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紅の章 第六十話 男三人がかり

「気がつきましたか?」

 開いた赤い目を魔希が覗き込んだ。

「ここは。」

 男は体を起こすとゆっくり首を左右に振った。

 そして掌の温かさに気がついた。

「よかった。無事だったのか」

 自分と手を繋いで眠っている女を見て頭を撫でた。

「少し、話を聞きたいのだが」

 現れたのは暗守と聖斗だった。その装束と武人らしい顔つきに、男は一瞬動揺した顔を、すぐに隠した。

「騎士……ですか。不法入国したことは謝ります」

「そのようなことではない。」

聖斗は男を見下ろしていた。男は一瞬顔に焦りを浮かべ、その顔は二人にすぐ読み取れた。

「この国へ入った目的を教えてもらおう。」

「こいつと幸せになりたいから。」

「そのようなことではないだろう。ではこの国に流入している秦奈国の人間は何と説明する。」

「流入?どういうことでしょう。」

男は今度は焦りではなく眉間に皺を寄せ聖斗を見返した。

「とぼけるな。お前の国から流入した者達が北と東へ動いている。各地で戦いながらな。」

「戦いながら?」

そこで男はやっと何かを考え始めた。

「先日も赤い瞳の男が王都で戦い、一人女性が巻き込まれ行方知れずになった。」

「赤い瞳?まさか!あいつか!そいつの人相は、どんな奴だった?やたら高慢で偉そうな奴じゃなかったか?」

男は乗り出して聖斗に詰め寄った。

「人相はこれ。」

相馬が後ろから人相書きを見せると男はそれを剥ぎ取りため息をついた。

「あの馬鹿。何でくるんだ。」

「この男、知ってるのか?」

聖斗の言葉に男は頷いた。

「貴族の馬鹿ボンだ。」

聖斗と暗守は核心についた気がして乗り出した。

「こいつの目的はなんだ?」

けれど男は黙ってしまった。それが聖斗の感情を逆撫でした。

「おい。言え。言わぬならこのまま秦奈へ強制送還、もしくはこの国への攻撃ということで二人揃って処刑する。」

「知らん。」

「なら、帰すわけには行かないけど、それでいいの?この女の人に外の世界見せてあげるのこれで終わり?」

聖斗の脅迫まがいの言葉より、相馬の女性を絡めた言葉に少し動揺を見せた男に相馬は相手の弱点を見つけ、いたって冷静に問いを続けた。

「国に帰ると引き離される関係なんじゃないの?」

そういわれると男は辛そうに女の頬に自分の頬をつけた。

「俺はこの貴族の馬鹿ボンからこいつを奪って逃げてきた。こいつとあの馬鹿の結婚式に堪えきれず攫って逃げた。前日までそんなことこれぽっちも考えてなかったのに。当日、こいつが泣いてるのを見て堪えられなくなった。」

「結婚式当日に?」

「まさか馬鹿ボン一人で探しにくるなんてな。」

「それがどうしてこんな戦闘になる。」

聖斗の言葉に男は一度唇を噛み、そして顔を上げた。

「秦奈国の者が北に向かったのは北晋国から来る暗殺者達を防ぐためだ。」

「暗殺者。」

「そうだ。この村を焼いたような暗殺者達だ。」

「何のために?」

相馬の問いに男は素直に答えた。

彼女に見せる外の世界が終わりを迎えないように。

「最終目標は秦奈国を手に入れるために…だ。王が亡くなった今、秦奈国を乗っ取るには好機だからな。皇位継承権のある人間を狙っているのだろう。そんな人間が紗伊那にフラフラと入国し、死んだとなれば北晋国の息がかかった連中にのっとられる可能性だってある。それを止めようとしているんだろう。秦奈国に残された武官達が。」

「じゃあ、今回の流入は紗伊那への宣戦布告ではなくて、北晋国への警戒だというのか?」

暗守の問いかけに男は頷くと目を閉じた。

「ただこれは俺の推測なだけだがな。」

そういうと男は一つ細い息をして気を失うように眠りについた。


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