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紅の章 第八十一話 最後の一人

 将軍の下に将校が参集する一方で、国明も天幕から出ると騎士を集めさせた。

 そろいの碧の鎧に青のマントをつけた一団は兜を右手に持ち壇上の男に視線を注いでいた。

 青く深い空の下、一人の青年が声をあげる。

 至極真面目な顔にどこか嬉しそうな声をもって。

「今日、帰還命令が出た。明朝、王都に向けて出発する」

 帰還命令ときいて騎士達も顔を緩め王都に思いを馳せた。

 そしてもう一つ、

「安緒、来い」

 国明は安緒の名を呼び、隣に立たせた。

 安緒の瞳はすでに潤んでいた。

 そんな少年に国明は目じりを下げ声をかける。

「今年度の新入団員最後の一人だったな」

 安緒はずっとこのときを待っていた。

 もう何十回人のそれを見てきた。

 気に食わない友次は最初に国友という名前をもらった。

 一方、自分は同期たちから置いていかれていた。

 そしていつの間にか名前をもらっていない最後の一人となっていた。

 素行の悪さから退団処分かという言葉さえ囁かれた。

「今日からお前は(くに)()だ。」

 初めて耳にした自分の名を何度も何度も呟く安緒に拍手したのは国友だった。

 天敵の喜びを自分の喜びのように手を叩き祝福していた。

 そして先輩に小突かれ、拍手するものではないと気がついたのか、すぐに手を後ろに戻し、真面目な顔を作った。

 安緒改め国緒は一度深く国明に頭を下げ、壇を飛び降り国友の元へと駆け足でゆくと隣に立った。

「おめでとう」

「嫌味か? それ?」

 二人は笑い合ってまた国明へと視線を向ける。

 そこには二人をただ優しく見つめる団長の瞳があった。

 何を言うわけでもなく二人は今までもめた侘び代わりに国明にもう一度頭を下げると真面目な顔を無理やり作った。

「うまく収められたようですね」

 国廣は国明の半歩後ろで後ろで手を合わせ、よく二人でいる問題児達を見つめた。

「兎に角、ひと段落ですか」

「ああ、かなりの問題児だった」

「貴方ほどではありませんよ。可愛いものです」

「そうか?」

「ええ、覚えてますか? あの葬式みたいな日。貴方の一〇一人一本勝ちの記録が樹立された日。一〇二人目の相手になった私は、一本取られて負けることこそしませんでしたが、さんざん打ち込まれ手が痺れて棄権し結局負けた。新人の貴方はその後、国王騎士全員、叩き伏せたんだ」

 口元に笑みを浮かべる国廣は手で皆に散るように命じると国明と共に壇から降りた。

「今回のこと感謝してる。礼を言わなければな」

「おや、更迭しようとした私をですか?」

「ああ。あの人を救えた。それは副団長のお陰だから」

 すると国廣は目の笑わない満面の笑みを作った。

 そんな顔を見て国明は顔を反らした。

「どうしました? あなたからそんな言葉が出るなんて、生きていて、副団長をしていて良かった」

「今は嫌味はいい。……でも、俺は副団長の嫌味、嫌いじゃない。たまに怒られたくなるから」

「おや、騎士団長の言うせりふではありませんね」

「さてと! 帰り支度だな」

「ええ。帰ったら今回の報告書や、経費の書類やらで姫と過ごす時間はありません」

 その殺人的な仕事の量を思い出すと国明はため息をついた。

「そうだった」

「残念ですね。 きっちり傍で見張らせていただきます」


何とかひと段落。ε=( ̄。 ̄;)フゥ

次回、やっと王都国明が王都に。

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