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緑の章 第五話 聖斗を凌駕する女

「もう、無理です!」

 そんな悲鳴とともに、少女の体が砂埃をまいあげながら崩れ落ちる。 

 へたばった美珠に光東が微笑みながら水を渡してくれた。

「あいつ相手に、よくがんばった方ですよ」

「ううう、聖斗さん、早すぎて追いきれません。そんな体力ありませんよぉ」

「しかし、彼女すごいな」

 光東の前には早さで聖斗と匹敵する珠利がいた。

 力でこそ聖斗にせり負けているが、体重が軽い分、速さはもしかしたら聖斗を凌駕するのかもしれない。

 しなやかな体が聖斗の剣戟を受け止め、攻撃を放つ。

「彼女のほうが聖斗より少し早く動いてる。聖斗の反応を見切ってそれと同時に攻撃に転じている。惜しいな、力さえもう少しあれば」

 そう言っているそばから珠利の剣が飛んで地面に刺さった。

 珠利は息をあげながら髪をかきあげ、同じく少しだけ息をあげた聖斗に笑みを見せた。

「やっぱ強いね。さすが一位。珠以と違うわ」

「お前、武闘大会、最高何位だ?」

「あ~あれ? でてないよ。私、上司にイジワルされていっつもその日は人員整理させられて出てなかったんだよね。そこが全員参加の騎士と違って悲しいところだよね」

 珠利は落ちた剣を拾うと息を整えもう一度聖斗へと微笑んだ。

「もったいない話だな。お前のような逸材を」

「何? 私出たら、私に負けそう?」

 すると聖斗は首を振る。

 自信をのぞかせて。

「誰にも負ける気はしない」

「ま、でももし聖斗さんに勝って、うまく上がってきた珠以とぶつかったらどうしたらいいんだろう? 私が勝っちゃったら、美珠様また一年いき遅れちゃうんだもんね。ここはあいつを勝たせてから次の年にでも」

「反則負けなんてしていらないよ」

 美珠が屍の様な体を何とか持ち上げて、言葉を返すと珠利は意地悪く笑った。

「そんなこと言って! おばあちゃんになったらどうするの? あの時負けてもらっておけばって、泣いても知らないよ?」

「う……、そ、それは」

 言葉をなくし倒れ込んでいた美珠に日陰ができた。

「勝つに決まってるだろう。速さで負けても気迫で勝つ、ね? 美珠様」

 美珠は顔を上げた。

 そこには大好きな笑顔。

 彼を見るだけで自然に笑みが出た。

「お仕事終わったんですか? 国明さん」

「ええ。夕飯はまだ召し上がれてませんか? 間に合えばいいと思っていたのですが、でもこの様子ならまだですよね。はあ、稽古なら俺もしたかった」

「皆さんまだですし。一緒に頂きましょうか。暗守さんや魔央さんは? まだ打ち合わせなのでしょうか?」

 すると国明は建物の中へと目を遣った。

「先ほど居間で二人、地図を睨んでいましたよ」


 二人の男が壁に張られた地図の街道を目で追っていた。

 そして手に持った町の様子や見取り図と見比べ、頭に今回の行程を叩き込んでゆく。

 すると突然前にひょっこり黒い頭が現われ二人は同時に視線を下げた。

 そこにはキラキラ光る目をした少女。

「お夕飯いかがですか?」

「ああ、もうそんな時間ですか」

「ええ、もちろんご一緒いたします」

 夕暮れに目を遣る魔央と美珠の笑みを返す暗守、その二人を従えて食堂へと行くとすでに他の騎士団長や相馬、珠利が席に着き酒瓶をあけていた。

「何だ、今日は全員いるのか? お、さすが実家が商人。いい酒を持っている」

 魔央も開いていた席に座ると光東にワインを注がれ嬉しそうに眺め、暗守も美珠の向かいに座り回ってゆくグラスへと視線を向ける。

「美珠様もお酒を?」

「ええ、飲みますよ」

「やめときなって、後が大変なんだよ。美珠様の場合は!」

 相馬が光東を止めたせいでグラスが回ってこず、美珠は口を尖らせて隣の男にねだって見ることにした。

上目遣いに国明へと視線を送る。

「一口だけですから、ね?」

「言いましたね。一口だけですよ」

 国明は美珠に自分のグラスを寄せると美珠はそれを持ち上げかなり多量の一口に流し込んだ。

「そ、そんな無理しなくても。大丈夫? 美珠様」

 口いっぱいにあふれる酒を飲み込むまでに暫くの時間を要し、視線を集めた美珠は根性だけで飲みきると少し喉に痛みを感じながら胸を叩いた。

「大丈夫、珠利。だって、私がちゃんと飲めるようになったら祥伽がおいし~いお酒のましてくれるって言ってたの。飲みたいじゃない、おいしいお酒。私その日のために頑張るわ!」


こんばんは。

いつもアクセスありがとうございます^^


美珠の姉貴分、

珠利の実力はどのくらいか、まだ未知数・・・

それは次の武闘大会以降まで秘密ということで。





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