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紅の章 第十二話 父と母の企み

「根を詰めすぎているのではありませんか?最近王の下で雑務整理を手伝っていると聞きます。」

「あ、はい。今は決算期、とても勉強になる資料が多くて。」

 教皇は朝食を食べ終え、娘に言葉をかけた。

「前はお金の価値なんて分かってなくて、出てくるものだと思っていたんですもの。勉強して当たり前なんです。」

「それは悪くないことですが、急ぐ必要はありませんよ。」

 けれど美珠は首を振った。

「今は物語を読むよりも政治の本を読みたいし、刺繍をするよりも地図を眺めたい。それが私に必要なことなんです。」

「けれど、休息も大切ですよ。休むときは休んで、勉強するときにする、そうでないと、参ってしまうのは自分です。」

 美珠は笑みを浮かべて頷いた。

「はい。分かりました。」

 すると父は娘の手を取って暖めるように何度も撫でた。

「お父様?」

 美珠はその意味が分からなくて、その手を優しく解くと、息を吐いた。

 すぐにいつものように官吏と団長たちが入ってくる。すると美珠はいつものように笑みを浮かべた。

「…。」

 父と母は二人顔を見合わせて、娘にもう一度視線を送った。

 娘は血の気のない顔でただ政務官達の言葉に耳を傾けていた。

「教皇様、本日午後予定されておりました管弦楽の鑑賞には教会騎士団長と教会騎士三十名を。」

「ねえ、遜頌(そんしょう)。私今日、あまり具合が良くなくて、それを取りやめできるかしら。」

「は、取りやめですか。医師を呼びましょうか。」

「いいえ、いいわ。美珠、あなたに予定がないのなら行ってくれるかしら?」

「え?相馬ちゃん大丈夫?」

すると相馬は予定表を見て頷いた。

「大丈夫。じゃあ、教会騎士団長と三十名を。」

すると国王は手を挙げた。

「どうなさいました?陛下。」

 官吏が寄ると王は手元の紙に何かを書いた。

 政務官は書かれた国王のメモを全て読むことなく必要な部分だけを読み上げた。

 読み上げなかった部分には親から娘への贈り物が書いてあった。

「教皇様の様子がが心配だから傍にいらっしゃるですと?了解いたしました。では、そのように準備を、今日の国王の警護は国王騎士団長ですが、お二人の警護は教会騎士団長が引き受けてくださるということで。」

 すると国王と教皇は満足そうに頷いた。

「じゃあ、国王騎士団長は美珠様の警護をお願いします。」

 美珠は何故そうなるのかが、意味が分からなかった。

「あの、でも、国明さんは忙しいのでしょう?折角時間が空いたのなら、お仕事なさって。私は兵についてきてもらうから!」

「構いません。私が参ります。」

 国明の声を聞くと、美珠は黙った。

(一緒に行きたい。)

 そばにいたいけれど、自分が荷物にはなりたくなかった。

 彼が部下から自分とのことを言われるのが嫌だった。

「でも、お仕事があるのでしょう?」

「何よりもあなた方をお守りする、それが第一の職務です。」

 然として言われると返す言葉はなくて、こぼれそうな笑みを隠すので精一杯だった。

「なら、お願いします。さてと。準備をしないと、先に部屋に戻ります。」

 美珠は立ち上がるとそそくさと部屋を出て行った。

 父と母は、一度顔を見合わせると頷き、おもむろに国明を掴んだ。

「な、なんですか?」


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