

 まるで自分のほうが強いと言いたげに。

「強いんですよ!」

「へえ」

 美珠の返事をあいまいに返してから、今度は突然指差した。

「見事な建物だな。これなんだ?」

「え?」

 美珠は顔を上げる。

 赤茶けたレンガ造りの荘厳な建物の前に大理石で作られた巨大な天秤が置いてある建物。

 美珠が気にも留めたことない建物だったが、確かに見てみると年季を感じた。

「え? これ何?」

 建物のことが分らず窓を開け顔を出し見上げると隣にいた光東が声をかけた。

「どうなさいました?」

「この建物何ですか?」

 美珠の隣から祥伽も顔を出し、建物をしっかり見つめる。

「これはこの国で初めての交易所です。今でもここはこの国の最大の交易所です。立てられたのは三百五十年ほど前ですから建国と同時ということになりますね」

「へえ」

「じゃあ、これは?」

 その隣の建物を指され美珠はまた首をかしげた。

「こちらはこの国の国立銀行になります」

 祥伽の興味は尽きないようで左右、指を振り回して馬に乗っていた。

 国立音楽院についた頃にはもう美珠は疲れ始めていた。


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