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紅の章 第六十四話 見つけた!

 美珠は手を川で洗いながら、もう一度手を匂いで見みた。

「まだ魚のにおい取れませんよ。」

 後ろの祥伽はぼんやりと空を見上げながら何かを考えているようで美珠の言葉は届いていないようだった。

 美珠はそんな祥伽を見てニヤつくと手に掬った水を顔に掛けた。

「わ、冷た!」

「ほら!」

 続けてもう一掬い。

「お前なあ」

 仕返ししようと立ち上がった祥伽は何かを感じ、美珠を背中に庇って森の奥に目を凝らした。

「な、何?」

「来るぞ。剣は?」

「ええ? 持って来てないよ!」

「非常事態だぞ。ぼんやりするな」

 すると祥伽は懐から銃を取り出し構えた。

「見えてるの?」

「感じる」

 何かが頭上ではためいた。

 それは黒い外套だった。

 祥伽がすかさず一発撃ち放つと相手はぐしゃりと音を立てて落ちてきた。

 けれど、

「祥伽、前!」

 前から剣を持った黒い外套が迫ってくる。

「くっそ!」

 祥伽が次に撃った弾は黒服の肩をかすっただけで相手はひるむことなく迫ってくる。

 美珠はそばに落ちていた小石を拾うと頭にめがけて投げつけた。けれどもそれは剣で振り払われ、地面へと落ちた。

 正直もう自分になすすべはない。

(ダメだ!誰か、誰か助けて!)

 相手が迫った瞬間、祥伽の銃が相手の額に命中した。

 それでも敵からの襲撃は続いた。

 左右から敵が飛び掛ってくるのが見えた。

「祥伽!」

「伏せてろ」

 祥伽は美珠の体を庇いながら左の敵に狙いを定める。

 けれど右の敵には体をさらしていた。

 このまま斬られれば祥伽は確実に致命傷を負う。

「祥伽! ダメ!」

 その時だった。

 左右から来る敵に水がまきつき、そして敵は激しく木に打ち付けられ気を失った。

(た、助かったの?)

 けれどまだ前から敵は迫ってくる。

 祥伽が撃つ弾をあろうことか剣ではじくと剣を振り上げて祥伽に切りかかろうとした。

(こいつかなりできる!)

「祥伽!」

「っちい!」

 祥伽は美珠を負ぶさって美珠を庇った。

 途端、今度は巨大な火の壁が祥伽と敵の間に突発的に発生した。

「きゃ!」

 あまりの熱に美珠は悲鳴を上げ、祥伽も美珠を腕に力を込めた。

 その業火は敵の手を焦がし、敵を闇の中へと追い払った。

 一方、美珠と祥伽は自分達の身を助けてくれた赤い炎を見てから、目を合わせた。

「助かった」

「のでしょうか?」

 それでも二人は警戒を解けず、その場に視線を走らせた。祥伽が何かに気がついたように銃を正面に向ける。

「怪我はありませんか? 美珠様」

 声にきき覚えがあった。

 森の奥から現れたのは杖を持った一人の少年だった。

「魔希君!」

 立ち上がると魔希も美珠へと駆け寄ろうとした。

「やっと、見つけた! お怪我は?」

「ありません! でも魔希君、どうしてここに」

「それが、」

 何かを言おうとした魔希は隣にいる祥伽に気がつき、警戒した。

 その視線に気がついた美珠は顔を緩め説明しようとしたのだが、その途端、祥伽は魔希の足元に一発銃を撃った。

「何するの! 魔希君、大丈夫?」

「今、騎士に捕まるわけにはいかない」

「祥伽!彼なら大丈夫! 話をすれば分ってもらえるわ!」

「そんな時間がもったいない」

 魔希もまた祥伽に向けて捕縛の魔法をかけようとしていた。

 そのときだった。

 馬が嘶いた。

「捕まって!」

 どこから現れたのか蕗伎は馬を二頭率いて、走ってきたのだ。そして一頭を祥伽に渡すと、そのまま美珠を抱き上げ走り去ってゆく。

「美珠様!」

 魔希は慌てて追いかけようとした。けれど自分の足で馬で追いつけないことぐらい分っている。

「美珠様の御身ぐらい守ってみせる」

 川の水に手をつけ美珠へと向けて水を動かした。水の粒が馬を追って行く、これでどこに行こうが居場所は分かり、危なくなれば、水で守れる。

「っと、団長に知らせないと」

 そんな魔希の後ろから足音がした。新手かと首を動かすとそこにいたのは女。

 項慶だった。

「やっぱりあの子は美珠姫ですか」

「あなたは?」

「慶伯太守の娘、項慶と申します。お話したきことがあるのですが」

「慶伯太守の?」

「ええ、先ほどの祥伽と美珠様のことで知っていることをお話いたしましょう」


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