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黒の章 第十二話 最低な裏切り

 光東が白亜の宮に戻った時、自分達の私室の壁に誰かが寄りかかっていた。

 思いつめた目で顔を上げると、銀の髪が風で少し揺れる。

 そしてその男は優しい笑みを浮かべた。


「ああ、お帰り」


 光東はその優しい笑顔に言葉すら返すことができなかった。


「どうかしたのか? 何かあったか?」


 まだ返せずにいると、暗守は首をかしげ、視線を左へと移す。

 そこには美珠が座っていた。

 月明かりの下、ぼんやりただ芝生に目を落としているようだった。


「何をしておられる?」


「待っておられるんだろう。国明が帰ってくるのを。もう三時間になる」


「お前もここで見ていたのか?」


「夜風が気持ちよくてな」


 ふっと笑った暗守に全てぶちまけたくなった。

 

 あいつは子供と女と一緒にいる。

 美珠以外の女に産ませた子供と一緒にいる最低な人間なのだと。

 

 けれどぐっと堪えて美珠へと進んだ。

 

 

 足音に美珠は顔を上げ、そして屈託のない笑顔を向けた。


「あら、光東さん、おかえりなさい。いかがでした?」


「ええ、今日は贈り物をありがとうございました」


 光東は楽しめたとは到底いえなかった。


「ああ、いえ。初音ちゃんが喜んでくれたらなによりです」


 光東にとってみれば、何もしらず笑みを向ける美珠がかわいそうで仕方なかった。

 

 こんな土の上で三時間、自分を裏切った男を待っている。

 

 今起こっている現実を知らず、ただ信じて待っている。

  

「あの、美珠様……」


 自分にできることは、

 彼女に恋人の裏切りを告げることではない。

 せめて暖かい部屋に入れてやること。


 光東は拳を握ると、目だけで笑顔を作った。


「美珠様、部屋で話を聞いてください。そうだ、酒盛りしましょうか! 酒盛り!」


「え? 今からですか?」


「ええ、気分がいいので! 暗守、君も一緒に」


 美珠は暗守と何事かと見合わせ、腕を振り勇んで歩き出す光東に従う。

 

 光東はまず魔央をたたき起こし、彼の部屋に置かれていた一番きつい酒を持ち上げた。

 そして本を読んでいた聖斗を呼びつけて居間に集った。


「何だ、こんな時間に」


「のもう、今夜は」


「どうした? 珍しい」


 魔央はぼんやりしながら問いかける。


「拳が割れてる、何があった?」


 聖斗の言葉に首を振る。

 そして青い切子のグラスに並々、琥珀色の酒をついで、美珠の前に置いた。


「勝負しましょうか」


「え?」


 光東の作戦勝ちだった。

 負けず嫌いの姫はその話にのってグラスを両手で握った。


「美珠様、その酒はとても強いですよ。ご無理なさらず」


 すぐに魔央が止めに入ったが、無駄だった。


「よし、先に飲みきったほうが勝ちですよ」


「はい」


 二人はただ流し込んだ。

 けれど圧倒的に光東のほうが早く飲みきり、美珠はもう一戦申し出た。


「しかたありませんね、もう一戦だけですよ」


 勿体をつけて光東は酒を並々と注ぐ。

 それもまた光東の作戦。

 光東以外の三人はこのまともでない勝負を心配していた。

 このままでは姫は倒れてしまうと。

 けれど光東の顔は笑ってはいない。

 今にも泣きそうな顔で、ただ大量の酒を煽ってゆく。

 拳から血を流し続けたまま。

 そして三杯目飲みきって美珠はソファに沈んだ。


「俺も、酔いすぎたみたいだ、すまない美珠様を部屋へと運んでくれるか?」


 それだけ言うと俯いたまま部屋へと戻ってしまった。



「何があったのか?」

 魔央の問いかけに、暗守は美珠を抱えながら言葉を返す。


「さあな。あいつらしくない。とても険しい顔だった」


「明日には普通に戻っていればいいのだがな」


 聖斗はそれだけ言うと部屋へと戻っていった。


こんばんは^^

今日もアクセスありがとうございます。


折角まとまっていた団長達と美珠。

彼らの関係はどうなるのか!?


では失礼します!

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