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紅の章 第七十一話 夜襲

「イテテテ。さてと、こっちの手勢は?」

「三十人です」

 蕗伎は岩の上に腰掛、部下を見ていた。

 美珠や祥伽とは全く違う気配も感情も何もわからない黒尽くめの部下達。

「はああ、今回の部隊は二百人ほど居たはずなのに。残念だな秦奈国の武官に見破られ死んじゃった奴多かったのかな」

 蕗伎も知っていた。

 北晋国から紗伊那国へと送られてくる実行部隊の人員の供給が紗伊那にもぐりこんだ秦奈国の武官達に消されているのを。

 そして北に紗伊那の騎士が配備されてからは全くといっていいほど滞っていた。

 だからこの人員で何とかするしかなかった。

「今夜で決着つけようか」

 誰から何の言葉もない。

 ここ数日聞き続けていた美珠の怒鳴り声も祥伽の突き放した物言いも。

「さ、行こうか。じゃ、一人残らず消して」

 部下達は音もなく消えていった。

「美珠は殺さない……か。そんな約束俺が守るとでも?」

 蕗伎は笑みを浮かべたまま小刀を木に投げつけた。

 小刀に刺さったのは美しい色をした蝶だった。


 その夜、鈴を振ったような高い虫の音がずっと耳に聞こえていた。

 けれどふとそれが止んだ。

 まず体を起こしたのは祥伽だった。

 美珠は祥侘の剣を借りることにした。

「君」

 止めようとした祥侘を美珠は目で制し、外へと目をやる。

 突然小屋の中に松明が投げ込まれた。

 火が小屋にあった布や藁に引火し、美珠たちはあぶりだされる格好になった。

 扉を開けるともちろん四方八方敵。

(兎に角、お兄さんと香苗さんを逃がしてあげないと)

 けが人を逃がすことが祥伽と美珠にとって最優先事項だった。

「祥伽、私飛び込んでゆくから狙って」

「了解」

 美珠は剣に視線を落とす。

 出るか分らなかったがやってみることにした。

 美珠は深呼吸をしてから目を閉じた。

 そして三度ほど息を整え、心を落ち着ける。

 瞼に浮かんだのは雷。

 剣に白い茨のような何かがまき付いた。時折、破裂音を出しながら熱を放出する。

(よし!)

 美珠はそのまま相手に切りかかった。

 受け止めた相手の刀を伝わって電気が流れてゆく。

 体が麻痺し動けなくなったところを祥伽が打ち抜いた。

「早く! 馬鹿兄貴!」

 戦う二人の後ろで香苗をいたわりながら祥侘が駆けてゆく。

 そんな傷ついた二人を矢が狙っていた。

 美珠も祥伽もそのことには気がつかない。

 山の斜面に立っていた射手は祥侘の頭を的にして弦から手を放した。

 そして矢は射手の手を離れ風を切り二人へと迫ってゆく。

 祥侘はその僅かな音に気がつくと香苗を体で庇った。

「何?」

 祥侘は待っていた衝撃が来ず、恐る恐る振り返る。

 二人を射抜こうとした矢は二つに斬られ、地面に落ちていた。

 その向こうに赤いマントが見えた。

 その瞬間、祥侘は呟いていた。

「紗伊那の騎士」


こんばんは^^

狙われ続ける美珠の前に紗伊那の騎士が現われました。

さあ、この赤いマントの人間は!

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